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summer、summer、summer!
登場人物一覧
世間は夏真っ盛り!
海だ!
太陽だ!
ビーチだ!
――『水着』だ!
白い耳をぴこりと揺らしてスーは輝く太陽の下を走り出す。
こんな夏をぼんやり冷房の下で過ごすの何てとんでもない!
サマーフェスティバル? そういうのもありましたね。
けど、それだけで終わっちゃ水着が泣いちゃうでしょ! 今年の夏は名付けて『エンジョイ・サマー』だ。
全力で海を楽しみ、全力で浜辺を楽しみ、全力で陽射しを受け止めて、水着が満足するくらいに楽しむべきだ。
金の瞳は何時もの通りに楽し気に躍っている。
「輝く砂浜、照りつけるお日様、煌めく海! 日焼け止めも準備万端!」
そう。今日はスーの独壇場!
こんなにかわいい水着のレディなのです。きゅーとなのです。せくしーなのです。
「みーんな女の子を可愛く魅せる為の魔法! 私の踊り、魅せてあげちゃうっ!」
再度言います! きゅーとでせくしー。
水着の舞い乙女に目を奪われない訳ないでしょ? でしょ!?
さぁさ、ご覧になって!
じりじりと熱された砂浜の上を滑るように走りだした彼女の足元は花柄のサンダルが愛らしい。
普段は下ろしたままの白髪を陽の色のリボンで纏めてちょっとおしゃれをして、同色の薄いパレオを飾った深海色の水着には白花が咲いている。
踊り子めいた愛らしい水着の儘、スーは「海だー!」と両手を開いた103歳児(特徴:ロリ)。
ひらひらと動かす腕と共に陽色の薄いヴェールが揺れている。
それだけだって、道行く人の視線は釘付けなのです。
「海だよっ! よしっ! 準備万端! いくぞー!」
ざぶりと大袈裟な程に飛び込んで、スーは肺いっぱいに夏の空気を吸い込んだ。
暖かで、潮の混じったその空気は何処までも清々しい。
白い尾がゆらゆらと海の中で揺れている。
猫だから水が苦手? ところがどっこいビーチの乙女は一味違うのです。
――明けない夜はなく、暮れない朝もない。
だからこそ今ある花を摘むように。
運命に抗い、太陽と月のある限り――
師匠もそう言っていた。躍り事は斯くあるべしだ!
今は空に太陽! 夏の日差しに白い雲! 鮮やかな海に揺らぐ青は丁度いい。
つまりは水着だ。水着を着て、精一杯に海を楽しむが吉なのだ。
「渚の魔法でひとときの背伸び! なんちゃってー!」
ビーチの乙女は何時だって『可愛い』くて素敵なものだ。
スーの頭で可愛らしいケモミミがぴょこぴょこと揺れている。
外見特徴にロリだとか絶壁だとか書かれていたって関係はない。
ビーチの乙女がウィンクすれば夏は胸騒ぎの季節に変わるのだから。
ふと、彼女が顔を上げればビーチでは何かの気配。
「むむ……?」
首を傾ぐ。どうやらアイドルステージのようで……。
「む……むむ? ぴこーん!」
思いついたと猫耳がぴこりと立った。
成程、成程。アイドルステージの後は飛び入り可能の『渚のアイドル発掘★ステージショー』が始まるらしい。
これを見過ごす踊り子が居ますか? 否、居ません!
折角の渚仕様(背伸びしてちょっぴりおねいさん)。踊り子チックな水着を生かすにはやはり海で遊んでから舞い踊るが吉である。
「渚のアイドル発掘? それって、ハッピーに夏をエンジョイするってことだよね?
勿論勿論、私も行くよー! 神出鬼没の踊り子とは私の事だー!」
――さあ、夏をまだまだエンジョイなのだ!