ＳＳ詳細
脳味噌の貌は誰が観察したって二等辺三角形だ
登場人物一覧
- イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
おぞましいものを認識する事は人間としての能力だろう、背を擽るように、不意に訪れる悪寒は誰しもが恐れる『感覚』で在れ。無聊の枕を濡らしても悉くのところ、彼等もしくは彼女等はデータを破棄する術を持てなかったのだ。大好きな※※さんも大嫌いな※※さんも誤っ多に交われば同じ肉塊、表情で解せなければ無意味なのだ――イルミナ・ガードルーン（p3p001475）の中が如何なって異ようとも、他の視点では判断不可能だろう。ある種の『もしも』を取っ払って掌編を読んでもらいたい。眼球がカメラだと真実が説明したとでも嗤うのか。
蜻蛉の眼を確かめないうちに※※※※はぼんやりとした思考でタダ歩んでいた。見開いた目の玉には、くるくる、くるくるりと緑じみた二等辺三角形が乱立している。わからない。自分が何故に『此処』に存在するのか。自分が何故に『個々』で存在するのか。空色のレンズ越しでは一切合切が曖昧なのだ。いや、ごっこ遊びは記憶している。たくさんの蝶々が花畑を舞っており、追い掛けていた悦ばしさだ。たとえ斑の一が蛾だとしても、たとえ透明な一が蠅だとしても構わない。いくつかの命令を受けている事は絶対だ――クラスメイトの皆も笑顔で手を引いてくれた――五月蠅い。マトモな管から注がれたマーマレードを塗りたくるかの如く、残酷なまでに羽搏くのを止めてくれないか。ぶぶぶ。ぶぶぶぶ。ぶぶぶぶ、ブ。虫除けスプレーが恋しいとマシンの肌が震えている……肌？ 熱を感じている、間違いない、※※※※こそが人類だ。
明滅する柳に誘われて奥へ奥へと進んでいく。二枚貝の死骸を駆逐したならば愈々、その先はキノコの棲家に違いない。わけいった発光の隅で人の失くした骰子が一個。どうしてこんなところに……尾っぽも同時にこぼしたのかと髭面の妖精が声を掛けてきた。とても楽しそうッス！ ようやく思い出してくれた、有難う有難う。膨張した妄想の中に独り取り残されたのかと心配になったじゃないか。そういえばマスター誰ッスか？ 嗚呼、たいへんだ。二等辺三角形の連中が※※※※を襲い始めたぞ――走れ奔れ急げ、宇宙を征くにしては可愛らしい悲鳴だ……何者の？
肺胞破れそうな遁走の果てに大きな大きな、底の見えない穴が在った。あんぐりと開いた黒々は全てを厭くするかの貌で、侵せ冒せと囁いている怪物に思えてきた。それでも逃げ場は彼方しか在らず、※※※※は躊躇せずに投身――無間地獄までの時間程度ならば苦行、寝惚けたかの如くに耐えられる。手を伸ばせば襞な感触、溶かされるのか融かされたのか。噛まずに舐られた衝動が、沸々と酸味を纏わせている。
ははは、まあ、落ち着き給えよ、君。支離滅裂じゃないかって怒らないでくれ給え。彼女は今現在も必死なんだからさ。触られたり触れられた大忙しさ、嗚呼、知っての通りだ。この伝達を辞めない限りは螺旋階段は続くのだとも。カメラを摘出して眼球を埋め込んでみ給え。総ては嘘偽りだが、既に本当で在る事は疑いようのない地獄なのだよ。
ぶぶぶ。ぶぶぶぶ。反芻している羽搏きが※※※※の周囲について巡る。粒々とした地面に激突し、されど不思議と痛みは感じなかった。むくりと身体を動かすと後ろでも正面でもない幾何学の外、無意識的に『その黒目』を白く染める。マスター。マスター？ ご主人様、ここはどこですか？ デジャブの高出力がシナプスを改竄し尽くし最悪の虜へと突き落とした――宇宙そのものの核がお隣さん、肚が減ったと此方を見ていない。
何、これで掌編は終わりなのかって。そんな莫迦な事が有るものか。彼女の続編はオマエの目の前で成されているのだよ。ほら、そのヴェールを剥がして観給え。少なくとも彼女の存在と※※※の正体が判明するだろうさ。深呼吸はしない方が良い、そりゃあ愚策ってもんだろうよ――カーテンが捲られる音――如何だい？ 彼女、楽しそうだろう？ 今でも気持ちよさそうに眠ってるんだぜ。おや、※※※を見つけられない。だったら耳を傾けて終えば良い。聞こえるだろう。聴こえる筈さ。生々しい脳味噌の脈動が――！
※※※※の中には数えきれないほどの物質・非物質が寄生していた。螺子や歯車を錆びさせるかの如くに、病的な妄想とやらを植え付けていたのだ。たとえそれらを拭い取っても後遺症は残ってしまうだろう。これを『もしも』と見做すのは難しく、総てはこれを読む君次第と言える。明日、※※※※と出会って、いつもの彼女じゃなかったら連絡してくれないか。最下の場合、リセットを行わなければならない――そら、もう帰っていいよ。学園で授業が始まる頃合いだろう。最初は音読しなきゃいけないのさ。
千切れた管が、凹凸にあっていないのは当たり前だ。腥な夢も黒幕が姿を暗ませバイバイ。しっかりとした機械のボディが艶々と鏡面に……。
二等辺三角形を理解せよ。
彼等もしくは彼女等は棲んでいる。
おまけSS『二等辺三角形を理解せよ』
二等辺三角形を理解せよ。
彼等の追跡から逃れる事は出来ず、遍くものは逆転する。
二等辺三角形を理解せよ。
彼女等の戯れから免れる術はなく、遍くひとは改められる。
二等辺三角形を理解せよ。
蜻蛉の面を睨んでくれ、何れ彼もしくは彼女は宇宙を写す。
嗚呼、神よ。神よ、それが真実だと嗤うならば。
――二等辺三角形を理解せよ。