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ナディア・ベールの肖像・1

登場人物一覧

沁入 礼拝(p3p005251)
足女
沁入 礼拝の関係者
→ イラスト

名前:ナディア・ベール
種族:グリムアザース
性別:女性
年齢(或いは外見年齢):16歳
一人称:わたし
二人称:あなた ~さん
口調:なの なのね かしら?
特徴:白皙の肌 黄金の髪 青い瞳 アゲハ蝶の羽
設定:
 ナディア・ベールと言えば……誰だったかもう忘れてしまった。
 たしかそんな名前の少女が居たような気がする。
 ああ、幻想の、裕福な商家の娘だったはずだ。
 だんだん思い出してきた。
 ベール家は酒を扱う商家で、それゆえに横のつながりを大事にしていた。組合へはたんまり寄付していたし、何より信仰心が厚く、日曜にはミサを欠かさない一家だった。月に一度は炊き出しをし、貧民救済へも務めていた。
 それで……なんだったか。そうだ、ナディアの話だ。美しい娘だった。精霊種の母の影響で、蝶のような羽を背負っていた。見た目だけでなく、心も清い娘だった。
 ナディアはよく貧民街の子どもたちを引率して遠足へ行っていた。遠足といっても、ただ観光するわけではない。秋なら栗の木が植えられた公園へ行き、自然の恵みを手にして帰る、そんな遠足だ。子どもたちは腹が膨れて小銭も稼げる。ナディアは父のツテでそういう場所をよく知っていた。だからだろうか、しとやかにみえてナディアは気丈で芯の強い女性だった。魚を与えるだけでは意味がない、魚のとり方を教えねばならない、そんなこの世の真理をよくわかっていた。そのうえでこう言う娘だった。
「もうわたしにできることはないかしら。もっと人の役に立ちたいわ」
 ナディアは医師を目指すようになっていた。医師といえば男社会でハードな仕事だ。金もかかるし、落第すればつぶしがきかない。だが両親はナディアならやれると励まし、応援し、年頃になったナディアを行儀見習いではなく高等学校へ行かせた。子女へ高等教育を受けさせるなど、貴族であったとしても破格の待遇だ。全寮制の学校へ入ったナディアは髪をひっつめ、毎夜消灯まで勉強し、試験では主席を取った。貴族の出の学生に囲まれて、この成績は快挙と言ってもいい。教師陣も熱心なナディアにほだされ、彼女の質問は率先して受け入れた。きっとこの頃が、彼女の一番いい時だったのだろう。
 しかしいい話にはだいたい、けれども、がつくものだ。
 ナディア・ベールは美しかった。心が清いだけでなく、見た目も美しかった。そして彼女は、医師を目指す高等学校の中で、目立ちすぎたのだ。

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