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『魔法少女セララNovice 第二巻 百獣怪人メギガマル!』

登場人物一覧

セララ(p3p000273)
魔法騎士

 あれから一ヶ月。魔法少女になったセララは大活躍だった。
 東に困りごとがあればこれを助け、西に怪人現れればこれを退治する。
 うさみみリボンを翻し、アキハバラを東奔西走する美少女の姿はSNSであっという間に大拡散。
 ちょっとしたアイドル人気にまで盛り上がり、大きなおともだちも小さなおともだちも、魔法少女セララを見かけるたびに声援を送る。
 とはいえそれはあくまで魔法少女としてのセララの話。
 普段のセララはアキバ小学校に通う小学生。友達とちょっとしたことで盛り上がったり、毎日の授業をちょっぴり退屈だなって思ったりする程度の普通の女の子だ。
 そしてそんな普通の女の子だからこそ学校の無い休日がもちろん楽しみだったりして、今日はその中でもとびっきりに特別な、遊園地の日だった!

「一日中目一杯遊ぶぞー!! ……って、思ってたのになぁ」
 アキハバラ随一のテーマパーク「アキハバランド」をセララが駆ける。
 頭にはトレードマークのうさみみリボンがぴょこぴょこと、しかし装いはアキハバランドのマスコットにも負けないお洒落たっぷり。
 それが意味するところはつまり、新進気鋭の魔法少女セララの出動であった。
「見つけた! いくよーたぬぽん!」
「がってんぽん!!」
 空から降り立ったセララがヒーロー着地! 周囲はその姿に拍手喝采!
 場所は『電子戦隊ウェブレンジャー』のヒーローショー。対峙するはそこに紛れ込んだダークデリバリーの……怪人!
「そこまでだよ! 輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法少女セララ、参上!」
「アークヤクヤクヤク! のこのこと現れおったな魔法少女セララ! 貴様の持つ膨大な魔力、この悪役怪人バツデビル様が――」
「先手必勝、セララスラーッシュ!!」
「グワーッ、ヤラレター!!?」
 KABOOOOOM!!
 先手を取ったセララの一撃で一刀両断、悪役怪人バツデビルは名乗りも終えぬうちに爆発四散した!
 既にいくつもの戦闘経験を得たセララの前には鎧袖一触。アワレ怪人はセララの剣のサビとなったのだ。
 バトルフィールドを展開するまでもなく悪を滅ぼしたセララだが、しかしその頭上から影が差した。
「な、なに~~!?」
「新手ぽんね! だけどこれは……」
 ズウゥゥゥン、と地響きを立てて降り立ったなにか。
 もくもくとした土煙の向こうに見える影はとてつもなく大きい。
 そしてそれはゆっくりと振り返りセララの方を向くと、見た目通りの大音声を発した。
「オメがセララとかいう娘っ子だべか!?」
 それは脚だけでセララの身長ほどもある、大きな大きな怪人だった。
 小さなセララとは比べるまでもなく横にも縦にも大きい、あちこちに獣の特徴をそなえた大男。
 ゴリラとかライオンとかクマだとか、パワフルな動物をごちゃまぜにしたようなその怪人が放つプレッシャーは、セララがこれまで対峙してきた怪人の中でも間違いなくトップクラスだった!
「オデはダークデリバリー四天王! 百獣怪人メギガマル!!」
「ボクは魔法少女……魔法少女セララだよ!!」
 四天王。そう名乗った百獣怪人メギガマルに負けじとセララも声を張り上げる。
 勇気凛々の名乗りにメギガマルは、感心したように目を細めてセララを見下ろした。
「ちっこいナリでなかなか勇ましいべな。さすがはオデたちの邪魔を散々してきただけのことはあるべ」
「悪さをしてるのはそっちのほうでしょ。ボクはそれを許さないだけだ!」
「だったらどうすんべ? やるのかァ? 言っとくがオデはつえーぞ?」
「そんなの知ったもんか! ダークデリバリーはボクがやっつける! てりゃーっ!!」
 セララは気迫を込めて剣を振り抜いた。
 バツデビルを一刀のもとに斬り伏せたセララスラッシュは、ただの怪人なら一撃で沈められるのはついさっき証明した通り。
 しかしメギガマルはそれを避けるでもなく待ち構えると、ぬんっ、と力を込めてポージング。隆起した力こぶを盾にして。
「は、弾かれたっ!?」
「軽い、軽いべなぁ娘っ子……そんなんじゃオデのボディは斬れねーべ?」
 キンッ、と鋭い音を立てて剣が弾かれる。
 これまで数々の怪人を斬り伏せてきたセララスラッシュが文字通り歯が立たない。
「ふぅん、こんなもんだべか? 拍子抜けだべ。やっぱちっこいと力も弱っちいべな」
 むんっ、ぬぅん! とポージングを次々に決めながら失望したように呟くメギガマル。
 そのむさ苦しい動作はともかくとして、頑丈さは間違いなく過去最大級。
 セララは一撃でダメなら連撃でと猛攻を仕掛けるも、その尽くを力こぶで防がれる。……ポージング付きで。
「んだばそろそろオデの番だべよ。オデの一撃はいてーぞぉ?」
「わわわっ!?」
 全身の切り傷を一呼吸の間に再生したメギガマルが、お返しとばかりに攻撃に移る。
 外見に反して素早い踏み込みから放たれたジャブ。
 しかしそれはセララの目には渾身のストレートよりもなお恐ろしく映る。
