SS詳細
Black out
登場人物一覧
- ニルの関係者
→ イラスト
「おはようございます、ニル。私の名前はミニミスです。ああ、私なぞに様をつける必要はありませんよ」
「ニルはねむっていました……あなたはミニミス、と、いうのですね。おはようございます」
同じ日常。メトロノームの日々。
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
「おはようございます、ニル。私の名前はミニミスです。ああ、私なぞに様をつける必要はありませんよ」
「ニルはねむっていました……あなたはミニミス、と、いうのですね。おはようございます」
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
「おはようございます、ニル。私の名前はミニミスです。ああ、私なぞに様をつける必要はありませんよ」
「ニルはねむっていました……あなたはミニミス、と、いうのですね。おはようございます」
時計の針は狂いだした。
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「ニル。朝が来ました。早く起きてください」
「ふわぁ。おはようございます、ミニミス。ニルは、また眠っていたのですか?」
すべては、私が『ニル』を知ってしまったから。
●ミニミスのメモ1
『プロセス』を施す役を担うことになった。
ニルは今のところ正常だ。
●On and on
Day1://No one can become you
「おはようございます、ニル。私の名前はミニミスです。ああ、私なぞに様をつける必要はありませんよ」
「ニルはねむっていました……あなたはミニミス、と、いうのですね。おはようございます」
「今日もこの後『診察』があります。朝食をとった後はゆっくりして頂いて構いませんが、昼食をとった後は睡眠をとらないでくださいね」
「わかりました、ミニミス。ニルのあさごはんはどこですか?」
製造者たちによる管理施設に『生まれて』からというもの、ミニミスの役目は変わることは無い。ニルの身の回りの介助、そしてニルとの直接的なコミュニケーションをとること。課せられた仕事にしては簡単だと思われるかもしれないが、ニルの『プロセス』の反動による治しきれない心の傷が製造者ではなくミニミスし仕向けられるようにしてある、ある意味命懸けの仕事なのである。
強制的に意識を失う範囲は様々だが、その近くには必ずミニミスが用意される。彼を盾にすることで逃れられるとでも思っていたのだろうか。眠っている間の記憶はないが、そうではなかったのではないかと思う。あくまで憶測の域を超えることは無いが。
ぼんやりと寝癖も直さずにトーストをかじる。おいしい、とぼんやり微笑んだニル。
「おいしいです。ありがとうございます、ミニミス」
「気にすることはありません」
のんびりハムを、目玉焼きを完食し、サラダも残すことなく食べきったニル。至って順調のようだ。
「ごちそうさまでした」
「はい。食器はそこに置いておいてください」
「わかりました」
最低限の荷物が置かれたその部屋は、一面だけ真っ白な壁がある。内側から見れば真っ白な壁だが、外側からは内側が丸見えな。虫かごにでも入れられているようだった。
眠る瞬間も、目覚める瞬間も観察されて、監視されて。逃げ場はないのだと暗に示されている。
ニルはそんなことも知らないから、絵をかいたり本を読んだり、ちいさく鼻歌を歌ったりなんかしてのんびり過ごす。愚かなほどに、純粋だ。
「ミニミス」
「はい。なんですか」
「ミニミスも一緒に、ニルと遊びましょう」
「わかりました。なにをしますか」
「おえかきをしましょう!」
紙を差し出し、にこっと笑う。頷き示せば、満足げにクレヨンで絵を描くニル。
「これはなんですか?」
「これは……朝ごはんです。先程ニルと食べました」
「じょうずですね!」
「……そうですか」
「はい。ニルもかいてみましたが、ニルよりもミニミスのほうがじょうずです」
「ニルはどこにかいたんですか」
「ここです! これが目玉焼きで、これがハムです」
「おいしそうにかけていますよ」
「えへへ、うれしいです。ありがとうございます、ミニミス」
「いえ……」
ほどなくして『昼』がやってきた。やってきた製造者たちに首を傾げつつも、『いってきます!』と笑顔でミニミスに手を振ったニル。ストレッチャーに寝かされてそのまま運ばれていく。どうせ後で合流するのだけれど。
実権と称された人体実験。ニルの悲鳴が止む時は自身の意識が切断される時だ。
そうして夜が来る。目を覚ました時は朝で、夜に目を覚ましたとしてもそのまま眠りにつく。やることがないからだ。ニルの世話はしなくていい。ニルは眠り続ける。
