SS詳細
紐に指引っかけられるとすっごい恥ずかしいと思う
登場人物一覧
エルス・ティーネは悩んでいた。
深く深く悩んでいた。
ここで
眉間には深い皺が刻まれ、口はへの字に曲がり、時折微かに唸り声すら聞こえてくる。
そんな彼女の前には、大量の布。否、水着が並んでいた。
◆エルスの水着
千五百年もの長きを生きる
揶揄われず、子ども扱いされず、かつときめいてもらえるような……そんな高すぎるハードルを彼女は飛び越えようとしているのである。
さて。
そんな可愛らしい乙女の前に水着こそ大量に転がっているものの、悩める彼女が手に取りたるは2着の水着。
彼をイメージしたような情熱的な赤と、彼の好きそうな(重要)色香漂う黒。ここまで絞ってなお最後の最後で絞り切れない様子。交互に体に当てては、眉間の皺を深めたり、朱の差した頬を緩めたり。
暫く悩んで、悩みに悩んで、最後に彼女が選んだものは──黒。
赤も素敵だけど、とっても素敵だけど、並んだ時に映えるのはきっと黒だから。隣に立ちたいと願うなら、叶った時の見え方にだって気を遣うのだ。
最後の確認に、と姿見の前で一人着替えてくるりと回る。
大きなフリルの開いたVネックのビキニ。フリルの下には、ワインレッドのシースルーのレースを重ねてボリューム感UP。目立つ谷間は黒紐でざっくり編み上げて。前土台にあたる部分から伸びた2本の黒紐は、トップの下を通って背中でリボン結び。ボトムは黒いミニスカ風、際どい赤がちらりと覗くレイヤード。ヒールのついたサンダルは黒で統一され、飾り紐にこれまたほんのり赤が色付いて。
メインは黒、差し色にレッドカラーを使ったレイヤード・ビキニ。深いVネックは黒紐で編み上げて、ミニスカ風で足の付け根はしっかり隠れ、着ていると露出はそこまで気にならない。
大きなフリルも重ねたレースも可愛らしく、開いたVネックに谷間の編み上げは大人っぽく。乙女も色気も忘れずに、少女と女性の狭間を体現するように。
愛しの赤犬の好みに合わせているので、当然端から見れば露出はそれなりにある訳だけれど。本人を前にして多少の露出もそこに向くかもしれない視線も気にしないだけの胆力が身に付いたかは別問題な訳だけれど。
それはそれとして、水着姿を見せに行くくらいの勇気は貰えそうなので。もう一度くるりと回って、大丈夫、ちゃんと似合ってる。
「よ、よし……大丈夫よね、変なところはないわよね」
今からそわそわ、そわそわ。
折角水着が決まっても、覚悟が決まるまでにはもう少しかかりそう。
おまけSS『デザイン解説』
Vネック・レイヤード・ビキニ
《トップ》(セパレートのビキニの内、胸周りの部分)
深いVネック(黒紐でざっくりと谷間を編み上げ)
大きめのレイヤードフリル(黒いフリルの下からレースのワインレッドのフリルがチラ見え)
胸の合間から出た2本の黒紐がトップの下を通って、背中でリボン結びされている
《ボトム》(セパレートのビキニの内、腰回りの部分)
ミニスカ風パンツ(キュロット)
キュロットの下に際どい赤いボトムを穿いている(チラ見せレイヤード)