SS詳細
Off Time
登場人物一覧
●お休みの日
過ごしやすい気温。カーテンの隙間から零れる、柔らかなお日様の光。
午前10時、タイムは眠い目を擦りながら自らを包む布団の温もりを感じながら目を覚ます。
「ふぁ……ぁ……。あともう少しだけ……んん……」
いつもであればもう少し早く起きるところなのだが、なんといっても今日は休日。
それなりにのんびりしたいのだ。
もぞもぞ、と体を伸ばしたかと思えばまた丸くなり、それを繰り返しながら微睡むこと30分。
「うーん、もういいかな」
ベッドから起き上がり、カーテンを開ける。
優しく部分的に差し込んでいた光が大きく広がり、外が心地よく晴れていることを教えてくれる。
家の通りに面した木々がそよ風に吹かれている様を眺めながら、窓ガラスに映る自分にニコリと笑いかけてみる。
「天気も良い、今日はお休み……ふふっ、せっかくだしお外に出てみるのも、いいかもね」
ご褒美、という言い方が一番分かり易いのかもしれない。
ここ最近、ローレットでの依頼等で多忙を極めていた彼女の、久々のオフの日。
そうと決まれば、と洗面台でメイクをし、何を着ていくか考える。お洒落は乙女にとって気合が入る一番武装。真面目に考えるのは当然だ。
選んだのは、いつものふんわりとした白いワンピースに、いつものお気に入りのケープ、そして、いつものイヤリング。
くるりと姿見の鏡の前で回って、ふふっと笑ってみる。
「さて、今日はどこに行こうかな。」
とある女子の一日が幕を開ける。
●お昼の街歩き
ランチ時の午後12時。タイムはローレット近くのアーケードを、当てもなくぶらついていた。
空は雲一つない快晴だが、そよそよと心地良い風が吹いている。街中を歩く彼女の足取りが、無意識のうちに軽くなる。
花屋から仄かに漂うカサブランカの甘い香り、キラキラとしたアクセサリーが魅力的な雑貨屋、古くからそこにあるであろう本屋……。
見慣れている景色ではあるが、時が違えば人も違う。同じものではないというところが新鮮なのだ。
そして、目に留まったものを眺め、買っていく。
ちなみに今日の収穫は白いマニュキュアフラワーをふんだんに使ったネックレスに、ラサを特集した旅行雑誌、そして豊穣で取れた素材をふんだんに使った身体に優しいスイーツ特集だ。
買ったものを入れた手提げを片手に、ぼんやりと周りを観察しながら歩いていく。
ふと、知った声が道中のアンティークショップから聞こえてくる。
「だーかーら!! ボクはちびっ子じゃないって言ってるです!! お・と・な・の!! レディーなのです!!」
もしかして、と店をのぞいてみると、案の定そこにはローレット
店の店主はと言うとそんなユリーカを孫を見るような目で見ているのだが、大人としてみてほしい彼女としては不服をあらわにしている。
(ふふふっ、今日も一生懸命頑張っているのね。がんばれ!)
