PandoraPartyProject

SS詳細

囚われの金盞花【製品版】

登場人物一覧

焔宮 鳴(p3p000246)
救世の炎


 本の一ページがぺらりと捲られた。
 中の文字を読むより先に、見えたのは愛らしい少女がかいてある絵だ。
 少女漫画風のタッチだが、全編カラーで豪華なのであった。

「な、なのーっっ!!」

 鳴の名前は『炎嵐に舞う妖狐』焔宮 鳴(p3p000246)なの!
 大きい狐のお耳と、大きくてふわふわの尻尾がトレードマークの、ブルーブラッドなの!
 今はローレットという所で依頼を受けて、日夜、悪と戦っているの!
 でも今は、ぐにゃぐにゃねとねとした敵さんに、襲われているのー!
 身体がねちょねちょで、くすぐったいの……っ。どうしてこんな事になったかっていうと―――。


「誰も受けない任務……なのっ?」
 顔をこてん、と斜めに倒した鳴。鳴の言葉に、受付のお姉さんはこくりと頷いた。
 ……此処はローレットの受付だ。
 どうやら、依頼内容の精度がかなり低く、未知の依頼なため、ローレットのイレギュラーズも忌避してしまっているとかなんとか。
 そんな大変な任務では無いからこそ、精鋭と呼べる人たちがその依頼を受けず、かといってルーキーにとっては未知という言葉があるだけで危険の二文字が過ぎっているのか、誰も受けずに残っている状態であるらしい。
 正直、受付のお姉さんも色々なイレギュラーズに受けられないかを聞いているのだが、皆揃って首を縦に振らないらしい。故に、困っているのだと。
 でも、これも依頼。
 時が過ぎれば過ぎるほど、状況は悪化する場合だってある―――のかもしれない。
「わかったの!」
 故に、鳴は胸をピンッと張ってから、ふふんと鼻を鳴らした。
「なら、鳴がやるの!」
 鳴は右腕を大きく高く上げて主張した。
 此処にいる鳴を誰と心得るか!
 ローレットの鳴!
 そして焔宮家の小さな当主。
 例え小さな依頼であっても、それによって迷惑や被害が出るのであらば炎で焼き払うのだ。
 それに、簡単な依頼を受けようと思って来ていたし、これがなければ暇であったし。何より誰も受けない任務を自分が解決したとなれば、誉高い事だ。
 そうと決まっては行動は早い。早速受注した依頼の現場へと―――

 ―――という訳で来たのは、幻想の森の中であった。
「地図だときっと、ここら辺なの!」
 ぴょんぴょこ跳ねてステップを踏みながら、森の奥へ奥へと進んでいく。
 空はまだ高い所に太陽があり、そして森とは言えど視界が見えなくなるほどに木々で埋め尽くされている訳ではない。
 帰るべき方向は見失っていないから遭難することは無いし、いざとなったら空中庭園にすっ飛んで帰ればいい。
 そして鳴は立ち止まる。
「ここなの!」
 足取り軽く来たのは開けた土地であった。
 見える限りは何も無い。
 だが情報によればとても恐ろしい魔物が存在している為、誰も近づく事ができないのだという。
 さて見回してみると―――鳴の視界には、その『敵』らしいものは見えない。再び鳴は「?」と記号を頭の上に出しながら頭をこてん、と斜めに倒した。
 これが……依頼で言われていた未知……というものなのだろうか??
 此処で何も無かったから帰るという選択肢は無かった。
 故に、鳴は警戒心は備えながらも、探索する事にした。
 足元には花々が咲き、まるで春爛漫の庭先のような香りが一面に広がっている。花を潰さないように気を付けて歩いていくと、ふと目立つものがあった。
 それは一際目立つように咲いている大きな花だ。美しい赤色であり、薔薇のように花弁の枚数が多い。しかしそのサイズは薔薇というよりはもっと大きなものだ。
「気になるの」
 鳴はその花に、顔を寄せた。
「わあ、綺麗で……いい香りなの……」
 まるで引き付けて離さないかのように、香りに引き込まれている鳴。
 薔薇にも似ているが、もっと違う種類の香り。今まで嗅いだことはないようなフローラルなそれに、鳴は夢中になっていた。
 すると、段々と鳴の瞳が、とろんと甘く潤んで、なんだか、良い……気持ち……?
 お酒に酔うと、こういう形になるのだろうか。
 ほわほわと雲の上に浮いているかのように、身体が軽い。どうしたことだろうか、鳴は自分の身体の異常に気付き始めてそして―――。
「ふぁああ!?」
 地面から一斉に、鳴を捕らえるかのように触手が生えて、鳴の四肢へと絡んで拘束したのである!!


