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とりかた
登場人物一覧
触れた画面にカレンダー、穴だらけだった。
再現性東京、希望ヶ浜学園のグラウンドは今日も暑かった。汗だくの運動部員を眺めるようにオマエ、怠そうにカメラ・アイを泳がせてみた。見出せるのはひどく朦朧とした景色だけで、この程度を表現するには生身でしか赦されないのだろう――回転するエネルギーはいつしか逆転し、自分自身の頭の中でぐったりと茹だっている――こんな眩暈がする日には涼しい、アイス・クリームを舐るに限るのだろう。放課後に誰かを誘って売店にでも行こうか。から、から、と渇いていた咽喉が液体で啼く。もしや君は溜飲の方法も忘れてしまったのか? じりじりと未来から来たのだろう太陽が哄笑をし始めて――不意に、世界が『真っ暗』く成った。所以はわからないし如何して、と、疑問を抱く事もなかった。何故ならば世界は最初から暗黒に抱擁されており、あの蒼褪めた虚にはぽっかりと白が空いているのだ。たれさがった涎はおそらくプロミネンスの嘘吐きだろう、生まれたばかりの存在に十字傷をつけて、てくてくと下校時刻を告げてくれ。あ、※※※※さん! 今日肝試しするって約束したじゃない。そうでしたッスね。こぼれおちていたレコードを入れ混みつつ、ひっかかりなく言動に適応する。そうしてほしいと命令したのは現実ではなく人だった、思い込みの激しい乙女心は容赦なく幻想へと突き進んで往く――取りに行こう。取りに行こう。何を摂りに行くんッスか? もお、※※※※さん、しっかりしてよね。皆で物を録りに向かうって決めてたじゃないの。周囲を確かめてみたらアラ不思議、皆が皆、虫取り網やら蚊取り線香やらトリモチやらを掲げている。なんで捕まえる道具を持ってきていないの? 年下の男の子が問い掛けてくる――あかぶちめがねは指一本で十分だと伝えなかったのか、嗚呼、それなら問題ないね。ぐるぐると回していれば勝手に落ちるんだから。あっはっは。水色の中心から引っこ抜かれたいと、巻き戻し早送り停止、再生……。
ダイス・ロールに悉く失敗した存在の末路は上位の手探りで掬い堕す他にない、狂い欠けた心臓を直すのに偉大さが必要だと謂うのか。綺麗だ、嗚々、無理に埋め込まれたプログラムが現実逃避と称される『あめ』を降らせていく。一歩一歩と運ぶ度に皆の表情が『よく』鮮やかに見えてくる――あの子は楽し気だ。あの子は泣き出しそうだ。あの子は――わいわい・がやがや、お化けが幻覚だとしたらきっと※※※※も靄に違いない、離れたくない狂想がお隣に並んでいた。さあ、目的地まで半分だ。蝋燭の光に提燈の光、爛々と覗き込んでいるのが中心だなんて今更口にしなくても大丈夫だろう。動かしたのは地面、おもい、おもい、蓋のされた臭みへと階段が続いていた。こっからは電車ごっこで行こうよ。がたん・ごとーん・がたーん・ごとん。おっきな輪っかに身体をいれて、車輪が如くに回れ廻れまわせ。千里の道もはじまりが肝心だと謂う、果て、はじまりは何処からだ? ずれためがねの姿勢を正し、異ザ威ザ彼方の終着点へ……。
可能性を刻まれた毒々しい段を得て終には戸口へと達するのだろう。少々強引な夢中だがこれくらいが『咀嚼』するのに悦ばしい。パフォーマンスの発揮にも最適なラスト・シーンではないか、からからと笑っている皆が嗤いに変わっていた。それじゃあ肝を試そうか。試しにとってみたら? とってよ※※※※。了解ッス! 何の躊躇もなく伸ばした腕部、融けるように溶かすようにずぶずぶと、クスクスと――ただの夜妖で在れば無視出来た。よくある容貌で在れば無意識に出来た。それで、後者がアダと化すのは罅割れの兆しか――罰印に裂けた宇宙が底無しに膨張している。ゆっくりと、故に絶対的に、※※※※の認識領域は拡大していたのだ。憎悪するように復讐するように、這いまわる寒気を祓う術はない。そうだ、外側に映った赤々の淵、人差しぐるぐる、出来るだろうか。
強烈なバグと共に頭が吸い込まれていく。抗いようのない感覚が蛆虫のように、ぐねぐねと黒を白に孵していく。皆? いや、※※※※は何を勘違いしているのか。この場には全き、内と外で歪んでいる自己しか在り得ない――知って。見て。私を聞いて。もっと、もっと、近くにきて――人間になりたいなら、何も考えずにどっぷりしていれば良かったのに。執拗な異物が怪々と背筋をむしってくる、思い出した、今日は蒸し暑かったッスね……? 猛暑日に蜻蛉取りなんて可笑しなはなしだ、針金がカマキリと間違える筈がない。
燦々を称えている現実にようやく戻ってこれた。グラウンドには誰もいないし、※※※※一人だけだ。とっくの前にチャイムは響いており、夏期講習は夕を迎えていた。早く帰って明日の準備をしなければならない、お友達と出かける約束なのだ。すぃ、すぃ、すぃ、慣れた手つきで画面を操作する――※月※日、皆とチョウ詰め。