そっとタイムはその場を後にすると、、少しだけ、彼女のお腹が声を上げる。
なんだかんだで時刻は午後1時。遅めの起床だったため、朝ごはんは食べていない。
「……まぁ、ご飯もまだ食べてなかったしねぇ。うーん……」
一瞬考えて、彼女はすぐ目の前の角を右に曲がる。
目指すのはいつものの喫茶店。季節のスイーツとコーヒーが美味しいお気に入りの店だ。
カランカランと、小気味よくベルが鳴り、ほどなくして窓際の景色のいい席に案内される。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
「そうねぇ……本日のコーヒーと季節のケーキセットを」
「かしこまりました。お砂糖やミルクはご利用でしょうか」
「はい、お願いします」
5分ほどして、コーヒーのセットと季節のケーキであろうモンブランが席に運ばれてくる。
早速ミルクと砂糖を少し多めに入れた甘めのコーヒーを啜りながら、先程買った旅行特集の記事をパラパラとめくる。
「そういえば、しばらく旅行も行ってないわね……。もちろん、お仕事で行くことはあるんだけど、ゆっくりはできないしねぇ」
ずずっとコーヒーを啜り、モンブランを口に運ぶ。ゆったりとした空間の中で、タイムはラサの卓上旅行を始める。
「まずはラサの市場かなぁ。サンド・バザールは、遊びに行くって視点でもやっぱり大きな市場だから絶対に見ごたえもあるよね。そういえば、ラサのスイーツって何だろう。もしかして保存に特化してたりするのかな……だとしたらそれはそれで面白そう」
パラパラと雑誌をめくっているうちに、気が付けば窓から差し込む強くなる。日が傾いてきたようだ。
コップに入ったお冷を飲みほし、席を立つ。
「ご馳走さまでした」
「ありがとうございまーす」
会計を済ませて席を立ち、また当てもなく歩き始める。
●ご褒美ディナーは好物で
そのあとも当てもなく歩き続けていたが、街中にはいろんな人がいる。
世間話に花を咲かせる中年女性。
ーー今日はお魚が安いのね。
根気強く若い女の子をナンパをする青年。
ーーしつこい男は嫌われるわよ。
街頭で朗々と演説をする遊説中の政治家。
ーー堂々と話してるけど、難しいことはあまり好きじゃないなぁ。
気が付くと、時刻は午後6時。そろそろ夕飯の時間だ。
「久しぶりに、シチュー食べたいなぁ……」
そうつぶやいたかと思うと、くるりと回れ右して、もう一つのお気に入りのお店に向かう。
家庭料理メインのレストラン。そのレストランのシチューは他の店と一線を画した美味しさなのだ。
せっかくの休日、せっかくのご褒美の日。そんな日はとことん自分を甘やかす。それが乙女というものだ。
店の中の客は然程多くはなく、席も空いていた。
案内された席に腰かけ、目的のシチューと、付け合わせのバケットを注文する。
シンプルな組み合わせ。しかしそれが一番優しくお腹を満たしてくれるのだ。
10分ほど待つと、ホカホカと湯気を立ててシチューが運ばれてくる。
「いただきます」
手を合わせ、まずは一口。
ルーのコク、そして温かさが幸せを呼び込む。
ジャガイモをスプーンに乗せてもう一口。
ホクホクとした触感とジャガイモの甘味が、シチューのルーの塩気が絶妙にマッチする。
そして、バケットをつけて食べてみる。
野菜とはまた違った小麦の甘味が、同じ小麦であろうシチューとのハーモニーを口の中で奏でる。
ゆっくり、噛みしめながらもあっという間に彼女はシチューを完食した。
「んー! 美味しかったぁ。ご馳走様でした」
満足という顏で、店を出る。
日も完全に落ちた午後7時、彼女は家路に着く。
ーー今度のお休みは何をしよう。
次の自分へのご褒美に、そんな思いを馳せながら。
おまけSS『【特集】カラダに嬉しい豊穣スイーツを使ったレシピ☆』
甘くておいしいけどカラダに嬉しい豊穣スイーツのレシピをご紹介。
今回は、豊穣産の「オートミール」を使ったクッキーです☆
1つ食べるととまらなくなるので食べ過ぎ注意です……!!
【材料】
●オートミール→70g
●薄力粉→30g
●砂糖→20g〜30g
●塩→ひとつまみ
油→大さじ2
水→大さじ2
チョコチップ→20g
ピスタチオ(砕いたもの)→20g
①あらかじめピスタチオは砕いてフライパンで炒っておくこと
こげないように注意!
②オーブンは190℃に予熱しておきます。
③ボウルに●の材料を全部入れて混ぜます。
④油を加えて●に油がなじんでさらさらになるまで混ぜます。
⑤水・チョコチップ・ピスタチオを加えてさらに混ぜます。
ひとまとまりにならなくてもOK☆
⑥あとは天板に丸い形に整形しながら並べましょう。
スプーンを使うと良いですよ!!
⑦余熱したオーブンで、25分焼きます。
あとは粗熱を取れば、美味しいザクザククッキーの感性です☆
せっかくのお休み、カラダに優しいご褒美はいかがですか?