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『魔法少女セララNovice 第一巻 運命の出会い』

登場人物一覧

セララ(p3p000273)
魔法騎士

「セララちゃん、まったねー!」
「バイバーイ! また明日だよ!」
 アキバ小学校に元気いっぱいな声が飛び交う。
 遊び盛りの子供達にはちょっと退屈かもしれない授業から解放されて、セララも当然ニッコリ笑顔だ。
 校門でクラスメイトと別れを告げて帰路についたセララ。今日は何をして遊ぼうかなとあれこれ考えながら歩いていると、ふと視界の端に見慣れないものを大発見。
「わわっ、タヌキ……だ? よね?」
 本物のタヌキなんて見たことないけれど、それっぽいキャラクター(意外と凶暴なラ◯カル、未来からやってきた青狸etcetc...)を思い浮かべて、それよりはずっとタヌキっぽいそれ。
 だけどひとつ不思議な点をあげれば――この行き倒れのタヌキ(?)には、背中に翼が生えていた。
 同時に怪我も。そのせいかタヌキには起きる様子もなくグッタリしていて。
「この子、ケガしてる! 助けてあげないと……ええっと、そうだ!」
 良い子のセララはもちろん見過ごせず、慌てて抱き上げると少し悩んで……学校の保健室へ取って返すのだった。

「保険の先生はいない……傷薬はこっちだったかな? あと包帯も……よいしょ」
 生憎保健室に先生は不在だったけど、優等生のセララは先生から簡単な応急処置の仕方も習っていた。
 その経験を活かしてタヌキを処置して安静にさせると、やがてゆっくりとタヌキが目を開く。
「か、かわいい……!」
 くりくりとして愛らしい、凶暴さなんて欠片も無い瞳に、わぁっとセララは目を輝かせた。
「キミがぼくを助けてくれたぽん?」
「しゃ、しゃべったー!? そ、そうだよ、ボクがタヌキさんを拾ったんだ。セララだよ!」
「ありがとうセララ! キミはぼくの命の恩人ぽん!」
 同時にタヌキが可愛らしい声で人語を喋り驚くセララ。
 ぽんぽんと珍妙な喋り方で感謝を述べて、背中の翼でふわりと空を舞う不思議なタヌキは、何度かセララを周囲を回って匂いを嗅ぐような仕草を見せると、やがて驚いた様子で声を上げる。
「この魔力量……とんでもない逸材ぽん!」
「イツザイ?」
 タヌキの言葉の意味がわからずに小首を傾げていると、彼はセララの前に浮かんで言う。
「ぼくはたぬぽん! 魔法の国からやってきた妖精で、マジカルカードの管理人ぽん! そしてキミにはとーっても強力な魔法少女の才能が眠ってる!」
 四つの脚を身振り手振り、背中の翼もパタパタと動かして、興奮した様子の妖精たぬぽんは、目を丸くするセララにずずいと迫って。
「――どうかぼくと契約して、魔法少女になってほしいぽん!!」
「え、ええぇぇ~~~~っ!?」
 とんでもないことをセララに提案してきたのだった。

「まずは実際に試してみるのが手っ取り早いぽん! セララ、このカードを受け取るぽん」
「カード? わっ、なにこれ! 剣士、かな? かっこいい~!」
「それは『セイバー』のマジカルカード。それを掲げてこう唱えるぽん――インストール!」
「ふぇっ? い、インストールっ!!」
 たぬぽんに導かれるままカードを手にしてそう唱えると、強い光がセララを覆った。
 如何にも魔法少女っぽいエフェクトで頭からつま先までを光の輪が通過すると――そこには可愛らしくも凛々しい、立派な少女騎士の姿が。もちろん頭にはトレードマークのウサ耳リボン。
 一目瞭然。どこからどう見ても魔法でしかない現象に、最初は戸惑っていたセララもパァッと表情を明るくした。
「すごいすごーい! ボク変身したよたぬぽん!」
「やっぱりぼくの目に狂いはなかったぽん! 一度でインストールを成功させるなんて、キミは間違いなく魔法少女の才能があるぽん!」
 魔法少女の才能。
 なってみればそれほど胸をときめかせるワードもあるまい。
 平凡な日常では決して味わえない特別感に身震いするセララ。しかしふとザワザワした感覚を覚える。
 まるで何かを聞きつけたような、助けを求められているような感覚。見ればウサ耳リボンもセララに同調したようにピコピコと動いていた。
「わわわっ、なにこれー!?」
「むむむ、早速が現れたぽんね! カードの反応だぽん! セララ、ぼくについてくるぽん!」
「ま、まってよー!!」
 ひとり察した風のたぬぽんがピューッと飛んでいくのを追いかけて保健室を飛び出すセララ。
 いつもよりずっと速く走れていることにも気付かずに、二人は秋葉原の街を駆け抜けていった。

