PandoraPartyProject

SS詳細

ロマンスとか夢とか深層心理とかトルネードとか

登場人物一覧

ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
中野 麻衣(p3p007753)
秒速の女騎士


「…………流石に大きすぎないっすか?」
「……そうかな?」
 その姿を見て、思わず呆れたような声を出した麻衣に対して、ンクルス腰と後頭部に手をあてたポーズのまま答えを返した。
 なんともおざなりなセクシーポーズだが、今現在、異様な胸の大きさを誇るンクルスが行うならば、様になっていると言えた。
 その胸は道行く人々の眼を引いてやまない麻衣のそれとくらべても遥かに大きい。知人より、『コミュニケーションツール』だとして胸部パーツの換装をしてもらったと聞いているが、なんとも特定のコミュニケーションのみを指したものである。
 いや、間違ってないっちゃ間違っちゃいないんだけど、ぼかしすぎではなかろうかと、麻衣は首を傾げていた。
「……服、どうするっすか?」
 疑問に思うのも無理はない。持たざるものに対し、いわゆる『持つ者』の悩みとして、自分に合う下着がなかなか見つからない、というのは時折耳にするが、ンクルスのそれでは、手持ちの衣服を身につけることも叶うまい。いつものシスター服を無理矢理に纏おうものなら、なんとも不格好になることは明白であった。
「大丈夫だよ。これをもらってきたから。じゃじゃーん」
 セルフな効果音とともに取り出したのは、紐だった。いや、正確にはいくつかの四角い布に紐がついている。下着、百歩譲って水着に見えなくもない。所謂『眼帯水着』である。こんなもの、絵か写真でしか見たことがない。麻衣の眼から見ても、水泳での実用性は皆無であるように思われた。泳いだらすぐ脱げそう。
「ちょっと、何用意してっるっすか!? あーもう、着るなっすー!!」
「じゃじゃーん」
 似合っていない、というわけではないのだが、如何せん、露出が大きすぎるため、服のための解決策として成り立ったかと言われれば、怪しいものである。
 堂々と、惜しげもなくその身体を晒しているンクルスを見ていると、なんだか麻衣の方が恥ずかしくなってしまい、思わず眼を逸していた。
「よし、帰ろう」
「それで!?」
 大丈夫だろうか。そんな格好で外に出て本当に大丈夫だろうか。なんかこう、悪いやつに眼をつけられたりしないだろうか。それ以前に、なんとか罪とかで警官的なあれそれに取り締まられたりしないだろうか。どこそこのギルドに依頼が行って、露出巨乳女討伐シナリオとか組まれたりしないだろうか。どこかのGMがそんなのを書いてくれたりしないだろうか、このクッソ寒い時期に。筆者は誰かがネタを拾ってシナリオ化してくれるのを心待ちにしております。
「やあ君、かわいい……でっか!?」
 店を出た途端に襲い来るチャラ男もお決まりのナンパ文句を言い終える前に本能と目線がンクルスの胸に集められていた。無理もない。年齢『13』で身長『小躯』でバストサイズ120オーバーである。シルエットはもはや落ちものパズルの『T』を横向きにしたものに近い。むしろ横幅の方が大きいかもしれないのだ。男も女もおじーちゃんもお姉さんも、みんながその胸に吸い寄せられていくのは自然の摂理に違いなかった。
 ところで、発注文には『チャラ男の群れ』とあった。群れとはどれくらいの人数規模を示すのだろう。
 彼女らは仮にも、荒事を専門とするギルドの一員である。中途半端な集団では彼女らを腕尽くで言うことを聞かせたり壁ドンしたり顎クイしたり袋を頭に被せてバンに連れ込んで拉致ったりできないのではなかろうか。
 悩んだ末に『群れ』で検索をかけてみたのだが、そうするとギンガメトルネードの画像が見つかったのだ。
