SS詳細
でもそうはならなかったんだよ。
登場人物一覧
名前:アベリア・ウェルギリス
種族:精霊種(人間種とのハーフ)
性別:女性
年齢:10歳
一人称:あたし
二人称:呼び捨て
口調:〜わ、〜よ、〜よね、〜かしら
特徴:長髪、ちちしりふともも(予定)、ロマンチスト、情が深い
設定:
愛称はリア。両親や親しい者にはそう呼ばれる。
混沌での彼女と異なり、『しっかり精霊種』である為、病弱ではなく健康体。
一見すると蓮っ葉、良く見ると只管お人好しで面倒見が良い性格は変わらない。
父親は世界的楽団を指揮する巨匠ダンテ・ウェルギリス。母親は自身の役目よりも家族への愛を優先した大精霊のベアトリクス。
二人はそれだけで一本の伝承歌が完成してしまいそうな大恋愛の末に結ばれたらしく、巨匠の手掛ける組曲『煉獄』は身命焦がすような恋の実話とも言われている。
ウェルギリス邸は伝承に存在するが、世界中から引き合いのあるダンテを父に持つ事から、彼の公演と共に世界を巡る事もある。『優しい父』は公演の度に連れて行けとせがむ愛娘の我儘に苦笑するばかりだったが、持ち前の美声と合わせ、バイオリンには特別な才能を有しており、幼いながらも発露する天賦の才を見るにつけ、最近は父親としてもマエストロとしても満更ではないようだ。
周囲を愛し、周囲に愛され。世界に曇りはなく、キラキラと輝いており、全身を包む『旋律』は幸福そのもの。
そんな彼女の特別な契機はついこの程、父が招かれたバルツァーレク領での『事件』である。
年相応に好奇心旺盛な彼女は見慣れた王都と異なる、初めて訪れた街にはしゃぎ、面倒を見てくれていた祖母のアザレアとはぐれてしまったのだ。
比較的治安の良いバルツァーレク領とはいえ、基本的に荒んだ伝承である。見るからに良い所の令嬢であるアベリアは柄の悪いチンピラに拐かされそうになるも……その場に現れた長い緑髪の男性に救われる事になる。
チンピラ全てを簡単に『のした』彼は、泣くアベリアの頭を撫で「大丈夫。すぐに迎えが来ます。但しここで起きた事はくれぐれも内緒ですよ」と優しく微笑む。
アベリアにはそれが何の事だか分からなかったが、間近い再会をもって彼女はその意味を察する事になる。
父に叱られ、抱きしめられ――それから挨拶に向かった屋敷で二人を出迎えたのは……
幼馴染のドーレ氏(8)が最近色々と拒んでくるのが悩みの種。
あたしは部屋の片付けとかしてあげたり、お風呂に入れてあげただけなのよ!
- でもそうはならなかったんだよ。完了
- GM名YAMIDEITEI
- 種別設定委託
- 納品日2021年05月07日
- ・P.P.(p3x004937)
※ おまけSS『伯爵アナザー』付き
おまけSS『伯爵アナザー』
●これはこれでお好きかと思いまして
「……やれやれ」
自身の統治するこの街ですら――『こういう程度』なのかと。
遊楽伯ガブリエル・ロウ・バルツァーレクは心から深い溜め息を吐き出した。
たまにお忍びで街を視察する事はあるが、こんなシーンに出くわせばいよいよ憂鬱にもなろうというものだ。
「あん? 何だ、テメェ……」
「引っ込んでろ。怪我するぞ?」
自身の正体にまるで思い当たる様子も無く、凄む男達の向こうには長い黒髪の少女が居た。
見慣れない少女だったが身なりを見るにどう考えても良い所の令嬢で、チンピラと路地裏の諸条件と考えれば状況は大体想像がつく範囲だった。
「念の為、確認しておきますが――」
「ああ?」
「――此方の方々は、お嬢さんのお連れ様ではありませんよね?」
自分達を無視して少女に問いかけたガブリエルに男達は気色ばんだ。
その一方でこくこくと頷く少女は必死である。
「では、少々お待ち下さいね」
「この野郎!」
ガブリエルがそう言うのと男が彼に殴りかかったのは同じタイミングだった。
長い緑色の髪が流れ、身を低くこれを避けたガブリエルは態勢の乱れた男の腹に拳をめり込ませた。
「なっ……!?」
同時にもうひとりが動き出すより先に早く踏み込み、長い足の前蹴りで彼を路地裏に壁に叩きつけた。
「早く逃げる事をお勧めしますよ。私は兎も角、通報はしていますからね。
他所の街なら兎も角、『民政家のガブリエル伯爵』はこういう事件を許すでしょうか?」
ガブリエルの言葉に男達は『意地を捨てる免罪符』を得たように悪罵しながら逃走した。
後に残されたのは彼とぐすぐすと泣く少女が一人。
ガブリエルは腰を落とし、目線を合わせ。そんな彼女の頭を撫でながら言う。
「大丈夫。すぐに迎えが来ます」
「……ほんとう?」
「ええ。強い衛兵さんが来ますからね」
「あなたより……?」
ガブリエルは「ええ」と笑った。
見慣れない少女だが、そういえばと言葉を付け足す。
「但しここで起きた事はくれぐれも内緒ですよ」
ガブリエルは『品行方正な優男』で通っているのだ。
レイガルテ翁やリーゼロッテ嬢、陛下に警戒されては面倒くさい。
コクコクと頷く少女に「いい子です」と笑った彼は未だ知らない。
彼女との再会が案外近い事を。そして、このませた少女がこの時何を考えていたのかを――