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『魔法少女セララNovice 第四巻 決戦、四天王』
登場人物一覧
- セララの関係者
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前回までのあらすじ!
百獣怪人メギガマル、怪人博士ロスヴィータの魔の手を退け、ダークデリバリー四天王の二柱に勝利したセララ。
新たな力、ユニゾンインストールを会得したセララはその後も快進撃を続け、残る四天王にも勝利し、遂に敵の本拠地まで迫る!
しかしそこで待ち構えていたのは、ダークデリバリー首領の祝福を受け、以前よりも強化されて蘇った再生四天王たちだった!
一堂に会しセララを迎え撃つ四天王たち。明らかな数の不利にしかし、セララは希望を揺らがせない。
なぜなら強くなったのは四天王たちだけではない、他ならぬセララもまた歴戦を経て大きく成長している。
そしてその雌雄を決せんと、正義と悪は今ここに相対した――!!
「遂にここまで辿り着いたか……魔法騎士セララよ!」
「オメにやられた傷の痛みはよ~~っぐ覚えてるど!」
「恐ろしい成長速度、オレじゃなきゃ見逃しちゃうね」
「ダガシカシ、ワレラノチカラモマタ、以前マデトハクラベモノニナラヌ……」
「「「「今度こそ決着をつけるぞ、セララ!!」」」」
「こい! ボクは、負けないよ!!」
ダークデリバリー首領が坐す玉座の間に続く大広間で、セララと四天王は激突した。
一度目のロスヴィータとの戦い以来すっかり代名詞となった『魔法騎士』の力を宿し、魔法剣をセララが振りかぶる。
狙いは四天王で最も単体戦力の低いロスヴィータ。しかしその剣撃を阻むべく巨体が間に滑り込む。
「おっと、そうはさせねぇだ!」
「メギガマル! なら、これで! ブレイズソォオオオド!!」
単純な肉体スペックで言えば最も高いメギガマルのガードを、炎の魔法剣が焦がし斬る。
傷口を焼けば再生はできない。過去に戦ったときの経験を活かして必殺の一撃を叩き込んだが……
「イデデデデ!! やっぱりすんげぇ痛ェど!?」
「傷が……塞がってる!?」
熱傷の痛みに悶絶するメギガマル。しかしその傷はセララの目の前で確かに回復していた。
以前よりも遥かに強化された再生能力。最早単純な熱で傷口を焼く程度ではその再生を阻めない。
思わず息を呑むセララ。その動揺が剣先にも伝わり、メギガマルが獰猛な笑みを浮かべた。
「さすがはボスの力だべ。これでもうオメの剣は怖くねぇど!」
「むーっ! なら今度は……」
「余所見ヲシテイテイイノカ?」
「! バリアッ!!」
機械音声がセララの背後から届く。続け様に雷撃の連弾が殺到した。
攻撃の後隙を突いた四天王・魔導機兵フォロボースの魔導ミサイルだ。
セララを中心にローラーダッシュで旋回しながら、メギガマルを巻き込むのも厭わず乱射する。
咄嗟にバリアを展開して防御するが、降り止む気配のないミサイルの群れに障壁が悲鳴を上げた。
「な、仲間を巻き込んでいいの!?」
「四天王・メギガマルノスペックハ把握シテイル。問題ハ無イト判断」
「いてぇのはいてぇだべがな……博士ぇ、今だど!!」
「いいだろう! 特攻部隊、前へ!!」
合図と同時にロスヴィータの展開した自爆ロボたちが殺到し、次々と爆発した!
メギガマルの足止めにフォロボースの牽制、そこへ物量に物を言わせた自爆特攻に流石のセララもバリアを維持しきれない。
いつもは莫大な魔力量に物を言わせて堅牢無比を誇る魔法障壁が、襲いかかる負荷に耐え切れず粉々に砕け散り――
「オレのこと、忘れてもらっちゃ困るかな?」
「うわあああああああーーっ!!?」
再度展開までの一瞬の隙を突いて、外道剣魔ネコソギルの凶刃がセララを貫いた。
セララの矮躯を貫く刃は紛れもなく致命傷。肉体的なダメージを魔力で肩代わりする魔法少女の特性によって一見して無傷だが、引き換えに甚大な魔力ダメージを負う。
「悪いね、今回ばかりはタイマンってわけにもいかなくてさ。だってホラ、オレたちもう後がないから」
以前にも見た飄々として軽薄な態度に本気を滲ませ、猫耳の少年剣士が口笛を吹かす。
魔力消失の倦怠感に苛まれながらも立ち上がったセララを囲んで、四天王の視線が突き刺さった。
「つ、強い……!」
かつて一度は倒した強敵たち。
しかしそのときはいずれも一対一での戦いで、連携を取ればこうも手強くなることをセララは知らなかった。
マジカルカードを核とし、欲望を苗床に生まれる怪人たちは基本的に我が強く、協調することはありえない。
だがセララというダークデリバリーにとっての大敵が著しい成長を果たしたことで、却って彼らの結束を強めてしまったのは皮肉な結果としか言い様がなかった。
「些か風情が無いが、こうしてみるとかの魔法少女も他愛ないものだな」
「オメとはタイマンでケリをつけたかっただべが……いい加減ボスもお怒りだでな、許してほしいだよ」
「とはいえホラ、オレたちってワルモノだからさ」
「数ノ暴力ハ極メテ合理的ナ手段ダ。確実ニ引導ヲ渡シテクレヨウ」
セララを取り囲みながら、各々の武器を構えその矛先を向けるダークデリバリー四天王。
絶体絶命の窮地にセララは起死回生の策を模索するも、その機会すら与えぬとばかりに攻撃が放たれる。
咄嗟に取り出した一枚のマジカルカード。しかしそれを発動する隙も無く、セララの身体は砲火に晒され土煙の向こうに消えた。
「やったか!?」
「さすがにこんだけしこたま殴ればおしめぇだべ!」
「趣味じゃないんだけどなぁ、こういうの。ま、仕方ないよね。首領閣下の仰せだから」
「魔力反応ノ消失ヲ確認。生命反応、極メテ微弱。敵戦力ノ無力化ニ成功シタト判断、確保ヲ進言スル」
「よしきた! ロボット共、セララを拘束せよ! 今度こそ余すことなく実験に役立ててやる……!!」
フォロボースのアナライズ結果に勝利を確信し、ロスヴィータが捕獲ユニットを差し向ける。
未だ晴れ切らぬ土煙の向こうに蹲る小さな影を見据えながら、四天王たちは勝利の余韻に沸いて――
「――今だっ!!」
「ナッ……!?」
一閃。
土煙を割いて現れた影がフォロボースを斬り裂き、機械の身体を両断した。
その影が何者であるかなど改めて問うまでもない。
今しがた倒したばかりのはずのセララが、その魔力を漲らせ無傷でフォロボースを斬り伏せていた!
