PandoraPartyProject

>

SS詳細

二人の熱い冬の過ごし方

登場人物一覧

藤野 蛍(p3p003861)
二人でひとつ
桜咲 珠緒(p3p004426)
二人でひとつ

■その話は一体どこからやってきたものだったのか
「練達の再現性東京で面白い事が?」
「ええ。尤も今、そこで聞いただけですが」
 いつも一緒の『二人でひとつ』藤野 蛍 (p3p003861)と『二人でひとつ』桜咲 珠緒 (p3p004426)は冒険者としての一仕事を終えてローレットで報告兼食事の時間を取っていた。
 報告を珠緒に任せ、蛍は食事を二人分注文。待ち合わせの席で待ち、戻ってきた珠緒が話を切り出す。仕事の報告をしていたら、ある情報屋から「練達で面白い依頼がある」と紙を一枚渡されたとの事。
 パンを一口齧ってから、蛍は紙を受け取って目を通す。そこには「未来を作ろう!」と謎のキャッチコピーが書かれていた。再現性東京は地区によって雰囲気がまるで違うのだが、どうやら新しい試みを始めるようだ。
 その体験会に、少々のことがあっても頑丈なイレギュラーズに来てもらいたいという話だ。
「……なんだか怪しくない?」
 眉を顰める蛍。当然の反応だろう。幾ら新しい事を始めるからとはいえ、イレギュラーズをわざわざ呼ぶ程のことがあるのだろうか、と。
 少々の事があっても、ということは。裏を返せば危険性があるということだ。
 一方の珠緒はというと、意外と楽天的であった。
「そうですか? 危険があるのはいつもの事ですし、蛍さんが怪我をなさっても、珠緒が治します」
 にこにこと微笑む彼女。珠緒の事はもちろん信じている。確かに彼女の治療術ならば、それこそ『少々の事』であれば何の問題もない。
 それに蛍自身も頑強さで多少は名の通ったイレギュラーズである。危険がなんだと考え直す。
 未来を作るプロジェクトに参加できると考えれば、楽しみにもなってくるものだ。多少の危険など目でもない。
「……そうだね。珠緒さんがいるもんね。参加しようか」
「はい、それでは手続きして参りますね」
 言うが早いか珠緒は席を立ち、受付へ向かっていく。その背中に、ご飯冷めちゃうよーと声をかける蛍だが……聞こえていないのか珠緒は振り向かない。もう、と頬を膨らませる蛍。
 珠緒は浮かれていた。かつての世界では外の事など想像するだけしかできなかった身だが、混沌世界に来てから大切な人ができて、共に色々なものを見て回る事ができる。まさに夢のような体験が続いているからだ。
 受付にやってきた珠緒は、例の紙を差し出して「この祭りに参加します」と笑顔で伝える。

■いつもと違う、けれど違わない二人
 2月14日。バレンタインデー、グラオ・クローネ。言葉は違えど祝う風習は同じ日。蛍と珠緒の二人は件の場所に出向いていた。
 練達の一部、という事で。普段は二人の身の回りの世話をしている人形たちは、知り合いの人形師に預けてきた。彼女達にすれば里帰りみたいなものである。
 人形師にも一応話はしてみたのだが、「こんなハイカラなのは性に合わない」と断られた。仕方ない事だろうけども。
 何分二人がやってきた地区は未来的な雰囲気……色とりどりのライトで照らされた高層ビルや道路など。慣れていない人からすれば目が痛くなるような光景だったからだ。
 現代日本にいた蛍はなんとか耐えているが、珠緒は目をしきりに擦っている。暫くすれば慣れるだろうが、それまでは大変そうだ。
「大丈夫? ほら、手を繋いでいこう?」
「ありがとうございます」
 蛍のリードに珠緒が引っ張られる。いつもの光景に少し安心する珠緒。見慣れない土地でも、この人と一緒なら何でもできる。そんな強さをくれるから。
 
 依頼者は街作りを行っている企画会社だった。建物に入ると皆一様に派手な色合いの服を着ている。一瞬気圧されるが、臆することなくローレットから来たイレギュラーズだと名乗ると、厚い歓迎を受けた。
「やあやあ、待っていましたよ!」
「可愛いお嬢さん方ね。これはいい案が浮かぶかも!」
「まあ肩の力抜いて下さいね。お二人には祭りを楽しんで貰えれば良いので」
 奇抜な格好をしているが、悪い人ではないのは確かなようだ。全く悪意など感じられない。
 一先ず安心した二人が、説明を受ける。例に漏れずこの地区は再現性東京の一つなのだが、未来の東京を見てみたいと願う者達が集まって、自分たちの想像で未来世界を作ってみているようだ。
 混沌肯定に引っかからない範囲で、だが。もちろんそのうち超えてみせる気概はあるようだが。
「それで、今はどのようなものが?」
「こんなものはなんとか……この近くでしか使えないのですけど」
 蛍の問いに応えた男の手から、透明なディスプレイのようなものが浮かび上がる。形のないタブレット端末を目指してみたようだ。
 しかし蛍と珠緒はそれと似た者を良く知っている。何故ならば。
「それならば、珠緒もできます」
 掌を開いた珠緒。彼女の眼前に少し赤い、しかし男のものと似たような画面が浮かび上がる。部外者である珠緒が、同じものを持っている事に騒然となる一同に、ギフトの力だと説明する。
「な、なるほど……やはりイレギュラーズ、我々の想像など既に通った道ということか……」
「いえ、珠緒さん以外には見たことがないので、皆さんのその技術が広まれば革命かと思いますよ」
 気落ちしかかった技術者一同にフォローを入れる蛍。だがその内心では自慢げに思っていたが。
 さて、話が横道に逸れそうになっていたが。バレンタイン、グラオ・クローネを祝うのはこの地区とて同じ。ちょっとした祭りのようなものを行うのでそれに参加という事になる二人だが。
 折角なので格好も街並みに合わせる事に。どんな衣装になるのかは後でのお楽しみということで、別々の部屋に入って着替える事に。

