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幻想種、豚骨ラーメンを食べる

登場人物一覧

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子

 私ドラマ・ゲツクはラーメンと言うものを食べたことがありません。

 レオン君と一緒に昼食を食べている時でした。私はミートソースのパスタを。レオン君はサンドイッチを食べていました。ここのお店のご飯は美味しいのでお気に入りの店です。ほどよくアルデンテのパスタ。レオン君がサンドイッチを大きな口で頬張るとレタスのシャキシャキした音が聞こえてきます。
 ラーメンとは。元は中国と言う国の料理を日本と言う国がアレンジしたもの、だそうで。例えるならスープパスタに似ているそうです。パスタ──麺がたっぷりのスープに入った料理だとか。

 話の流れでレオン君が今度連れてってやるよ、と言っていましたが。ええ、オチが見えています。これは以前のハンバーガーを食べに連れて行ってもらった時と同じです。

 髪は邪魔にならないようにポニーテールに結んで。私の顔と同じくらいのサイズのハンバーガーをどうやって食べようか思案してから一口。パンとジューシーなハンバーグがとてもよく合います。少し濃い味のケチャップソースとサラダもほどよく調和しています。
 リスのようにハンバーガーを頬張っていると、レオン君は吹き出しました。それはとても心底楽しそうで。お腹は満たされましたが不服です。

 しばらく忙しくて。なんて理由をつけてお誘いをお断りしました。同じ失敗は繰り返しません。こうなれば予習です。

 ラーメン屋さんの店舗の下調べもバッチリ。美味しいと評判のお店に来ました。「営業中」とのれんがかかっています。幻想に店舗があったのが幸いです。練達に行かないとないかと思っていました。行列が出来ているので間違いないでしょう。

 服もいつもの魔術師めいたひらひらした服から着替え。今日は赤いジャージです。汁が跳ねるでしょうからね。そう言えばレオン君とハンバーガーを食べた時もこの格好でした。

 ラーメンと言うのは元はウォーカーの中国大陸の食べ物でしたが、日本国に渡った際に独自の発展を遂げた食べ物だそうで。ラーメンと呼び名が着いたのはもっと後からで。元は南京そば、支那そば、中華そばなんて呼ばれていました。ラーメンと言う名が広まったのは日持ちして保存の効くインスタント麺が出てからです。
 あれから調べました。これくらいは知っているのですよ。かしこいので。

 少し並べば入店出来ました。カウンターへ案内されました。店内はズルズル、ハフハフとラーメンを食べるお客様が。私は不思議なことに気が付きました。大衆食堂なのに皆静かに食べているのです。清掃が行き届き、清潔に保たれた店内ですが。年季の入った店舗はいくら掃除しても限度があるようで。どこかくたびれています。

 コップに注がれたお水を渡され、注文が決まればまたうかがうとのことでした。

 メニューを見ましたがよくわかりません。麺の固さでバリカタ、ハリガネって何でしょう……。下調べや知識があってもやはり現地だと知らないことが出て来ますね。普通とか、オススメでいいでしょうか。
「ええと……。一番オススメのを。麺もそれで」
「あいよ!」

 喉が乾いたのでお水を。いえ、これお水じゃないですね? 色が付いています。昼からウイスキーを……? いいえ、でしたら店内は酔客で溢れているはずです。

 ごくり。と一口。香ばしい味が広がります。紅茶の一種でしょうか?

 テーブルを見渡せばピッチャーに入った茶色い水、お箸などがあります。なるほどセルフサービスで人件費を節約しているのですね。ペッパーの瓶と、それとこの壺は何でしょう。
「……ガーリック?」
 何とフタを開ければすり下ろしたにんにくがぎっしり。臭いですぐにわかりました。やっぱりこれラーメンに入れて食べるってことですよね? ええ……?

