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ロザリオをその手に抱きながら
登場人物一覧
名前:リア・クォーツ
一人称:あたし
二人称:あなた、~さん
口調:ね、よ、なのね、なのよね?
特徴:――あたたかい人
設定:
……これは独り言なのですが。
私は女性という方々を遠ざけておりました。
いえ、女性が嫌いだとかそういう事ではありません。しかしご理解頂けるかと思いますが、私は立場上誰かと親密になる事にも――些かの思案が必要なのです。私は決して失脚する訳にはいかないのと同時に、誰かと懇意であると見られる事にも意識を向けねばならない。
この国がもう少しばかり優しい国であったなら――
……話が逸れましたね。ええ、引き続きこれは只の独り言ですが。
私は女性を遠ざけておりました。
誰もがそこにいて、しかし誰をも目に映さぬかのように……
しかし私はある日――音色を聞いたのです。
それは美しい音色でした。耳を撫ぜる輝き。甘美なる響きが私を揺らして。
その時からでしょうか。私が『彼女』という存在を意識したのは。
これは独り言ですので誰とは申し上げませんが、しかし。
初めてでした。
私は彼女の手を取りたいと――ええ、些か欲が出てしまったのですよ。
たった一時の舞踊。
たった一瞬限りの煌めきなれど。
どうかこの手にその暖かさを抱きたいと、私は思ってしまった。
ええ。今まで誰しもを抱かなかったのに私は彼女と共にあった。
歩を合わせた舞踊の中に――あったのですから。
……ふふ。太陽に恋焦がれた鳥が如何なる末路を迎えたか、知らない訳ではないのですが。
つい、目が眩みました。
後悔も悔いも無い一時の甘美に身を委ねたのです。
指先から彼女を離すのが惜しい程の――流れに。
……二度同じ事をする勇気はありませんね。
次が。もし次があったのなら。
その身をこの指先から零す事は――ないかもしれませんから。
……ああそういえば。
つい先日、贈り物をしてしまいました。
とある衣装なのですが……ええ流石に私の名前を出しはしませんでしたが。
ですが、もしかしたら気付いて頂けるかもしれませんね。
あの衣装は……少々『似せ』た所がありますし、その上――
贈り物の片隅に、私の薔薇を添えましたので。
ああ――いや、もしかしたら私は。
きっと気付いてほしいと。
またも欲が出ているのかもしれません。
暖かな貴女に。