ニルが目覚めたら仕事を行う。その繰り返しだ。延々と続く、同じ作業。違っているのは、ニルの遊びだけ。
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
秒針は進み続ける。
Day2://A long time
「おはようございます、ニル。私の名前はミニミスです。ああ、私なぞに様をつける必要はありませんよ」
「ニルはねむっていました……あなたはミニミス、と、いうのですね。おはようございます」
「今日もこの後『診察』があります。朝食をとった後はゆっくりして頂いて構いませんが、昼食をとった後は睡眠をとらないでくださいね」
「わかりました、ミニミス。ニルのあさごはんはどこですか?」
眠っている間にみるみる傷は治ってしまった。昨日も遅くまで実験を行っていたらしい。本当に『一応』程度薬を塗られていたが、目を覚ました時にニルの顔色は真っ青だった。生命力だけは並々ならぬようだ。
今日の朝食はオムレツだ。黙々と食べ進め、ニルは眠りについてしまった。
いってきます、と小さく呟いたニル。その背を追う。そして、眠る。
目覚めた時、ニルの頬には。
「……」
涙があった。
チク・タク。チク・タク。
チク・タク。チク・タク。
秒針は不変のはずだった。
Day-://Change
「おはようございます、ニル。私の名前はミニミスです。ああ、私なぞに様をつける必要はありませんよ」
「ニルはねむっていました……あなたはミニミス、と、いうのですね。おはようございます」
「今日もこの後『診察』があります。朝食をとった後はゆっくりして頂いて構いませんが、昼食をとった後は睡眠をとらないでくださいね」
「わかりました、ミニミス。ニルのあさごはんはどこですか?」
今日のご飯はフレンチトーストです。
いつもの淡々としたやりとり。それに変化をもたらしたのは。
「……顔に、なにかついていますか」
「ミニミスもわらえるのですね。ニルは、わらったミニミスのほうがすきです」
おいしいです! なんて、もぐもぐフレンチトーストを頬張るニル。
ミニミスは頬に触れた。わずかに、上に挙がった口角。
変化は、確実に訪れていた。
Day-://???
「おはようございます、ミニミス」
●ミニミスのメモ2
忘れてくれはしなかった。
●
Day-://quit
「おはようございます、ミニミス。きょうのあさごはんは、なんですか?」
「おはようございます、ニル。今日の朝ご飯はまだ作っていません。食べたいものはありますか」
「ええと、それならトーストがいいです。めだまやきと、ハムもつけてください」
「はい、わかりました。待っていてくださいね」
フライパンを出し用意する。少しずつ軋み始めた日常のフレーム。まだ、何とかなるんじゃないか、なんて思っていた。
「ミニミス」
「はい、なんですか」
それは、いとも容易く壊れてしまった。
「ニルとミニミス、おそろいですね。ニルはなんだか、うれしい? です!」
酷く胸が痛んだ。
答えることは出来なかった。
目玉焼きは少し焦げてしまった。
焦げてないほうを渡した。
おいしいと言ってくれた。
上がった口角が下がることはなかった。
「ミニミス、うれしいですか?」
「どうしてですか」
「ミニミスも、わらっています」
うそをつくことができなかった。
ちがう。
できなくなった。
「はい。うれしいです」
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●ミニミスのメモ3
せかいは、たやすくかわってしまった。
ニルは私の世界を変えてしまった。
ニルは私の
ここから先は汚れていて、読むこともできそうにない。
おまけSS『ニルのゆめ』
●
だれかがおいしいごはんをくれます。
そして、なにをしていてもかまわないとおしえてくれます。
おひるはこわいです。
おいしいものをたべたあとは、なにかがあります。
よくわからないままめざめると。またあさがきます。
おいしいごはんを、おなじひとがくれます。
いつもかなしいめをしています。
なんともいえないきもちになります。しんぞうがちくちくします。
だいじょうぶだよっておしえてあげたいけど。ニルはねむってしまいます。
だいじょうぶだよって、つぎはつたえられるでしょうか。
ニルはこわくないよ。いたくないよって、おしえてあげることができるでしょうか。
あんなにもなきそうなかおをしたおとうとを、ニルはまもることができるでしょうか。
ニルは、おとうとなんていないけど。まもりたいと、おもってしまいました。
ミニミス。
ニルは、ミニミスがだいすきです。