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黒翼徒花
登場人物一覧
名前:鹿ノ子
種族:妖憑
性別:女性
年齢:22歳(ネクスト遮那と同年齢)
一人称:僕
二人称:~さん
口調:~ッス、~ッスか?、~ッス!
特徴:緋紫の髪を持つ少女。大きなトナカイの角と黒い翼。
設定:遮那と共に『魔』へ堕ちた少女。遮那の恋人。
少年時代からの遮那の友人であり肩を並べた戦友でもある。
――どんな時も傍に。
一度は振り払われた手を、もう一度掴んだから。
今度は離さなかったから。だから。
「もしかして、遮那さんは後悔をしてるッスか」
お前はそんな風に私の頬を撫でる。
「僕は後悔なんてしてないッスよ。どんな時も一緒ッスから」
頬を滑る指を掴まえれば、緩く委ねるように力を無くすから。
もどかしくて、歯がゆいと思った。
お前の指を引き寄せて自分の額に押しつける。ほんのり冷たくて心地良い。
薄い肌は白く。薬指に歯を立てれば赤く色づいた。それを指でなぞりもう一度噛みつく。
自分という存在をもっと深く刻みたい衝動のまま柔らかい肌に印を残した。
五年程前には考えられなかったような独占欲。執着心。
「遮那さんは間違ってなんかいないッス」
間違ってないとお前は言ってくれる。けれど、それを肯定してもいいのだろうか。
自分が正義だと信じられる程、子供であれば良かったのに。
真っ直ぐに前だけを見て居る事が出来れば。我武者羅に走っているだけで良かったならば。
けれど、目の前に広がるのは宵闇の黒。
どうしようもなく。
堕ちて。堕ちて――
「僕は、世界よりも遮那さんを選ぶッス」
世界の咎を背負った者の行く末など、地獄であるというのに。
お前は真っ直ぐに見つめてくれる。
「何があっても僕は遮那さんの味方ッス。何があっても、僕だけは、遮那さんの味方ッス」
どうかどうか。
この身が朽ちる前に。
お前を解放してあげなければ。
あの時、一度は離した手を。
お前は掴んでくれたから。
その手に縋ってしまったのは自分自身。
お前を巻き込んでしまった事に後悔しない日は無い。
けれど、ほんの少しだけ。
お前が傍に居てくれて良かったと思う。
本当はこんな事を想ってはいけないのに。
お前の温もりがあるから、まだ立ち上がる事が出来る。
この月が沈むまでは。
お前の胸に涙を零す事を許してほしい。
腕の中の温もりが、ただ自分の為だけにあることに、酷く安堵を覚えるから。
愛しき徒花に口付けを落とし――