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星影 昼顔の始まり

登場人物一覧

星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物

 神鳥と炎鳥との戦いが終わった後、依頼に参加したイレギュラーズは境界図書館へと帰っていく流れであった。だが、そんな中昼顔だけは戦いが終わったにもかかわらず何か浮かない表情であった。
「昼顔殿、であったか。どうなさったのだ? 炎鳥は倒されたわけだから、貴殿も帰られるのでは……」
 カノンの後を継いだ大神官が昼顔に問いかける。
「そうなんですが……まだ、あの炎鳥のことが忘れられなくて」
 昼顔はこの戦いで倒した炎鳥に対してまだ整理ができていないようだ。大神官はそのような事情を読み取り、一つの提案をする。
「そうであったか。なら、かの炎鳥の弔いをしてはいかがだろうか」
「弔い、ですか?」
 昼顔は聞き返す。
「ああ、どういった形であれ、大切な存在が死んでしまい気持ちの整理がつかないのなら、弔いを通じてその者に自分の気持ちを伝えれば少しは楽になると思ってな。元の世界へ戻るのも気持ちの整理がついてからでも問題ないだろう」
 大神官は昼顔に再度問いかける。昼顔は提案自体は嬉しく思っていたが他のイレギュラーズのことや元の世界に帰ってこれるかのことも考えてイエスとは言えなかった。だが、周りの人から境界案内人に事情を伝えておくという言葉を受け、昼顔は一人異世界に残って炎鳥の弔いをすることになった。そして、これが星影 昼顔の始まりともいえる出来事にもなる。

「それで、弔いというのはどういったことをするのですか?」
 まず昼顔は大神官にこれから行うことを聞いた。
「そうだな……まずは炎鳥の遺体の解体と回収だな。やり方などは私が教えるからその通りに動いてくれれば問題は無い」
 そう言われて昼顔は神鳥とその神官と共に炎鳥の遺体のある場所へ向かった。
「それにしても多くの人が動くんですね。武装している人もいるみたいだし」
「あのサイズの遺体だ。このぐらい連れてこないと解体にも時間がかかる。それに、作業の最中に遺体を狙った賊が現れることもある。その者たちと戦い遺体を守るためにも戦闘員もつれてくるんだ。もちろん、昼顔殿も頼りにしているぞ」
 大神官にプレッシャーをかけられながら昼顔は炎鳥の遺体の場所にたどり着いた。大神官の指示に従って神官たちが動き始め、昼顔も同様に動いていく。全員神鳥の祝福を受けた短剣を使って丁寧に炎鳥の解体を始める。黙々と行われていた解体作業だが、大神官の一声で緊張が走った。
「全員、この近くで賊と思われる集団を発見した。戦えるものは現場に向かってくれ!」
 これを聞いて、昼顔を含めた何人かが作業を中断して賊のもとへ向かう。現場に着くと、いかにも盗賊と思われる集団が武器を構えて昼顔たちに襲い掛かってくる。昼顔たちも迎え撃つが、盗賊たちのほうが優勢であった。というのも、盗賊側には全体をまとめる指揮官がいたのに対して神官側にはそのようなものがいなかったからだ。昼顔は戦いの最中でそれに気づき、一度前線を退いて戦況を観察した。そして、相手の作戦を見破ることに成功し遺体の解体・回収も無事に終えることができたのであった。

 その後、炎鳥の遺体は一部は神鳥と神官たちが預かることとなり、それ以外は高級な素材として市場に流れることになった。これについて昼顔は驚いたようだが、大神官曰くただ神官たちが遺体を持っているのではなくこうして人々の手に渡らせることもまた弔いの形ともいえるのではないかということだ。こうして弔いの作業がすべて終わったあと、昼顔は大神官に呼び出された。
「えっと、どうかしましたか?」
 昼顔は大神官に問いかける。
「実は貴殿に渡したいものがあってだな。まずはこれだ」
 大神官が渡した物は一振りの刀だ。
「この刀の銘は黎明恵風。戦において戦況を導くものに力を与える刀だ。それと……」
 すると、一羽の鳥の雛が昼顔の肩に掴まる。その雛は炎鳥のように体が燃えていた。
「つい先日神鳥様が産んだ雛の一羽だ。この雛はどうやら人間に勇気を与える力があるようで、貴殿にはこの雛の世話もお願いしたい」
 突然の出来事に昼顔は驚きが隠せなかったが、大神官から二つの贈り物と雛の飼い方の説明書をもらった後で境界案内人によって境界図書館へと戻されるのであった。

 こうして神鳥の子供であり炎鳥にとっては甥にもあたる雛を預かった昼顔だが、この雛の持つ力は昼顔にはかなり効いたみたいで一時的ではあるが自身の黒翼で空を飛ぶこともできるようになった。今は少ししか飛べないが翼や雛の力が強くなれば飛べる時間や距離も長くなるだろう。これから昼顔は、空を飛ぶことの楽しさを教えた炎鳥に、雛を通じて感謝を伝えていくのであった。

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