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魔法の夜の花嫁
登場人物一覧
名前:鹿ノ子
一人称:僕
二人称:~さん
口調:~ッス、~ッスか?、~ッス!
特徴:複雑な乙女心を抱える少女。遮那にとっては笑顔を見たいと思う女の子。
設定:
魔法の夜――今日はファントムナイトだ。
普段とあまり変わらぬが、少し大陸の正装をしてみたのだ。
引き締まるような感覚だが、目の前の鹿ノ子の姿に目を奪われる。
大陸の花嫁衣装――和風のウェディングドレスに身を包んだ鹿ノ子が此方を見上げていた。
「……それにしても鹿ノ子よ。それは、花嫁衣装ではないのか? 白無垢とも違うが」
白くて繊細で可憐。彼女の二彩の髪によく似合っている。
鹿ノ子の髪は美しい。花嫁衣装の白さと相まって透き通る瞳をじっと見てしまう。
柔らかそうな頬に触れれば笑顔を見せてくれるだろうか。
ヴェールに触れた所で、我に返り咳払いをするように顔を逸らした。
「ええと、そうだ。近くでファントムナイトの祭りがやっているのだ。出かけてみるか?」
「はいッス!」
青い花を手にした鹿ノ子が目を細め頷く。
「ふふ、お手をどうぞ。私の花嫁さん」
手を差し出して彼女の指先を待った。見上げてくる愛らしい瞳に胸の奥がくすぐったくなる。
「いや、何。其方が可愛いのでな。皆に見て貰いたいと思ったのだ。それに慣れぬ格好だと歩きにくいかもしれぬからな」
衣装が違うだけだというのに、何だか顔に熱が上がってくるのは何故なのだろう。
去年のシャイネンナハトの夜もこっそりと『結婚式ごっこ』をした。それと変わらぬというのに。
最近やけに、もどかしいのだ。
さっきもそうだ。鹿ノ子の花嫁衣装を見て少しだけ嬉しくなった。
この姿を見られるのが自分だけだと、独り占めしてるのだと高揚した。
――だから、祭りに連れだしたのだ。自分を律するために。
そういうのは鹿ノ子の意志に反するかもしれないから。
嫌がられたらと思うと、以前のように気安く触れないと思う様になってしまった。
されど、やはり鹿ノ子の笑顔は愛らしく。
いつまでも見ていたいと思うのだ。