 先に着替え終わったのは蛍。ウィッグをつけてみたり、ネイルアートをしてみたり。元の世界では真面目な委員長風で通っていた彼女にすれば初めての格好である。紫で派手に決めた服なども着た事がない。
 少々の恥ずかしさはあるものの、不思議と気分が高揚している。自分でこの格好なら、珠緒はどんな格好になるのかと楽しみになってきたのだ。
 少し建物の外で待っていると、見慣れぬ少女が扉を開けて出てくる。
 黒の上着にスカート。長い髪は頭上で纏められ色鮮やかな飾りと共に。付け爪までつけていて一見別人に見えるが、蛍が彼女を見間違えるはずはない。
「珠緒、さんだよね?」
「はい、珠緒です」
 声はいつもの彼女だった。普段は大人しめの彼女が、結構攻めた格好をしている。そのギャップもまた可愛らしいと心底思い、頬がニヤける蛍。
 一方の珠緒も、蛍の姿に見惚れていた。いつもならば少しお堅めの印象を受ける彼女が、今日は開放的なお姉さん風になっている。二人でならオールナイトで遊べそうな位の、派手っぷりだ。
「……いいね、うん。折角だし写真撮っておこうか」
「ふふ、二人一緒に、ですね」
 パシャリ、と写真を一枚。後で焼きまししておこう、と蛍が懐にカメラをしまい込む。
「さて、どこからまわりましょう? この地区の情報は頂いて参りました」
 珠緒が再び、ディスプレイを浮かび上がらせる。矢印で建物を指して名前も表示される、未来の技術。しかし珠緒にとっては慣れた操作である。
 もちろん横から覗き込む蛍も、見慣れたものだ。いつもと違う色縁眼鏡をかけ直し、そうだねぇと考える。
「そうだ、グラオ・クローネだからチョコレートはないとね」
「それならば、ここ、ですかね」
 ぽち、ぽちと珠緒が指先で画面に触れて操作する。現在地から目的地までのルートが画面に浮かび上がる。


 それを見ながら二人寄り添って道を行く。ふっと視線を横に向ければ空飛ぶ車の実験だろうか。大きな車体にジェット機構を詰め込んで浮かび上がらせようとしている人々が。
「ああいうのってやっぱり人類のロマンなのかな」
「珠緒にはよくわかりませんが……でも、空を飛ぶというのは、過去からの人類の挑戦みたいなものですし」
 話しながら歩き、目的の店にたどり着く。店内では聞き慣れない音楽が流れており、人も多くにぎやかであった。これでは声が店員に届かないのでは、と蛍は疑問に思ったが。なんてことはない。例のタブレットを使って注文をすれば良いのだ。
 椅子に座った二人。蛍が店内を見渡している間に、珠緒がタブレットを操作して店員を呼び出し注文する。殆ど待つ事もなく、頼んだものが運ばれてくる。
「そういえば……この店員さん、ロボットなのかな?」
「どうなのでしょう?」
 動きが少しぎこちない気がしたのは、機械ゆえか新人ゆえか。
 その疑問を脇に置いておいて、コーヒーとチョコレートケーキを楽しむ二人。
「蛍さんは砂糖入れなくてもいいのですね」
「え? あ、うん。いつもは入れるけど……チョコと一緒だからね」
 コーヒーを一口啜りながら、珠緒の疑問に答える。よくあるチョコレートケーキよりも、更に甘い気がしたからだ。一方の珠緒はいつもどおりに砂糖を入れながら飲んでいる。
「でも、甘い時間はお嫌いではないでしょう?」
 そう言って、フォークでケーキを一切れ刺して、蛍の口元へ運んでくる。
 一瞬面くらい、頬を赤く染めながら蛍はそのケーキを口に入れる。もっと甘くなった気がしたのは、きっと気の所為ではない。
 目の前の最愛の人は、砂糖よりもなお甘い調味料。

  • 二人の熱い冬の過ごし方完了
  • NM名以下略
  • 種別SS
  • 納品日2021年02月24日
  • ・藤野 蛍(p3p003861
    ・桜咲 珠緒(p3p004426

PAGETOPPAGEBOTTOM