 ところかわって秋葉原の街銀行。
「ゼニニニニ! さぁ野郎ども、有り金ぜーんぶ根こそぎ回収するカネ!!」
 震え怯える銀行員の前で怪人が哄笑する。
 周囲には覆面を被った戦闘員が大きな袋を背負ってあちこちからお金を回収していく。
 店内の人間は皆震え怯えて、身体を小さく縮こまらせてされるがままだった。
 なぜなら相手は怪人――人ならざる悪の手先。駆けつけた警官は為す術もなく倒されて、あちこちで気を失っている。
「結局世の中金カネ! 他の怪人みたいに回りくどい真似はしない! 銀行を襲うのが一番手っ取り早くて儲かるカネ! そしてこれほどの稼ぎ……間違いなく次期幹部はこの――」
「そこまでぽん! ダークデリバリー!!」
「つ、ついたー!!」
 上機嫌に高笑いする怪人に割って入るたぬぽんの声――と遅れてセララが到着。
 顔を険しくして怪人を睨むたぬぽんと、高笑いを止めて対峙するダークデリバリーの手先――金貨怪人ゴールドラッシュ。
 戸惑うセララ……しかし悪がどちらであるかなど一目瞭然。たぬぽんが促すまでもなくセララは己の正義に従って一歩踏み出し、たぬぽんの横に並び立つ!
「ほほう貴様は……いつぞや取り逃した妖精ではないカネ。そしてそこの美少女!」
「美少女? えへへ~~」
「貴様からはすンばらしい魔力を感じるカネ! まさしく黄金の価値! ちょうどいい、ここで妖精共々確保してやるカネ!!」
「そうはさせないよ! キミたちが何者かは知らないけど……悪者はボクが許さない!」
「よく言ったぽんセララ! さぁ、強く自分を信じて――!!」
 たぬぽんの声援を受けてセララは瞳を閉じる。途端に力が溢れてくるのを彼女は感じた。
 セララに眠る稀代の魔力。そして魔法少女の才能が彼女に応え、『セイバー』のマジカルカードを通じて力を与える。
 彼女を中心に魔法のフィールドが広がり、怪人との決闘空間を形成した。
 平行世界を利用した風景をそのままに位相のズレた特殊空間。これを展開できる魔法少女などそうはいない。
 セララは紛れもなく天才だった!
「小賢しい! 一万円チャージ!!」
 怪人が叫び、チャージの宣言と共に一万円札を身体に取り込む。
 それこそが金貨怪人ゴールドラッシュの力。お金を消費して力を増すシンプルな能力……しかし現代社会においては間違いなく強力な異能!
 常人には目視すら不可能なスピードで肉薄し、その名の如くラッシュを繰り出す。
 鉄の塊すらも容易く砕く怪人の拳。それをセララは、しかし慌てず騒がず待ち構え……
「――今っ!」
「な、なにィ~~!?」
 迎え撃った剣閃は、紛れもなく達人のそれだった。
 ほんの少し前までただの少女だったはずのセララが、生涯を剣に費やした達人に勝るとも劣らない妙技で拳を捌く。
 完璧なカウンターはゴールドラッシュに傷を負わせ、予期せぬダメージに怪人がたたらを踏んだ。
「馬鹿な……このような魔法少女の存在など聞いていないガネ!?」
「ボクはセララ……魔法少女セララ! ピッカピカの魔法少女一年生だよ!!」
 お次はセララのターン。手にした剣を構えて飛び出し、お礼とばかりにラッシュを見舞う。
 怪人もまたそれにラッシュで応え、剣と拳、互いに人智を超えた領域のラッシュの速さ比べが繰り広げられた!
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ――っ!」
「ゼニゼニゼニゼニゼニゼニゼニゼニゼニ――っ!」
 一万円――五万円――十万円チャージ。
 限度額天井に達するチャージを経ても、セララはそれに全く引けを取らない。
 むしろ一撃を重ねるごとにセララは際限無く成長していき――やがてゴールドラッシュを上回る!
「そこだ!」
「ゼニィッ!?」
 強かに打ち付けられた剣と拳。
 はたして競り負けたのは――ゴールドラッシュの拳だった。
 ぶつけた拳から亀裂が入り、やがてそれは怪人の全身へ及ぶ。
「そんな……そんな……」
「ボクの――――勝ちだよっ!!」
「そんな馬鹿なぁあああああああああああ~~~~!!?」
 ひび割れた全身から閃光を放ち、そんな断末魔を最期にゴールドラッシュは爆発四散した。

「よくやったぽんセララ! 大勝利だぽん!」
「いぇーい!」
 決着がついて駆けつけたたぬぽんにVサインを贈るセララ。
 その手には『ボクサー』のマジカルカードが。これと貨幣から生まれた怪人が奴だったのだ。
「連中の名はダークデリバリー……このマジカルカードを使って怪人を生み出し、世界征服を目論む悪の組織だぽん。奴らに奪われたカードを取り返して、その企みを阻止するのがぼくの役目……そしてお願いぽん、どうかキミにも――」
「そこから先は言わない約束だよ、たぬぽん」
「セララ……?」
 詫びるように声を小さくしたたぬぽんに、セララはニカッと満面の笑顔を浮かべて。
「困ってる人がいるなら助けなきゃ! ――ね?」
「あ、ありがとう、セララ! キミは……キミはきっと最高の魔法少女になれるぽん!」
 それはひょっとしたら、運命の出会いだったのかもしれない。
 こうして少女と妖精は手を取り合い、悪を挫く誓いを立てたのだった。

 ちなみに一連の騒動は場に居合わせた一般人によって瞬く間に拡散され、魔法少女セララの名は秋葉原中に轟くこととなった。
 そしてその報せは秋葉原のみに留まらず、新聞やSNSを経て他方にも及び――
「ふぅん、魔法少女セララ……か。新入りが派手にやるじゃない」

 ――To be continued?

  • 『魔法少女セララNovice 第一巻 運命の出会い』完了
  • NM名ふーじん
  • 種別SS
  • 納品日2020年12月28日
  • ・セララ(p3p000273

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