 ご存知だろうか、ギンガメトルネード。体調1mのギンガメアジが海の中で竜巻状に群れを成すあれである。その数、数千匹。それらが列を成して形成する姿は美しく、これだと感じたため、このSSでは『チャラ男の群れ』とは数千人であると定義する。
 店を出た瞬間、数千人の大集団に声をかけられ、かけられると同時にチャラ男軍団は二人の胸の虜となり、野獣となり、襲い掛かってきた。流石に身の危険を感じる麻衣とンクルス。このままでは壁ドンしたり顎クイしたり袋を頭に被せてバンに連れ込んで拉致ったりされてしまう。健全な商業では出来ないことをされてしまう。ステータスの年齢欄をよく見ろ。言い訳できないんだぞ。
 しかし流石に多勢に無勢、迫りくるチャラ男団をちぎっては投げ、ちぎっては投げと抵抗していた彼女らも、そのすべてから逃れることは出来なかった。
 チャラ男のひとりが伸ばした腕。それはついにンクルスのそれに触れ、鷲掴みにし、こう、握力トレーニング的な動きをした。その瞬間。
「あんっ」
 ンクルスの小さな口から変な声がでて、一瞬、沈黙が周囲を支配した。麻衣は思い出す。そう言えば、『コミュニケーションツール』とか言っていたな、と。コミュニケーションをとるならば、レスポンスが必要だろう。つまるところ、あの胸部装甲は『弱点』なのではなかろうか。
 その答えに、この場の全員がたどり着いた。その事実に麻衣とンクルスは総毛立ち、反してチャラ男団はより飢えた獣として進化していく。集中して狙われる胸。攻撃される場所がわかっていれば対処はしやすいものの、やはりその数は甚大だ。戦いとは数なのだ。
 このSSは健全でなければならないため、詳細な描写を行うことは叶わないが、指先が軽く触れただけでもンクルスは声を上げて動きを止め、その隙に、僅かな布地の中に手を差し込まれれば、体温と感触がダイレクトに神経を伝達していく。指先がそこを掻けば、もう足に力を入れておくことすらままならず、膝は砕け、その体重すら男に任せるしか無い。もたれかかり、されるがままに。顔は赤く、息は乱れ、瞳を潤ませ、その度に痙攣のようなレスポンスを返していた。
「ンクルスさん!?」
 気を取られた麻衣にも、今や大きな集合体生物チャラ男と化したそれに取り込まれる。無数の腕に触れられれば、麻衣の手にも力が入らず、落ちた剣が地面にぶつかって、カランと音を立てた。
 別に麻衣の胸は換装したわけではなく自前のものなので弱点化していない気もしないではないのだが、それはそれとして力が抜け、されるがままになっている。
 嗚呼なんということだ。腕尽くで言うことを聞かされてしまっている。こうなってはあとはもう壁ドンしたり顎クイしたり袋を頭に被せてバンに連れ込んで拉致ったりされるだけなのだ。
 しかしその時だ。パンッという風船の弾けるような音が聞こえた。
 ぼんやりしていたみんなの頭が一気に覚醒し、その音はどこからだと視線を巡らせたところ、結局、先程までと同じようにみんなの眼がンクルスの胸へと寄せられていた。
 ない。ンクルスの胸部パーツが消滅している。さっきの音から察するに、揉みすぎて破裂したのだろう。デリケートな部分は大切に扱わねばならないのだ。
 全員が正気にもどった。チャラ男軍団はそれぞれが個人に戻り、俺たち何してたんだっけとそれぞれが家路についた。あとには、麻衣とンクルスだけが取り残される。
 風がひとつ。露出した肌を撫でていく。
 くちゅりと、くしゃみが静まり返ったそれに響いた。。
 風邪を引いたかもしれない。

  • ロマンスとか夢とか深層心理とかトルネードとか完了
  • GM名yakigote
  • 種別SS
  • 納品日2020年12月18日
  • ・ンクルス・クー(p3p007660
    ・中野 麻衣(p3p007753

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