SS詳細
生きる意味
登場人物一覧
- ユリコの関係者
→ イラスト
名前:姫菱安奈
種族:八百万
性別:女性
年齢:25歳
一人称:我
二人称:~殿、貴殿、貴女
口調:である、であろう
特徴:ポニテ、抜刀術、ストイック、豪放磊落、一途。
見た目は十代に見えるが二十も半ばを越えた妙齢の女性。
設定:
天香家の忠臣。土の精霊。
数多くの武人を輩出する姫菱家の長女。
女でありながら、他の兄弟より飛び抜けて剣術の腕が立つ。
それは、彼女がストイックに日々の鍛錬を怠らない性格だったからだ。
潜在的な能力は凡庸だったけれど、努力という後天的なステータス上昇値によって群を抜いた剣の腕を獲得する。
その腕前を買われ、天香家の護衛として十五の時に召し抱えられる。
直属の上司であった『楠忠継』の元につき、日々護衛にあたっていた。
安奈にとって忠継は尊敬すべき上司だった。
男兄弟の中で育った安奈の口の悪さも許容してくれた。
剣の腕は立つし、性格も優しく、気遣いの出来る男だ。
しかし、一度敵襲があれば、獄人の気迫で容赦はなかった。
自分より強い男に、安奈は憧れを抱くようになった。
それが恋心だと気付くには数年かかったけれど。
それでも忠継と過ごす日々は安奈にとって掛け替えの無い幸せだった。
「のう、忠継」
「何だ改まって」
「我は其方の事が……」
けれど、肝心な好きだという言葉が出てこなくて恥ずかしくて。
そんな安奈の頬を忠継はそっと手で包み込む。
「はは、顔が真っ赤だぞ安奈。安心しろ俺もぬしの事が好きだぞ」
「それは部下として……」
「部下としても女としても。俺の生涯をやるから、安奈の生涯をくれないか?」
月が照らす橋の上で。忠継は安奈に愛を誓った。
幸せな日々だった。
忠継は言葉通り、その生涯を安奈と共に過ごした。
――その日の事を安奈は誰にも語らない。
安奈の目の前で忠継は散った。夜妖を抱えたまま遮那に斬られたのだ。
その勇姿を否定出来ない。忠継の行いを否定する事は安奈には難しかった。
遮那が悪い訳でも、忠継が悪い訳でもなかった。
ただ、皆が誰かを護る為に戦った。それだけのこと。
忠継は言った。安奈に『生きろ』と。『天香を託す』と。
だから、安奈は歩いて行く。この先もずっと。約束を守って。
だけど。背中を預ける先が無いのは、少し寒いと感じるのだ。