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鬼灯という名の
鬼灯という名の
登場人物一覧
名前:黒影 鬼灯
一人称:俺
二人称:~殿
口調:だな、だろ、だろう?
特徴:何故か口元が確認できなくなる。
設定:
舌に『呪見』の印を持つ男。決して口元を見せないのは相手を呪ってしまうからだ。
赤子の頃に両親を呪い殺したのだと、育ててくれた祖父は言った。
だから何があっても口の中を見せてはいけないのだと魂に刻みつけられている。
幼心に両親を殺してしまったという自責の念は鬼灯に重くのし掛った。
己が存在していることで、誰かを不幸にしてしまっている。
自分が居なくなれば不幸になる人が減るのではないか。
子供が本能である自己肯定を退け、存在を消し去りたいと思うほどに激しい慟哭。
だから、鏡の前で願ったのだ。
口元を覆う布を外して、舌の『呪見』の印に祈った。
――僕を殺して
薄く目を開けると、誰かの背が見える。
誰なのかは分からない。けれど、懐かしい背中。
一心不乱に何かを作っている。あれは、人形の足だろうか。
その人はこちらに向き直って手にした木製の足を持ってくる。
「ほおら、これで足は完成だ。あとは手だな。もう少しだからな。もう少しで鬼灯の体は元通りになる。
お前さんを鏡の前で見つけたときはどうなることかと思ったが……間に合って良かった」
何が間に合ったのだろう。鬼灯というのは『俺』の名前だろうか。
分からない。けれど、きっとどうでも良いことだ。
空っぽの記憶。黒影 鬼灯という名前。優しい老人。
誰かが捨てたものならば、自分が使っても構わないだろう。
人形の手足はいつの間にか血肉通うようになり、言葉も話せるようになった。
けれど、絶対に口の中は見せてはいけない。それは、魂に刻まれた呪いなのだから――