「バカ、ナ……! ワレラハ確カニオマエヲ倒シタ、ハズ!!」
「確かに一度やられちゃった。だけど、それなら蘇ればいいだけだ!!」
セララの手に掲げられた一枚の手札。
それは数あるカードの中でも最上位に位置する『フェニックス』のマジカルカード。
その力は完全蘇生。
たった一度限りではあるが、あらゆるダメージを克服して蘇る、まさしく切り札の中の切り札!
魔法少女として大きく成長したセララだからこそ使用可能となった、起死回生の一手だった!
「続けてダブルインストール! クラスチェンジ、フェンリルフォーム!!」
「更に奥の手だとぉ!?」
続けてセララが掲げたのは、『フェニックス』と同じくこの世ならざる幻獣をモチーフにした最上位カード、『フェンリル』。
『フェニックス』が回復の極みに位置するマジカルカードならば、こちらは強化の極みに位置するマジカルカード。
伝説の神狼の名を冠したその手札は、神をも逃さぬ神速と鋭牙をセララに与え、反撃の狼煙を高らかに上げた!
「もう容赦しないよ! がおーっ!!」
「な、速ッ――!?」
トレードマークのうさ耳リボンを銀白の狼耳に変え、両手に牙の如き短剣を握ったセララが疾駆する。
続く標的は四天王中最速を誇る外道剣魔ネコソギル。
ダークデリバリー最強の剣士である彼の動体視力を以てして姿が朧気な神速を以て肉薄し、獣のように荒々しく両手の牙で連撃を繰り出した。
応じるネコソギルの無限一刀。しかしそれも上回られ、魔猫の剣士は神狼の牙に敢え無く散る。
「よくもやってくれただな!! だがまだオデとロスヴィータが残ってるべ! 今度こそオメを……」
「おまえにはこうだ! 必殺、セララフェンリルバイト!!」
刹那の間に四天王の内二柱が屠られ、危機に猛った百獣怪人メギガマルがセララの前に立ちはだかる。
フォロボースとネコソギルを降したセララの連撃。しかし数を頼みにした軽い攻撃では己の防護を上回ることはないと、肉を斬らせて骨を断つ思惑でメギガマルは攻撃を受け止め――
「んなっ!? オデの身体が、凍って――!?」
「熱してダメなら冷やしてみる! 全身カチカチに凍りついちゃえー!!」
フェンリルセララの牙が傷を刻むと同時に、傷口から極寒がメギガマルを蝕み細胞の一片まで凍結させていく。
あらゆる生命活動が停止する絶対零度を前に再生能力が封じられ、彼は驚愕の表情のまま凍りつき……やがて粉となって砕け散った。
「さぁ! 次はキミで最後だよ、ロスヴィータ!!」
僅か数秒足らずの間に三名を屠ったセララが、一切の油断無く最後の獲物へ呼び掛ける。
だが……
「あ、あれ? ……いない?」
返ってくる言葉は無く、いつの間にか辺りはもぬけの殻。
目敏いロスヴィータは三人がやられたと見るや、脇目も振らず逃げ出してしまっていたようだった。
「……もーっ!! そんなのってアリ~~!?」
決着をつけると宣っておきながらトンズラを決めたロスヴィータにセララは頬を膨らませた。
思わず気が抜けたと同時に「ぽしゅん!」と魔力も抜けて、フェンリルフォームからいつもの魔法少女モードに戻ってしまう。
「ありゃ、時間切れだ。でも本命はこの先! まだまだ頑張らないと、だねっ!」
しかしセララは意気軒昂。この奥に待ち受ける首領との戦いに意気を漲らせ、「おーっ!」と可愛らしく拳を上げた。ぴょこり、うさ耳リボンも小さく揺れる。
剣を握り、一度だけ四天王との激戦の跡を振り返ると、そのままセララは玉座の間に続く階段を昇っていった。
――次回、最終決戦。待ち受けるは悪の大首領、竜姫ニーズニール!
To be continued――→