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薄幸の未亡人『ヘレナ』という女について
登場人物一覧
名前:ヘレナ・オークランド
種族:人間種
性別:女性
外見年齢:30~40代前半
一人称:わたくし
二人称:あなた、~さん、~さま
口調:です、ですね、ですか?
特徴:
ヴィーグリーズ会戦で戦死を遂げた貴族、オースティン・オークランドの妻でありアダレード・オークランドの養母。
養女と夫が2人とも魔種に反転し、天涯孤独となることが確定してしまった悲劇の女。
オークランド家の取りつぶしにより、未亡人となった彼女は行く当てを失った。
自身が反逆者の妻であると知ってからは実家に迷惑になるまいと寂れ行くことの決まっているオークランド邸にひっそりと暮らしていた。
現在はオークランド家に訪れたヤツェクの庇護を受けているが、ヤツェクがどうして自分を保護してくれたのかは今のところ知らないまま。
銀色の髪と緑色の瞳をした貴族の女性。穏やかで優しく、人当りの良い性格で、繊細を通り越して華奢で線が細い。
若い頃から病弱で、日差しにも弱く外を出歩くのでさえ難儀するほど。
そのため、嫁いで来る前はあまり出歩くこともなく、いつも家の窓辺から穏やかに微笑んで行きかう人々を見ているだけだった。
それでもごくまれに体調のいいときには外に出て色白で華奢な姿から領民にも慕われ、わざわざ贈り物を届ける者、なけなしの財産を寄進して病気の平癒を願う者が後を絶たなかった。
オースティンに嫁いでからも、美しい銀色の華と愛でられ、重い宿業を背負う夫を支えようと努力したという。
しかしながらここ数年は病状が悪化の一途を辿り続け、ほぼ家の中と樫の木に覆われた自然の中にある別邸を往復している毎日を過ごしていた。
そうして出会った、特異点――己が愛した夫を殺し、その夫の最期に託された者の一人に出会ってから、少しずつだが病状は回復しつつある。
だれにも頼れずただ死にゆくのだろうと知って、深窓の貴婦人へと戻った女はそれがどうしてかまだ理解していない。
そう、それはただオースティンという男が魔種であったというだけの話。
例えどれだけ妻を愛していようと、護るのだと誓おうと関係はない。
近くにいれば、原罪の呼び声は人を蝕む。
彼女は病弱である。彼女は華奢である。
それは現実であり、真実だ――ただ、どれだけ弱かろうと『原罪の呼び声』は、病弱な女を知らず知らずに衰弱せしめていた。
たったそれだけの話である。