 などどしているうちにあっという間にラーメンが届きました。早い。
「へいお待ち!」
 不透明なベージュ色のスープにチャーシュー。こってり濃厚な香り。赤い細く切った食材は紅ショウガですね。牛丼などに乗っているやつです。茶色いのはキノコでしょうか。鮮やかな緑の青ネギがたっぷり。もやしもあるようです。

 スープから麺を引き揚げて一瞬で理解しました。このカッペリーニのパスタのように細い麺。これは『伸びてボソボソとした麺になる』きっとそうです。今が食べ頃で、手早く食べるべき。店内が静かなのは皆ラーメンに集中していたからでしょう。でしたらやることはひとつです。

 麺をすすります。すするなんて普段だったらお行儀が悪いですが。郷に入っては郷に従えなのです。
 ずるずると一口。衝撃が走ります。
 濃厚なスープが麺によく絡みます。アルデンテな麺を噛み。飲み込む。スープ単体だけなら間違いなくしょっぱくて、ハイカロリー。なのに

 はふ、はふ、はふ。
 麺を次から次へと口へ運んでいました。熱々なのでふーっと息を吹きかけながら。火傷しないように。でも手早く口へ持って行きます。真っ直ぐなつるんとした麺が軽く噛むだけで喉を通って行きます。ちょっと変わったお玉のようなもの……これも知っています。レンゲです。レンゲでスープをすくいます。スープを飲み込めば、深い味がします。私にはわからないのですがきっと色々なものを煮込んであるスープです。
 もやしはシャキシャキ。キノコはずいぶんコリコリとしたキノコでした。白ゴマの風味や歯応えもアクセントになっています。
 紅ショウガはジンジャー、しょうがの味が強くしました。青ネギも最初はこんなにいっぱい。と思ったのにぱくぱく食べています。
 そこでふと思いついたのですが。さっきのにんにくの壺。薬味がこんなに効くのなら……きっとそうです。にんにくも合うのです。
「でも……」

 わかっています。乙女としてそれは迷います。絶対、ぜーったい息が臭くなります!
 ですが私は知的好奇心に負けてしまいました。いいですか。負けたのは食欲じゃないですよ?
 スプーンでにんにくをすくい食べかけのラーメンに乗せる。恐る恐る口へ運びます。
「!」
 美味しい。生のにんにくは火を通した時の甘みと違って、少し青臭く辛みさえありました。それがとても効いていて。薬味としての役割もバッチリ。少しだけのつもりが私はまたにんにくを足していました。口の中ににんにくの香りが広がるのを自分でも感じます。
 食欲に火が付いた私はもう止まらなくなっていました。

 からん。小さなお玉のようなものをどんぶりに戻し、気がつけばスープもほとんど飲み干ていました。体はすっかりぽかぽか。一息つき。会計を済ませ店をあとにします。

 一気にカロリーを摂取した気がします。その分運動、走り込んだほうがいいのかもしれません。鍛錬とカロリー消費を兼ねてベストかもですね。お腹をさすりながら帰路に着きます。

 今日食べたのは豚骨ラーメンでしたから。スープには種類があって醤油に味噌に塩とおさえておくのもいいでしょう。味噌は……味噌スープ。味噌汁とは違うのでしょうか?
 トッピングをカスタマイズするのも気になります。煮卵、海苔、チャーシューに……。

 と、そこで大柄な男性が歩いているのが見えます。見覚えのある金髪を目にしました。
「レ……」
 悲鳴を上げながら口を両手で押さえます。満腹の多幸感は一瞬にして消えました。まずいです。今会ってはいけません。さっき私が食べたものは何でしたか? 今も口ににんにくの香りが広がっています。
 幻想にラーメン屋さんの店舗があるのも迂闊でした。再現性東京なら遭遇率がぐっと低くなったのに。
「よぉドラマ。こんなところで珍しいじゃん」
 あわあわと慌てるこちらを蒼い目が笑いながら見つめています。こういう時だけ勘が鋭いのどうしてですか?

 めちゃくちゃからかわれる1分前──。

  • 幻想種、豚骨ラーメンを食べる完了
  • NM名7号
  • 種別SS
  • 納品日2021年11月07日
  • ・ドラマ・ゲツク(p3p000172

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