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SS詳細

ラクリマ・イースの初体験(執事)

登場人物一覧

ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌

 ラクリマ・イースは幻想種である。
 若き頃にはとある教団に属し、視野が狭かったと自覚のある彼が。教団を抜け出しイレギュラーズとなって早幾年。様々な『初体験』を経験してきた。
 あの教団にいた頃には思いもしなかった景色。人々の営み、そして戦い。あらゆるものが今現在の彼を作る礎となっている。得難い人も得た事は素晴らしい事である。
 そんな彼が新しく目にしたのは執事喫茶。近頃幻想で話題の店だと噂を聞き、一度どのようなものかと訪ねてみたのだ。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
 喫茶店、とはいうものの。扉を開けて出迎えるは恭しくお辞儀を繰り出す燕尾服の男。人間種でそれなりに顔は整っている。軽く店内を見れば獣種、飛行種の姿も見える。皆一様に同じ格好をしている男ばかり。そして客席に座っているのは女性が圧倒的多数である。ラクリマはむしろ浮いているとさえ言えた。
「本日はお一人でしょうか?」
「ああ、いえ……少しここに興味がありまして」
 客席に案内しようとする男を遮り、ここへ来た目的を話す。実はこの店はそれなりに繁盛しており、人手が足りなくなっていた。そして人手を確保するついでに、今現在店員としていない幻想種の男を新たに募集していたのだ。
 執事というものがどういうものかよくわからないラクリマは、これ幸いにと体験してみたいと申し出る。
「なるほど、左様でございましたか。それでは只今執事長をお呼びします、少々お待ちくださいませ」
「あ、はい」
 執事長……恐らく店長の事なのだろう。中々本格的である。

 やがて執務室……店内の事務室に、だが。通されたラクリマは初老の男性との面接をこなす。とはいえそこまで堅苦しい話などなく、一度練習してみてどうするか決めよう、と。
 初老の男性、執事長と呼ばれた店長を客に見立てて応対の基本を学ぶ。とはいえラクリマは元々礼儀正しい性格、冷静沈着でもあった為にさほど問題はない。これならば実際に客の前に出ても大丈夫であろう、とその日のうちに実践となった。
(本当に大丈夫なのだろうか?)
 とラクリマ本人は少々不安になったが。もちろん自身の作法にはそれほどの心配はなく、むしろ初対面の男をこう安々と受け入れる店長達に、だが。
 しかしせっかくの機会である。街の女性達が望む虚像、見事演じてみせようと気を引き締める。

「お帰りなさいませお嬢様。こちらへどうぞ」
 早速一人の女性が店内に入ってくる。ラクリマは一筋の乱れもない礼から、綺麗な笑顔。流れるような動作で彼女を案内し、オーダーを受ける。
 厨房にオーダーを通す。内容は紅茶とショートケーキのセットだ。ほどなくして彼女の為のセットが用意され、ラクリマは無粋な音を立てる事もなく、彼女の待つ席へとそれを運ぶ。
「お待たせいたしましたお嬢様。紅茶をお入れしますね」
 優雅な仕草で紅茶を一杯。もはや眼前の女性はラクリマしか見えていない。それほどまでに初日で完璧な接待をしてみせたのだ。
「それではごゆっくり……また何かございましたらお呼び出し下さい」

 美しい幻想種の男が執事をしている、とすぐに噂は広まった。
 決して眼帯を外さぬその男は、美しい顔立ちでにこやかに微笑む。眼帯という少しアウトローな感じとのミスマッチがその男の魅力を更に深める。
 彼のファンは日に日に増えていく。しかし彼はどの女性にも靡かない。皆平等に笑顔を向ける。

「本日も一日お疲れ様でした、お嬢様。いつもので宜しいでしょうか?」
 今日もまた、彼の下に数多の女性は集う。彼の声に癒され、彼の笑顔に絆される為に。
 


  • ラクリマ・イースの初体験(執事)完了
  • NM名以下略
  • 種別SS
  • 納品日2020年12月20日
  • ・ラクリマ・イース(p3p004247

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