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【エルスの癒しボイスシリーズ】眠れない夜にはお茶会を
登場人物一覧
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……え? 敬語で? わ、わかったわ。
こほん。
さて、今日は……何か相談があるんですよね。
ええ、大丈夫ですよ。ゆっくりで構いませんから、私に話してください。
大丈夫、です。時間はたっぷりありますから。ね?
……ふむ。『自分に自信が持てない』と?そう、ですか……なるほど。……いえ。なんだかとっても驚いたんです。あんなにも頑張っているあなたが、……自信がない、と言うのですから。
共感、でしょうか。いいえ、それ以上かもしれません。
だって、私にも同じような時期があったので。
あ、いえいえ。今だってまだ、自信があるかと言われたらそうではないんですけど。でも、そう、ですね……私を。こんな私を……ううん。こんな、私でも。信じてくれるひとがいるんです。
だから、少しずつ自信を持ってみることにしました。いつか、誇れる自分になれるように。
いつか、自分を愛せるように。……なんて、偉そうに語ってみましたけど、実際はあなたと何も変わりません。
あなたの目や、他の人の目から見て『頑張っている』『うまくやれてる』なんて評価があったとしても、私がそれを受け入れなくては、自信になんてなりませんから。
だから、受け入れられるように。頑張ることにしたんです。
そうすることで、一番自分を認めることができるし、一番自分を信じられるから。
……私の話はいいんですよ。
それより、あなたが眠れなくて、私の喫茶店を訪れていることの方が問題です。
今日のお勧めは……アイスのミルクティー、です。ふふ。眠くなれないのならいっそ頭をリセット、すっとさせてみましょう。今日はおいしい牛乳が安かったので、きっとあなたも気に入りますから。
さあ、召し上がれ。なんて、ふふ。
……でも、そうですか。じしん。……ふふ、笑うなって? だって、私も同じ悩みを持っていたんですから。
だから、こんなに月が綺麗な夜には、少しだけ。一緒に悩みましょう。私が、傍に居ますからね。
自信をつけるには。
きっと本を読んでみたりしたほうがいいかもしれないのでしょうけど、私、今本はなくって……うーん。
何か一つのことを修めてみるのいいかもしれません。たとえば、剣の腕を磨く、とか。その極地まで行くっていうのも、自信に繋がるかもしれません。
結局は積み重ねだ、っていう意見もありますね。でも少しめんどくさくて……できたら、きっと自信に繋がります、かね?
ふふ、やだ。私ったら、少しゲシュタルト崩壊を起こして自信が……ふふふ!
あ、そうだ。ちょっとだけ話は変わるんですけど……いいですか?
私、最近新作のメニューに悩んでいるんです。季節ごとに看板メニューを置いた方が、きっと楽しいでしょう?
Mughamaraも知名度が上がってきたはず、ですから。集客のことも考えてこその私、ですよ。……少しでも誰かの力になりたいですからね。
やっぱり軽食のほうがいいのかしら。春はきっとフルーツサンドくらいが手ごろ、というか食べやすいでしょうし。夏はほんと……暑いのが目に見えてるでしょう? 暑いのが苦手な子もいるから、冷たいもの……氷菓子がいいかしら。
え、何ですか? かき氷……ああ! それもありましたね。メモしておかなくっちゃ。
秋は山の幸がいいんでしょうけれど……どうせならラサの特産物を使ってラサに貢献……も、もとい。経済効果? 的な? まぁそんなのはどうでもいいんです。いや、よくないわ。落ち着くのよ私。エルス・ティーネ!!
……ごほん。冬。冬は、焼き菓子にしましょうか。このミルクティーに合わせて出すのも……いいと思いませんか?
でしょう? ふふ、そうよね。このミルクティー、結構試行錯誤したんですよ。深緑のミルク工房にロリババアに、もうたっくさんの生き物のミルクから厳選して選んだ、こだわりのミルクなんですから!
今日は最終試作ということで、安く手に入ったんです。ふふ、今日だけですよ? ……おかわり? ふふ、仕方のない人。
ラサの……砂漠の夜はとっても寒いですから、今日はここに泊まっていくといいですよ。モーニングセット、サービスしてあげますから。ね?
……実はモーニングも試作しているんですけど、自信なくて……第三者の意見が欲しいんです。だから、ね? お願いします。ふふ。
今日のお礼はそれで構いませんから。ね?
私も。
自信がなくなって。不安になって。
その度に泣いて、悩んで、戸惑って。そうやって、逃げてきました。
でも。あなたには。私も、友人も。いる、でしょう?
だから……大丈夫。あなたが進む道に月あかりが無いのなら、私が照らしてあげますから。
恐れないで。一歩、踏み出して。
あなたなら、できるから。
……って。もう……せっかく勇気を出したのに、寝ちゃうなんて。
あなたって人は本当に……ふふ。
おやすみなさい。いい夢を……そして、また明日。