PandoraPartyProject

SS詳細

御天道会議第十八代議長、ヤムニア

登場人物一覧

御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
御天道・タントの関係者
→ イラスト

名前:ヤムニア
種族:ウォーカー
性別:女性
年齢(或いは外見年齢):78歳
一人称:私
二人称:あなた
口調:です、ます、でしょう?
特徴:上品、やさしい、知的、心慮深い、責任感が強い、自分に対して不器用
設定:

御天道会議第十八代議長、ヤムニア。
人類があまたの部族の分裂体であった状態からひとつの『人類』になってから八世紀たった社会において、『教会』の中で特別に高位な役職をもつ人物である。
彼女の役割は自らを含む十二の議員によって人類の信仰を編纂・再編そして新訳することであった。
この会議によって定められた聖書の文言は一字一句変えてはならないという掟が生まれ、それから少なくとも二千年以上にかけて受け継がれることになる。

・人間性と歴史
上品でおちついた、優しい目をした美しい女性。
丁寧で、そして相手に配慮したおっとりとした口調で話し、心は強く固い。
その立場から生涯を独身で過ごしたが、多くの友に恵まれ、最後の御天道会議を終えたその翌年に老衰によってその世を去る。
花が役目を終え、枯れるように。

となる……筈であったが、死の間際に混沌世界へと召喚される。年の割にだいぶ元気な身体で。
かつての世界で自身の役目も終え、満足して生涯を終えたと考えていたので、この世界で新たに別の人生を歩もうと考えた。

・タントとの関係性
タント自信は聖書が定められてから数百あるいは千年以上後になって幾度も解釈の変更がなされた後の人格であり、混沌世界にうつってからも人々との出会いや経験によって人格は変化する。
ヤムニアはそうなることを深く理解しているため(あるいはそうなるよう聖書を作成したため)、タントのいまのありかたを『あるべき変化がおきた』として優しく見守っている。
むしろ、タントの芯(本質)は時代を経ても変わらないことを確認できて、深く満足もしているようだ。

タントにこめた芯とはつまり、人として幸せに生きていくための本質である。
召喚時点での解釈では、スットコな御嬢様という姿こそがその本質をさしたのだろう。
タント様とは幸せの形であり、誰かとともに生きることの本質なのだ。

おまけSS『御天道会議』

ここではない場所、ここではない時間、ここではない世界にて、星暦一世紀を数え始めたころのこと。
無数の部族にわかれ大陸に散っていた人類は、和平や戦争、愛や憎しみを経てしだいにひとつの集団へと併合されていった。
彼らは文化を交える中で食料の生産方法や家屋の建築方法、衣服の作成やそれらあらゆる生活方法を互いに教えあい、そして取り入れ合うことで高度化を増していく。
その急速な人類高度化は善し悪しにかかわらず生活基盤の改善という形で受け入れられ、そして巨大な波となってかつての文化を少しずつ拭い去っていった。時に優しく、あるいは強引な形で。
そんな中で最も併合を困難にしたのが信仰であった。
ひとは何かを信じなければ生きていけない。
自分が羽虫や野ねずみとおなじ組成物であるという知識は本能と習慣で染みつくが、だからといって同等の暮らしをすることは自他が許さない。
自分たちが人間であること。
自分たちが言語を用いること。
自分たちが人を愛すること。
自分たちが争う意味。
自分たちが『国』というものをもつ意味。
人生の理由。
死の意味。
そしてそれらが尊ばれる理由。
万人がすべてを理解するには、あまりにも知識の蓄積を要した。それだけの蓄積をする余暇は、当時のあまねく人々にはなかった。
ある部族は先祖の世界ははるかに優れ豊かであったのだからできるだけ近づくべきと信じ、ある部族は土と空が自分たちの一部だと信じ、ある部族はいつか自分たちだけが最後の種族に選ばれると信じた。そして紙幅を問わぬほど膨大な種類の信仰が、複雑に併合された人類社会で溢れ、そして衝突したのである。

ひとは何かを信じなければ生きていけない。
それらを奪おうとする者もあるなかで、ついに星暦1世紀。御天道会議が始まった。

会議の内容はただひとつ。人類それぞれの信仰を尊重しながら、それでいて彼らがある意味彼らのまま豊かに生きていけるように、複雑に混ざり合い解釈の乱れた信仰を編纂し、再編し、そして新訳することであった。
会議に挑んだすべての者は、この計画が遠大な、そして困難なものであると確信していた。
家は住めば慣れるもの。食はたべれば慣れるもの。しかし信じたものは変わらず、無理に塗り替えることは時に暴力的反発をもたらす。
会議は何世代にもわたって慎重に行われ、その慎重さはあろうことか700年を要した。

星暦八世紀、最後の御天道会議が行われた。
もとは無数に分かれた部族の長であった者たちは何世代にもわたる交流のなかで混ざり合い、互いの人生をいきてきた。
家は住めば慣れ、食はたべれば慣れるように、人もまた生きれば慣れるもの。ただその時間が遠大なだけで。
はじめは互いを否定しあう形であった御天道会議も、700年の度重なる世代交代の末にいくつもの和解がおこり、円卓を囲む12の議員たちは優しい笑顔で、そして和やかに手を叩き最後の御天道会議終了の言葉をうけた。
「私達はこの信仰をたいせつにたいせつに守っていかなければなりません。
 なぜならば、この豊かな社会は人々が自らを信じ生きたゆえにできたものに他ならないからなのです。
 ひとはすべてを知るにはあまりにも小さく、あまりにも孤独です。
 ですがこうして……一冊の本に信じたものをまとめ、そしてかたく胸に抱くことができます。
 信仰は、我々がひとであるために、最後に抱く鍵なのです。
 もう一度言いましょう。
 私達はこの信仰をたいせつにたいせつに守っていかなければなりません」
 御天道会議第十八代議長、ヤムニアのことば。
「いまこのときをもって新訳聖書を決定し、以後すべての文言を変更することを禁じます」





 複数の部族によって信仰されていた『太陽』の概念が編纂されるなかでできた『タント』という存在は、太陽のもたらす光の象徴であり、太陽に導かれたり時に助けたりという自然の本質と、そして人間社会の本質について述べるべく合理的に配置されたものである。……と、少なくともヤムニア含む御天道会議員たちは考えた。
 社会は時の流れで移ろい常識も大きく変化するが、本質は変わらない。それを『解釈』することで未来の人類社会に対応していけるよう聖書作成したためである。
 いま混沌世界に知られるタント様がその姿形、そして人格を形成するのは、ヤムニアがこの存在を聖書に定めたそのずっとずっとあと……幾度も解釈が移り変わったあとのことである。

PAGETOPPAGEBOTTOM