SS詳細
『命の水』から、こぼれるもの
登場人物一覧
名前:
金橋・沙月(かなはし・さつき)、並びに――――――
一人称:
「私」。信頼する相手には若干舌っ足らずな「わたし」となる。
二人称:
「~さん」。仲の良し悪しに関わらず、此方は変わらない。
口調:
「です、ます、ですか?」という敬語調。此方もどのような相手に接しても変わらない。
これは彼女本人の無自覚なところで、元の世界に戻りたいという願い……ひいてはこの世界に対する一種の現実逃避じみた否定意識が働いた結果。
特徴:
ギフト「命の水」を有する。自身の血液約100mlを対象に摂取させることで、対象に24時間分の栄養を補填させる。
摂取方法は経口でなく輸血でも構わず、またそれによって血液型の違い等による拒否反応が起こることも無い。
注意すべきはこのギフトはあくまで栄養の補填のみを行うものであり、怪我の治療や病気の回復には一切の効果を示さないという点。
設定:
異世界からの旅人(ウォーカー)。年齢は12歳。
わけもわからずこの世界に到達して後、疫病に苦しむ村に辿り着いた彼女「ら」は、そのギフトの存在を知られた結果村人たちに血液を搾取されるだけの奴隷として扱われた。
現在はそれを特異運命座標達に救われ、『ローレット』関連の施設にて療養中である。
……尤も、それは子供達8人の内、生き残った2人のみに限った話。
その2人に於いても、1人は未だに意識不明、意識を取り戻した少女――沙月も未だ完全に快復しきってはいない。
また沙月ともう一人の『少年』に相互の面識はなく、身分を表すものも無いため、未だ眠る彼の名前や年齢等の詳細は未だに不明である。
沙月は意識を取り戻して後、この世界に対する知識を徐々に与えられていった。
異世界、特異運命座標、そして自分たちが襲われる理由となったギフトについても。
唐突なそれらの知識を、けれど彼女は抵抗なく吸収していった。担当した職員が、寧ろ不自然に思うほどに。
今現在も彼女は、『ローレット』の説明や対応に従順ではあるが……それは「大人の言う事を聞く子供」として以上に、一種の諦観じみた意識を以てのことだ。
その事実に、担当する者も焦燥感じみた危うさを覚えはするが、これを解決する方法も分からず、今は時間が全てを解決すると信じるしかないと考えている。
……近く、沙月は『ローレット』との繋がりが在る商店で、下働きとしての生活を始める予定である。
おまけSS
××けて:
「――――――う、あ」
生き残ったのだ。
助かったのだ。
だから、頑張らなきゃ。
帰りたいなんて、思っちゃいけない。
死んでいったほかの子供たちが居て。
私たちを救う過程で、殺された人たちが居て。
私が。
生きて助かった私が、どうして、何かの贅沢を言えるのだろう。
友達も、家族も、みんなみんな、今は諦めて。
「いや、だ……」
いつか。
きっといつか、帰れるから。それを信じて、今は。
「いやだ、いやだ、いやだ。
こわいよ。かえりたいよ。きずつきたくない。しにたくない」
――『何で、お前だけが』と声を上げて。
死んだ子たちと、殺された人たちが手を伸ばす姿を、毎夜夢に見たとしても。
「おとうさん、おかあさん、みんな、みんな……!」