SS詳細
『月』は輝く。『月』は昏む。
登場人物一覧
名前:メルナ
一人称:私
二人称:~君、~ちゃん
口調:だ、だよ、だよね?
特徴:【可愛い】【長髪】【強がり】【天然】【根は真面目】【不安定】
設定:
両手剣を携えて、他者を救う……或いは守ることに重きを置く騎士然とした人物。
平時、主に他者と交流する際は人当たりも良く、戦いの際は勇敢な姿勢を以て他者の眼を惹く模範として行動する。
が、その実は否定的な思考と人見知りをする人柄である――それを誰かに知られるようなことは、殆ど無いと言って良いが。
人前に出る彼女とそうでない彼女に於いて、此処まで性格に差異が生まれたのは、彼女が過去に死別した人物に起因する。
クラン。幼少期は人見知り一辺倒だったメルナを引っ張り続けていた優しい兄。そして、最早この世には存在しない人。
嘗て彼は幼かったメルナを護るために魔物たちと相対し……結果的にそれ自体は成功したものの、対価としてその命を落とすこととなってしまった。
メルナはその原因すべてが自身に在るものと思い込み、「自分が居なければ生きていたはずの」クランの人生、その行いを、自分が思いつく限りトレースし続けている。
本来の自分を押し殺し続けるそれは、現在も間違いなくメルナの精神に負担をかけ続けている。(それを無視し続けられるという意味では、彼女の精神力は彼女自身が考えている以上に強いのかもしれないが)
しかし負担とは逆に、特異運命座標である現在も――否。特異運命座標として無辜なる混沌に落とされた現在、彼女のそうした使命感は今まで以上に強くなっている。
自分がこの世界に呼ばれたと言う運命。それはきっと、「兄の代わりに呼ばれたのだ」という考えを、信じて疑わないがために。
……自身と言う存在を摩耗させながら今尚続ける『再演』は、(メルナ自身の望んだ行いであろうとも)それ自体がメルナの心を傷つけ続けている。
自己が称賛を受けるたび、
自己が感謝を受けるたび、
自己が尊敬を受けるたび、
その総てを、『兄』が手に入れる筈だったという思考がメルナの頭をよぎる。自らの行いは、ただ兄の功績を簒奪するだけの醜い愚行なのではないかと。
さりとて、それを止めることもできない。それ以外に兄へ報いる方法など、彼女には思いつかないから。
――――――『彼女』は、今日も大勢の元で英雄のごとく脚光を浴びる。
遥か背後の日陰で、「いかないで」と言う、『誰か』の声に背き続けながら。