PandoraPartyProject

SS詳細

計画、完了

登場人物一覧

月待 真那(p3p008312)
はらぺこフレンズ
真道 陽往(p3p008778)
双銃の狼

●パーティはすぐそこ
「さあ、て」
「おっちゃん、だいぶイメージは固まって来た感じ?」
「ああ、そうじゃな。色々と刺激を受けたからのう、創作意欲もわくってもんじゃ」
「そっか!」
「ま、あいつらも力になれてんなら……別に」
「あ、ハル素直じゃない! もしかして照れてるん?」
「バッ、そんなわけねーだろ!」
「嘘やん、ならそんな慌てんでもいいんちゃーう?」
「ま、真那!!」
「へへ、ハルの照れ屋~!」
「待て!」
 どたばたと部屋の中を駆け回り追いかけ合う二人を見て、善吉は苦笑を浮かべながら見守って。幼い二人とここまで仲良くなり、あろうことか祭に店まで出すようになるとは。人生何があるかわからないものだ、とぼんやりと思う。
 あの日真那に依頼を頼んだのはほかでもない自分だが、それが今こんな未来になっているだなんて、過去の自分に話したら心臓発作で死んでしまいそうだ。
 最初はただの依頼だけだった。けれど、かわいい孫を見るような心地で傍に居たら、気が付いたらこうなっていた。本当に、運命というものは不可解でわからない。
 ちっぽけな依頼だった。それが、一緒に食事をするような仲にまでなるなんて。挙句の果てにはエプロンを渡し、雇うところまで行くとは。
 最初こそキャベツとレタスの違いも分からない子犬のような二人だったが、最近はようやく包丁を持つ姿がさまになってきた。

 ◇
「なあおっちゃん、ねこのてってこう……?」
「それはグー」
「じいちゃん、こうか? こうだろ?」
「握るな」
「っぶな、指切りかけた……」
「うおおおおああああああああ皮むきってこええええええ」
「話を聞かんか!!!!!!!!!」
 ◇

 あの姿を二人の親に見せてやりたいくらいだ。たぶんお母さんなんかはきっとひやひやして包丁を取り上げることだろう。
 指を切ってしまったり、野菜をあらぬ方向へ吹っ飛ばしたこともあるが、二人は充分上達した。この短期間で、目まぐるしい変化を遂げた。素晴らしいことだ。
 二人が素直なのも合って聞き分けがよく、同じ失敗を二回しないのも上達した理由の一つだろう。
「なぁおっちゃん、レシピは固まったん?」
 真那が不意に善吉へと問う。陽往も『そういえば』と呟きながら、同様に善吉の方を見て。
「うむ、この間で固まっておる」
「おお、さすがじいちゃんだぜ!」
 善吉が頷くと、陽往はみるみる笑顔を浮かべ飛び上がる。よほど楽しみにしていたのだろうか、わかりやすい。真那に笑みを浮かべ、今からでも作りたいとそわそわしている様子を見れば、どのような気持ちか手に取るようにわかるというもの。そんな姿に善吉は笑みを浮かべた。
「早速作ってみるかのう?」
「いいの?」
「俺は手伝う! 何か買ってくるか?」
「いや、そんなに必要なものはないんじゃ。最終チェックだし、二人も食べてもらうのがいいかもしれんのう……」
「私も手伝う!」
「折角だしそれを昼メシにしようぜ」
「おー!」
 真那と陽往は二人で話を進めてしまう。昔なら怒っていたところだが、一人で作るのではなく三人で作るのならば話は別だ。
 食べる喜びだけでなく、作る喜びを。気付いてくれたことが、とても嬉しい。
「じいちゃん? 作んねーの?」
「あ、なんなら私らだけで作ってみる?」
「俺達だけで作れんのかな」
「まあ作れんこともないじゃろうが、油を使うしのう。まあ、作るとしようかの」
「私もう腹ぺこやー! たのしみ!」
「俺も! 作れたら弟たちにも作れるようにしてみてえな」
「まあまずは祭りのための最終確認じゃ。さっそく作っていくぞ」
「「おー!!」」


「まずは鶏肉に片栗粉をつけるんじゃ」
「こー?」
「もう少ししっかりめでもいいの、ハルくらいじゃな」
「お! 俺結構料理の才能あるんじゃねえか?」
「才能があったら卵は握りつぶさんよ……」
「それは言わない約束だろ!」
 両手を真っ白にした二人の後ろから覗き込んで、善吉は様子を見守る。慣れた手つきとは言い難いが、それなりにしっかりとやる二人に安心して。
「よし、そんなもんで充分じゃ。次は油じゃし下がっとれ」
「いや、俺がやりたい」
「ハル?」
 善吉がフライパンに油をしいていくのを眺めながら、陽往は善吉を見つめた。
 真那はそれに首を傾げながら、二人を見守って。
「じいちゃんにだって頼れるところは見せたい」
「……なら、ハルに任せるかの。火傷せんように、話は聞くんじゃぞ」
「おう」
「じゃあ次の時は私もやりたい!」
「真那はよけいに火傷に注意せんといかんからな、もう少しあとじゃ」
「えーー!?」
「その代わり、真那にはたれを作ってもらうから安心せい」
「はぁーい……」


 ぱちぱちと油が跳ねる。踊る。
 片栗粉を纏った肉を寝かせて、揚げ焼きにする。こんがりと火が通ってきたら、一旦フライパンから引き揚げて身をカットする。
 綺麗なフライパンに戻して真那特製のたれをかけたら、味をなじませていくことに注力する。
 レタスの上にのせれば、完成だ。
「ハル、やけどしてへん?」
「ああ、なんとか。俺もまだまだだなあ」
「わしは何十年と厨房に立っとるが、二人はまだまだじゃしのう。同じようにできる方がびっくりじゃ」
「じいちゃんもそろそろ歳だもんな」
「おっちゃん、腰しんどかったら言ってな?」
「まだやれるわい!!! ……それはともかく、これでできあがりじゃ。あんまりぱっとせんかのう?」
 机の上に置かれたのは、串刺しにされた甘辛チキン。ほんのり赤く、油で照った見た目が食欲をそそる。
「俺、食べてえ……」
「私も……」
「そういえばそろそろお昼かのう。頂くことにしようかの」
「「やったー!!」」

 白いご飯をお茶碗一杯によそって。
 味噌汁といくつかのおかずをテーブルに並べて。

「「「いただきます」」」

 大きな口で、がぶり。
「おっちゃん、これ」
「ああ、めっちゃおいしい!!」
「そ、そうか……安心じゃの」
「でもこれ、どうやって食べれるようにするん? ずっと味こいとしんどいとおもう」
「だな、そこが気になる」
 もっもっと頬張りながら食べ進める二人。米があるからカバーできるというわけではないのだ。
「うむ。そこであっさりとした漬物を用意しておくつもりなのじゃが、どうじゃろうか」
「おつけもん?」
「いいんじゃね? 食感もアクセントになりそう。まあまずは食べねえとわかんねーけどな!」
 二人は顔を見合わせて、チキンを頬張り続ける。
 そんな様子を、善吉は微笑ましそうに見守るのだった。

 祭は、すぐそこまで迫っていた。

  • 計画、完了完了
  • NM名
  • 種別SS
  • 納品日2021年06月27日
  • ・月待 真那(p3p008312
    ・真道 陽往(p3p008778

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