SS詳細
雷系軍人なのだが私が転移した先の世界がおかしい件について!
登場人物一覧
●世界記録!
「助けて! ヴァリューシャ!!!」←おまかせの産物
開始一秒経たずに『負けた』のは恐らくこの世のレコードであろう。
……マリアはその時、自分で知らない自分の声を聞く事となっていた。
いや、まずこの状況を正しく語るには彼女が置かれた状況を正しく把握する必要があるだろう。
マリア・レイシスの日課は適切で良くコントロールされている。
1、おはようする
2、ローレットに顔を出して仕事を探す
3、仕事があれば受注し、なければ比較的自由な時間を過ごす
4、日帰りの仕事なら戻る。もにょもにょの世話を焼いたりする
5、ニコニコでおやすみする
……寝る時間が若干――若干と言えない程に夜更かし気味なのを除けば彼女の日課は堅い。
何せ軍人だからそういうのは的確で、何せガイアズユニオンの誇る軍神の一柱なのだから威厳に満ちている。
マリアの人生において彼女を阻み得る宿敵はそう多くなく、大いなる紅雷はそんな少数の例外さえもそうは許しはしなかったのだ。それなのに――
「助けて! おねえちゃん!!!」←続・おまかせの産物
……台詞の字面を見ての通り、そんな最強の軍神はまさに今、生涯最大の危機を迎えていた。
こうなる前――無辜の混沌なる場所に呼びつけられるその時までは見せた事も無かった姿である。
憂いを帯びた微笑みを己が敵や守るべき民に投げかける事があったとしても、目をぐるぐるにして、控えめに言っても><。な感じで。;;な調子で脳裏を過ぎった大切な人に救いを求めるマリアなど、誰の認識にも存在し得ない。彼女自身想像だにしていなかった。それは反射的反応だからマリア・レイシスは悪くない。
悪いのは零落したかような運命であり、雷系軍人が転移した先の世界がおかしいのが全て悪い。(早口)
これ位言い訳しておけばきっとマリアさんは許してくれるし、何せおまかせだから大丈夫だろう。
……彼女はまさに今、手足に絡みつく粘性の『何か』に捕まって、身動きさえ取れない状況下にあった。
一般にスライムだか何だかと呼ばれるそれが
「……っ、く、この――!」
足掻く彼女が知っていたのは
――わるいスライムの討伐ですよ! びりびりで虎なマリアさんなら楽勝なのです! マリアさん向きですよ!
(――わるいスライム以外全部嘘じゃないか!!!)
ローレットにおいても
「うぅ、気持ち悪い! こんなのないよ……どうして……」
肌に触れる粘液はべたべたしていて気持ちが悪く、マリアの受難はいよいよ暗雲立ち込める。
「それに、その、ちょっと、君! どうして私を高く持ち上げるの?
どうして本体に漬けようとしているの!?」
どうしてって、そこに君が居るからだけど。
「話し合おう! そうだよ、話し合えば分かり合える筈なんだ!!!」
――どうしてって君は涙をするけれど。
●ほうほうのてい
「……う、うう……酷い目にあった……」
これより幾度も対決する事になる(※確ロ)天敵との死闘の最初のページを終え、疲労困憊でマリアは自室のベッドに帰り着いた。帰り道で寄ったローレットでユリーカに抗議をしたが見事に
「つ、つかれた……」
何だかんだで
おかしな事が毎日山のように起きる混沌の生活は
(何だか、こんな感じ――初めてかも知れない)
『民』という大き過ぎる抽象像の為ではなく『誰か』の為に仕事をする。
大いなる力は失っても、それが故に人として他人と関わる機会を得る――
召喚された異世界は彼女に過酷ではあったけれど、同時に彼女に色々なものを与えてくれた。
この大いにおかしい世界をマリアは決して嫌っていない――
「……ふふ♪」
マリアの唇の端から小さな微笑みが零れていた。
そんな表情を浮かべる事も、そんな声色を零す事も稀有だったとするならば、確かに悪くないではないか。
そして何より――大切なものはここにある。
――どんどん! と扉が激しく叩かれた。
「マリィ! マリィ! 聞いて下さいまし! 私を非道の追手が! 助けて!!!」←こいつが悪い
「今開けるよ! 待ってて、ヴァリューシャ!」
全身の疲労も瞬時に忘れたマリアの表情が華やいだ。
この世界はおかしい。おかし過ぎる。でも、きっと同時に最高なのだった。
――よし、いい話っぽく騙せたぞ!!!
状態異常
- 雷系軍人なのだが私が転移した先の世界がおかしい件について!完了
- GM名YAMIDEITEI
- 種別SS
- 納品日2020年12月12日
- ・マリア・レイシス(p3p006685)