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僕のクラスのヤバい奴
登場人物一覧
僕のクラスにはヤバい奴がいる。
それは去年だったか転校生や新任の先生が一気に来た時に転校してきた一人。名前をイルミナ・ガードルーンという……ロボだ。
そう、ロボなのだ。正式にはアンドロイドというのかもしれないがどこからどう見てもロボなのだ。よく見るとメガネの奥の水色の瞳はカメラっぽいし、たまにきゅいんきゅいん言っている。それに先生からのお願いを毎回復唱していたり……。これだけロボ要素があるのに何で他の奴は怪しまないんだ!? 耳についてるアレもアクセサリーじゃないだろ!?
先生たちともなんだか親しいし……転校してきていきなり立ち上げた『未来科学部』とかいうよくわからない部活。怪しいところしかない!
彼女を怪しんでいるのはどうやら今のところ僕だけのようだ。なら僕が動かなければ誰も真実にはたどり着かないだろう。
だから僕は
「ん? どうしたッスか?」
「な、なんでもない!」
危ない危ない……少し見すぎていたようだ。咄嗟に教科書で顔を隠したから怪しまれてはいないはず……。
この調査は本人に気づかれないように進めなければ。
まずは調べられる範囲で調べていくとしよう。聞き込み調査からだ。
「イルミナちゃんがどうかしたのかしらぁ? とってもいい子だと思うわぁ。授業もきちんと聞いてくれるしね」
「そうだな……学校生活を楽しんでいるようだし私としては特に何もないな。あ、そうそう体育の補習忘れるなよ」
「イルミナ? ちょっと欠席が多いけど基本的にはいい子だと思いますよ」
教師陣からの評価は上々。でも確かに授業でいないことは多い気がする。公欠扱いらしいがますます怪しい……身体のメンテのために休んでいるのか……? 身体測定のデータでも手に入れば何かわかるかもしれないが流石に男子生徒の僕が女子生徒のデータを調べるのは危険すぎる。命がいくつあっても足りない。
調べても謎は深まるばかり。というかやっぱり転校生たちはなんだか先生たちと距離が近い気がする……。調査を続けるとしよう。
「イルミナちゃん? 昨日も一緒にタピって来たよ?」
「寮の部屋に遊びに行ったりもするよねー」
「そういえばまたゆるキャラ増えてたよ」
「またぁ? やっぱり好きなんだね、ゆるキャラ」
ほうほう、好きなものはゆるキャラっと……。一応記録しておこう。他意はない。ないったらないぞ。
しかし飲食もできるとなると高性能なロボだな……一体誰がどんな目的で作ったんだ……謎は深まるばかり。
「でも急にイルミナちゃんのこと聞いてくるなんてどうしたん?」
「あれだよあーれ」
「お、お前たちの想像しているようなことでは断じてないぞ! 何故調べているのかは秘密だがな!」
まったく、クラスの女子どもはすぐに色恋に結び付けたがるから困る……。これはそんな下世話な話ではない。僕たちの日常に危機が迫っているのかもしれないのだから。僕はそれを調べているのだ。
クラスメイトの彼女たちからも有益な情報を得ることはできなかった。うーん……困ったな……。
「でもたまーに付き合い悪い時あるよね。イルミナちゃん」
「あー、あるある。aPhone見て急に用事ができるやつね。……彼氏かな?」
か、彼氏だと!? そ、そんなの今の今まで影も形もなかったじゃないか!
ロボを彼女にするような奴がいるのか……これはさらに調査を続けなければ……。
「いやー、違うっしょ。またッスか……とか言ってるしあんまり楽しそうじゃないし」
「なら何なんだろうねー」
ふむ、彼氏説はないか。そんなことは知っていたとも。
だがそうなるとさらに謎が深まるな……。授業も放課後もふらっといなくなり何かをしている。一番怪しいのはやはり部活か……。
つまり僕も覚悟を決めなければいけない、ということだな。
ここまで集めた情報では
虎穴に入らずんば虎子を得ず、と昔の偉い人は言った。ちなみに誰が言ったのかは知らない。だが僕の現状をよく表している。これ以上の情報を手に入れるためには
放課後、僕の足は部活棟へと向いていた。行先はもちろん未来科学部の部室。手掛かりがないのならそれが最も手に入るであろう場所に潜入するしかない。僕は覚悟を決めていた。
しかし何といって入ればいい? こんな時期に入部する奴なんてそうはいないだろう。怪しまれないようにするには……。うーん……。
そんなことを考えながら部室棟の廊下をうろうろする。幸い他に誰もいないからよかったが、誰か見ていたら僕は不審者にしか見えないだろう。
そのまま数分の時が経ち、何往復したかは覚えてないが未来科学部の部室を通った瞬間、内側から扉が開け放たれた。
「誰かいるッスか?」
「お、おぅ!?」
「おや、イルミナになんか用ッスか?」
まさか向こうから来るとは想定外だ……。しかも白衣なんて着てるじゃないか。部活のコスチュームか何かか? 悔しい(?)が赤いフレームのメガネと相まってよく似合っている……。
だが向こうから出てきてくれたこのチャンスを逃す手はない。何もいい方法は思いついていないがこうなったら出たとこ勝負だ。
しかして悲しいかな、僕の目論見はまたも崩されることになる。
「まさか入部希望ッスか?」
「な、なぜわかった!?」
「入部届を持って部室の前に誰かいれば普通はそう思うはずッス」
確かにそれはそうだ……。非の打ち所がない完璧な理論。やはりこいつはロボか……。
「あ、ああそうだ。この部活に興味が出てな。部活もやっていないし入部しようと思ったんだ」
「未来科学部は誰でも大歓迎ッス!」
あれこれいろいろ考えていたが結局話はとんとん拍子で進み、僕は怪しまれることなく未来科学部への潜入に成功した。
くくく……これで授業中だけではなく部活中も監視をすることができるぞ。
「それじゃあ入部届はイルミナが顧問の先生に渡しておくッス」
「よ、よろしく頼む」
僕の名前の書かれた入部届が
「クラスでも部活でよろしくお願いするッス! 暁さん!」
「あ、ああよろしくな。イルミナ」
こうして僕、
いつになるかはわからないが必ず