 そして事は冒頭に戻る訳だが、樹液とでも呼べばいいのだろうか。触手のような蔦が鳴の身体に絡んだ刹那、生暖かくてとろとろした液体がじわじわと鳴に触れている場所から漏れだしてきた。
 その感覚に全身がぶるぶると震えた鳴。
「な、なのーー!? これは、一体なんなのなの?!」
 尻尾をぶんぶん振って、力任せに蔦から逃れようとしてみたが、植物は一向に鳴を離す気配は無く。
 ならばと燃えろ――得意の炎を生み出し燃やさんとしてみたが、どういう訳か炎が樹液に溶け込むように鎮火されてしまう。
 こんな事ってあるのだろうか!?
 鳴は心の中で焦った。所謂、命が脅かされるのではないかとまで考えた。そう思ったら、些か身体が小刻みに震えてくる。このままでは不味い、一人で依頼に来ないで他の親しい人とか連れてくればよかった、なんて後悔を一瞬だけ頭を掠めていた。
 だが今そう考えても仕方ない。
 死ねない。
 まだ焔宮の長として、何も成していないこの渦中で命を投げ出すなどと――!
「い、いやなのー! 離すのー!!」
 ふわりと香る、花。
「……ふぁ」
 その毒のような香りが再び辺り一面を包み込んでいく。
 先程まで満たされていた恐怖が段々と忘れられていき、どちらかというと何も考えられないような甘い香りに、少女は力無く揺蕩う。
「力が……抜ける、の……っ」
 抵抗していた腕はいつの間にか無気力に下がり、四肢が蔦に捕らえられたまま身体はぶらぶらと空中に浮かされている。まるでマリオネットのようで、自分は糸に繋がった人形だ。その主導権を握っているのは植物系の魔物だなんて―――。
 そして、その花は、ふにゃふにゃになった鳴を確かめるように、蔦が静かに鳴の太ももの内側を丁寧に撫で上げていく。
「……ぁっ、ん」
 鈴の鳴るような声が響き、鳴は身体を確かめられているくすぐったさが脳に直接響いてしまう。
 これは鳴にとっても初めてに近い感覚であった。
 親しい人間と身体を接触させるようなそれとはまた違う。もっと、刺激的でアダルトな感覚が電気のように奔ったのだ。
 身体を捻り、なんとか蔦から、そしてこの感覚から逃れたい鳴だが―――残念ながらその行動に意味は無く。
 ただ、ただ、完成された女性のような曲線を持つボディが、艶めかしく乱れただけ。結わいていた髪の毛もいつの間にか解かれて、長く、華やかな髪の毛がふぁさりと風に揺れている。
 すると、鳴を覆っている服が段々と露に溶かされていく音が聞こえた。
「おようふく、が……っ」
 熱いものを水に入れた時のような溶ける音が聞こえるが、今の鳴にそれを止める術はない。
 段々とよく磨かれている肌の面積が増えていく事に、ぼぅっとした意識の中で小さな羞恥が生まれたくらいだ。お気に入りの服が無くなっていくことに悲しみを感じるながら、今一度鳴は大きく抵抗せんとした。
「ら、らめぇ、なのっ」
 しかし抵抗すれば抵抗するほど、蔦が鳴を捕らえる力が強まっていく。こんな麻痺っぽささえなければすぐにでも抜け出せるはずなのに。
 大事な部分には、ぎりぎり布が残った状態で、ほぼほぼ肌色が多くなった鳴。その頬は、赤く紅く染まっていく。
 誰にも見られていないはずなのに、目の前にある花が目をもって自分を見ているような感覚さえした。そう思うと、大きく開脚させられた足がなんとも無力感を醸し出していて、悔しささえ感じる。
「くうっ……」
 蔦にいいように体勢を変えられてあられも無い姿を晒しながら、素肌を伝う冷たい感覚に喉が鳴った。
 震える太ももの間を通っていく蔦に、とろりとした液体が滴って艶やかな声は段々と大人の声にかわっていく。徐々に、体が感覚にならされていくように、鳴の頭が思考を並べる事が困難になってきていた。
 代わりに紡がれる言葉は言葉というよりは音のようなもので、猫のように愛らしい艶っぽい音が響くばかり。
「ふぁ………、ひゃんっ」
 鳴の身体を調べる蔦は、やがて鳴が一番よく鳴く場所を探り当ててそこを重点的に攻め始めた。
 鳴の場合は尻尾の付け根だ。肌と尻尾を繋ぐ場所を、小指の先でなぞるようにして動き始めた蔦。
「そこっ、きもちぃの………ン、にゃっ」
 鳴を攻めて攻めて、追い詰めていくようなくすぐったさの波。
 強く擦られたかと思えば、今度は優しく突かれて。鳴の瞳に涙が溜まった。この涙がどういった意味の涙なのか、凶悪な花は知る由も無かったが、あやすように蔦は刺激を続けていく。
「おはなさぁ、ん、だめ、なの……、なり、おかしく、なっちゃ……っ!!」
 腰を高く持ち上げられ、自分を差し出すような形になっている鳴。
 既に汗ばんだ自分の露なのか、それとも自分を捕らえている蔦から漏れ出る樹液なのかわからない程濡れて、舌たる雫は静かに地面に吸い込まれていく。
「ハッハッ、ふぅう、ふぅっ、ひ、ぁっ」
 ふっ、と息を早く吐いては吸いながら、なんとか己の意識を保ち続けるので精一杯だ。
 うっかり頬を伝った蔦の露が、口の端から口内に入った。どんな菓子よりも甘い味が口内に響き、それのせいなのか、鳴の芯の奥が熱くなっていく。
「こんな……のっ、やぁっ、あゅっぅ、あっきもちいのっ、しゅきなのっ、んっくっ」
 初めての感覚に驚きながらだが、しかし鳴の思考は甘く蕩けていた。
 激しくなる蔦のボディタッチ。
 やがて鳴の豊満な胸元を巻き込んで掴まれて、擦れる感覚さえも心地良く感じるようになってきた。
 蔦によって身体を揺さぶられ、揺さぶられる度に擦れる場所から刺激が発生した。いつしか尻尾もねっとりと蜜に侵されながら蔦に飲まれ、擦られていく。いつもならふわふわの毛並みも、糸のように粘りついて、ぐちゅぐちゅと音がするのに鳴の頬は赤く柘榴のようだ。
「らめえ、なのっ。音、やぁっん」
 耳元をなぞる蔦、その瞬間鳴の身体が大きく海老のようにそった。
 ぴくんと跳ねた身体に驚きを感じつつも、鳴は一層大きく感じた気持ちのよさに流されていく。足の先、尻尾の先まで引っ張られるように伸びていて、口が大きく空いていた。
「ああっ、んひ、なのぅぅ……っっ!!」
 そこにもう恐怖という感情は無かった。
 足の裏を這う蔦、胴部に擦れる蔦、そして蜜のように充満する甘い香り。
 とぷとぷと聞こえる水音が、鳴の耳に響く。嗚呼、これからこの少女はどうなってしまうのか。
「も、もうっこれ以上――はっ、はうわぁあっなのぉぉお!」
 押し寄せる感覚に酔いしれて――。