 大げさに回避を取ったセララは、続いて荒れ狂う暴風にそれが間違いでなかったことを悟った。
 ただのジャブが暴風を巻き起こす威力。遅れてバトルフィールドが展開され、舞台はセララとメギガマルの一騎討ちとなる。
 紛れもない強敵との戦い、その証だった!
「オラオラオラーッ! どんどんいくべぇっ!!」
「わっ、こっ、あぶっ!? なぁ~~~~い!!」
 右左と繰り出される拳のラッシュ。
 スピードはセララが優勢。しかしパワーはメギガマルのほうが遥かに圧倒している。
 ほんのカス当たりでも一発もらえば、それだけでセララは戦闘不能になるだろう。被弾を許されない極限の攻防が繰り広げられる。
 打ち抜き、振り抜き、打ち下ろし、打ち上げ。メギガマルの攻撃は技もへったくれもなかったが、ただそのパワーだけで全てを圧倒している。
 既にステージは瓦礫の山と化し、二人は戦場を遊園地全体に移しながら、あちこちに破壊の跡を撒き散らして戦いを繰り広げていた。
 これが無人の異空間でなければとっくに大惨事だっただろう。一撃で倒したバツデビルとは比較にならない強敵にセララが冷や汗を流す。
「ちょこまかとすばしっこい娘っ子だべ! チビなのにやるでねーべか!!」
「さっきからちっこいとかチビとか失礼しちゃうなぁ! ボクはこれから成長期だもーん!!」
 表面上は軽口を叩きながら反撃の剣を振りかざすも、やはり決定打は与えられていない。
 余程己の肉体に自信があるのか、セララの反撃を受けるときは律儀にポージングを決めるメギガマル。
 刻んだ傷はメギガマルの表面こそ切り裂くも、血が流れる間もなく自己再生によって治癒される。
 メギガマルのパワーも恐ろしいが、セララにとってはこの再生能力こそが何よりも厄介だった。
 パワーは避けられるが、再生は剣だけでは乗り越えられない。
 さりとて剣を捨てるにはメギガマルのパワーは強すぎて、『セイバー』のクラス補正を失えば唯一の有利である素早さすらも失うだろう。
 なにか……なにかあとひとつだけ、メギガマルの再生能力を阻止できる手札が必要だった。
「そろそろ終わりにするべ! おりゃああああああ!!」
「なっ……きゃああああああ!?」
 しばらく続いた攻防も、やがて痺れを切らしたメギガマルによって幕を引かれようとした。
 両拳をセララではなく大地に打ち付けて、畳返しのように地表をめくりあげて瓦礫の津波をセララに放つ。
 その圧倒的な暴威にセララは堪らず悲鳴を上げ、迫りくる敗北の兆しにしかし起死回生の手段を模索する。
 思考は研ぎ澄まされ、周囲の時間が俄に鈍くなったように思えた。それは果たして走馬灯か、絶体絶命の危機にセララの思考速度は極限まで加速して――
「はっはっはぁ! 終わっただなァ! っといけねぇ、あの娘っ子を連れ帰らないといけねんだったや、まだ無事だべか……ンン?」
 セララを呑み込んだ瓦礫津波に勝利を確信して高笑いするメギガマルだったが、不意に悪寒を覚えて再度前方に視線を向ける。
 その予感は正しく、セララを呑み込んだと思ったその瞬間。立ち昇った炎の奔流が瓦礫を焼き尽くした!
「――ダブルインストール、『フレイム』だよ!!」
「な、な、な、なにィィ~~ッ!?」
 窮地に陥ったセララが手にした逆転の切り札、それはダブルインストール。
 既にインストールしていた『セイバー』のマジカルカードに合わせて発現したのは、燃え盛る紅蓮の力、『フレイム』のマジカルカード。
 瓦礫を消し飛ばし、続けて放たれた炎の連弾がメギガマルを襲う。
 果たしてその熱量はメギガマルの肉体を焼き焦がし――目論見通り、再生能力を封じていた!
「斬ってダメなら焼いてみろってね! ヘラクレスは偉大だー!!」
「ウォアチチチチ!? いってぇ、いってぇべ~~!?」
 セイバーの身体能力を維持したままフレイムの火力を得たセララの一転攻勢。
 切り刻み、焼き焦がし、与えた傷の再生を許さないままセララが押し切る。
 ヘラクレスのヒドラ退治、その再現の如き猛攻は、油断していたメギガマルに効果覿面。
「ひぃ、ひぃ……恐ろしい娘っ子だべ……! さすがに小手調べでこれ以上は……かくなる上は!」
「あーっ!? 逃げちゃダメー!!」
「戦略的撤退だべ! さいならー!!」
 不利を悟ったメギガマルは、先程までの攻勢はどこへやら、ちょっぴり間抜けな捨て台詞を残して彼方へ飛んでいった。
 残されたセララはむくれるも、しかし戦いはこれにて終了。
 ダークデリバリーの大幹部、四天王の一角メギガマルとの初戦闘を、こうして無事乗り越えたのだった。

 ――そしてそれをひっそりとモニタリングする影ひとつ。
 暗がりでほくそ笑むは白衣の少女、メギガマルと地位を同じくする四天王……
「ククク……十分な研究データは得られた。魔法少女セララ、次が貴様の最後だ!」
 怪人博士ロスヴィータの哄笑が闇に響いていた。

  • 『魔法少女セララNovice 第二巻 百獣怪人メギガマル!』完了
  • NM名ふーじん
  • 種別SS
  • 納品日2021年03月19日
  • ・セララ(p3p000273

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