SS詳細
荊棘
登場人物一覧
名前:花榮・しきみ
一人称:私
二人称:貴女
口調:です、ます、でせう
設定:
神威神楽の片田舎に存在する武家、花榮家の庶子。母は使用人であった金の髪をした鬼人種。
しきみの父にして花榮当主であった男は夫人を亡くした後は数多くの浮き名を流した。夫人との間に三人の子を設け、家の外に四名の子が存在した。
その末の娘がしきみである。使用人であった母が病に伏し生活も貧した際にその身に浮いた鬼紋より花榮の娘であると本邸へ招かれた。
しかし、その境遇故に末の娘を家族と認めぬ兄二人と、本邸へ踏み入ることの出来ない三名の顔も知らぬ兄弟より疎まれ続け苦しい生活で有ることには変わりなく。
唯一、腹違いの姉『かすみ』が自身を本当の妹の様に愛で愛してくれた事のみが幸いであった。
姉は何処へ行くにもしきみを連れ歩き「大切で愛しいしきみ」と家族としての愛を注いでくれた。
――が、父が流行病に倒れたことを切っ掛けに跡目争いが起り一家は離散。現在は長兄が花榮の長となり生き延びた使用人や一族の者を呼び寄せている。
その場に姉の姿はなく、姉の最後を見たと宣言した幼馴染みも彼女の行方を知らぬ儘。
一家が離散した際の争いより逃げ果せ、頼る場もなく、国内を彷徨い歩き、毒に蝕まれた身を引き摺りながらやっとの思いで辿り着いた神威神楽にて『天使様』を見たとしきみは行った。
遥か大海を越えてきた神使と呼ばれる一団の中にいた長い耳をした異種族の女性。それを月人と呼ぶことをしきみは初めて識った。
彼女は治療と食事の世話を施し、生きる為の知恵を授けてくれた。――彼女と同じ『神使』となれたのは幸運だった。
天使様を『お姉様』と慕い、その心の優しさに寄り添い、彼女のようになりたいと願う。
それは唯一の味方であった姉を失い、実家に対する恐怖心を宿した花榮しきみという娘にとっての純粋なる依存と、歪な恋心としてその心を閉めることとなる。
寝ても覚めてもお姉様。彼女の傍で微笑んで居られる平穏が、唯一の幸せで。
彼女との平穏を崩す