 ――と、そこでページが捲られる。

「ひあぁぅ、なの、んっ、あっあっそこだめぅなのぉぉ!!」

 ――ペラペラペラ、とページが捲られていく。

「んぅんうう、イッ、じゃ、んくっ、ひあぁうううっっ」

 ――ペラペラペラペラ――。

「んぁぁああーーーーっっ!」

 ―――轟。と本が燃えた。
 ページが多くはないけれど内容が濃い本が一冊、一瞬にして炎に飲まれて塵が落ちていく。
 それを持っていたのが、本物の鳴だ。
「こ、これは」
 此処は川のほとり。まあ、よくない本とかが捨てられていたりする場所で、蝶々を追っていた鳴が偶然見つけた本を手に取ったのだ。
 表紙にいた少女があまりにも自分と似ているようなものだったから、どんな内容なのだろう?? と思って手に取ったが最後。
「いけない本だったの!! ていうか鳴だったの!! 紛れも無く鳴本人だったの!! これは無許可なの!!」
 そう、ここまで見ていたものは同人誌の一部分なのである。
 それは鳴を題材としたもので、内容は明らかに青少年向けでは無かった。
「最近はやりの同人誌なの!! 初めて見たの!!」
 故に驚いて焼いちゃった訳なのだが―――そりゃあきっと誰でもそうする純粋は反応だ。
「か、かかかか回収しなきゃなの!!」
 慌てて鳴は、闇市へと奔った。
 己が書かれている不正義な本は赦さない。一体どこの誰がこんなものを!
 そんなこんなを思いながら、真っ赤になった頬を手で冷やしながら鳴は焔宮の総力を挙げて、本の回収へと急いだ。
「み、見ちゃだめぇなのーーー!!」

  • 囚われの金盞花【製品版】完了
  • NM名
  • 種別SS
  • 納品日2019年08月18日
  • ・焔宮 鳴(p3p000246

PAGETOPPAGEBOTTOM