SS詳細
青年T
登場人物一覧
名前:越智内・定
種族:旅人
性別:男
年齢:17歳
一人称:僕
二人称:~君、~さん
口調:だ、だよ、だよね
特徴:【凡庸】 【ネガティブ】
設定:
当該ノンプレイヤーキャラクターは削除されました――
越智内・定はネクストでも現実と違わぬ姿をして居た。
輝かしい人生を送る者達の影でひっそりと暮らしている凡庸を絵に描いた名前の通り山無しオチ無しな平穏な日々を過ごす何処からどう見ても普通の青年であった。
一定のエリアを訪れたPCに対して話しかけることでクエストを発生させるNPCという立場を与えられたが、青年には『話しかけること』が出来なかった。
普通でしかない僕が、英雄だなんだ言われる奴等を仕事に送り出す役目をする? 莫迦みたいだろ、立場を弁えろよ――
少年に欠けた要素は彼にとっての『太陽』が存在しなかったことである。太陽が存在しなければ人間は上を向かないとでも言うように彼は下ばかりを見て過ごしていた。
本来ならば『太陽を得た後』の青年としてのキャラクリエイトが行われるはずだったが、データは『彼が普通の青年として混沌に訪れた頃』を作り出した。
話しかけられないという事は、クエストを発生させることも出来ないという事である。
不要であるとシステムが判断してデータを消去――した筈が、データベースエラーの結果『電脳廃棄都市ORphan』にて当該データは再構築された。
越智内 定は自身が『再構築された』事を知っている。ゲーム内であれど人が死ねば恐ろしく、リスポーンするのを見れば竦み上がる。
現実世界からダイブしてくるPC達と何一つ変わりない感性を所有している。それが、バグだ。本来ならばそんな感情も感性も思考も持ち合わせないはずなのだ。
ORphanの中に存在する『学校』の区分で隠れ、息を潜めて『学生』の真似をしている。
学生をして様々な人々と普通の生活が送れることに感謝しながら、バグで再構築された事を知っている青年は今でも『太陽』を探していた。
俯いてばかりの自分の手を引いて「行こうよ」と笑ってくれる太陽は『R.O.O』には存在して居ないことを彼自身は知っている。
それでも――彼女が何処かにいるような気がしてならない。君を探して、『バグの世界』で生きていく。
「太陽は何時だって空に上がってるんだぜ。僕だって、時々は空を見上げたくなるもんだよ」
おまけSS『天蓋の太陽』
――ねえ、定くん。こっちだよ。
その声を、何処かで聞いたことがある気がした。手を引いて、時には大笑いして。
弾むようなその声音が僕の名前を呼んで、笑みを咲かせて、遠ざかる。
――■■■さん。
僕が名を呼べば「なんだい?」と揶揄い笑う。僕が付いていけば僕の言葉を真似て揶揄って首を傾げる。
猫のような彼女。
それがどうして僕の太陽であると感じたのかは、分からない。
けれど、彼女のような存在が居なければ僕は前を向けないんだ。馬鹿らしいって笑わないでくれ。こっちだって本気なんだ。
僕が生きていくための切っ掛けなんて大それたもんじゃないさ。ただ、ちょっと背中を押してくれれば良い。
太陽って言うのは空でこっちを見て笑ってるんだぜ?
この世界には存在しない『太陽』を、二度目の『命』を得た僕は探している。