PandoraPartyProject

SS詳細

吸血鬼として貴方と一緒に

登場人物一覧

エリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ(p3p000711)
永劫の愛
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種

●2人の出会い
 最初は、街角でのちょっとしたすれ違いだった。

 幻想へと招かれ、活動をしていた1人の少女。
「……ではなかったかしらね」
「……そうですか」
 明るい仕草で、街の主婦と語らう『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)。
 彼女はローレットで受けた依頼解決の為、情報収集を行っている最中だった。
 長い茶色の髪を左後方の1点で赤いリボンを使って留めた髪が靡く。
 髪をかき上げる仕草がまた非常に可愛らしく、物腰が丁寧なこともあってユーリエは街の人達からも好感を抱かれていたようだ。
「えっと、それで……」
 ユーリエは話の途中、ふと視線を逸らすと、通りかかった少女に目を惹かれて。
「あっ……」
 毛先がほのかに朱のかかった銀髪と腰から生えた蝙蝠の翼。
 日差し避けの為に日傘を指す彼女は、どうやら吸血鬼らしい。
 やや気だるげな態度をした少女だが、ユーリエにはそれが浮世離れしたような態度に見えて。
「旅人さん……でしょうか?」
 ぼーっとしながらユーリエは、物思いに耽る。
 この世界において、吸血鬼なる種族は存在しない。
 魔種に堕ちたのであれば、その限りではないかもしれないが、彼女はそうした雰囲気は感じさせなかった。
 いや、むしろずっと見ていたい。そんな印象さえ抱かせてくれる。
 どこか気品を漂わせるその立ち振る舞いは、まるでどこかのお姫様みたいで。
「……私のような普通の女の子とは、縁がなさそうだなぁ」
「ちょっと、大丈夫かい?」
 それまで話をしていたユーリエが突然呆けたことに驚き、話をしていた主婦が心配そうに声をかける。
「あ、はい……あれ!?」
 我に返ったユーリエは、吸血鬼の女の子を見失ってしまった。
「また、会えるかな……」
 そして、ユーリエが主婦へと再び向き直ろうとすると、主婦はいつの間にか、吸血鬼の女の子に代わっていて。
「何か御用ですか?」
「わっ……!?」
 思わずバランスを崩し、ユーリエは地面へと尻もちをついてしまった。
 いつの間にか現れた銀髪の少女にユーリエも主婦が驚く中、女の子はそっとユーリエに手を差し伸べる。
「あ、ありがとう、ございます……」
 少し頬を染めつつ、ユーリエは手を伸ばして彼女の手を取り、身を起こすのだった。

 ――美味しそうな女の子を見つけた。
 それが、銀髪の吸血鬼、『愛欲の吸血鬼』エリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ(p3p000711)にとっての最初の印象。
 ちょっとからかおうと思って近寄ってみたけれど、思いっきり尻もちをついた彼女はすごく可愛らしい。
(あぁ、この子は中々に食べがいがありそう)
 吸血鬼であるエリザベートは、人間とは似て非なる存在である。
 ――彼女の血を吸ってみたい。
 エリザベートは本心からそう望んでいた。

●友達、そして恋人へ
 その1件以後、ユーリエとエリザベートは友達となり、交流を持つこととなる。

 ローレットの仕事が終わり、ユーリエが幻想の街を歩いていたところで、ふとユーリエが呟く。
「……エリザベートさん」
「呼びましたか?」
 ユーリエが呼べば、あるいは、話題に出すだけでも、エリザベートは姿を現す。
「こんにちは、ユーリエ」
 エリザベートはいつものように日傘を差し、気品漂わせる笑みを向けてくれる。
「あ、はい。こんにちは」
 友達ではあるのだが、ユーリエはまだよそよそしい敬語口調でエリザベートと接していて。
「きょ、今日はどこに行きましょうか?」
「任せますよ。ユーリエの行きたい所なら、どこでも構いません」
 幻想の街を2人で歩く。今日は一緒にお買い物の約束だ。
 ユーリエにとっては、まだ憧れの感情が強いエリザベート。
 彼女へと抱くほのかな恋慕の念を胸の奥底にしまって。
「それなら、アクセサリーショップに、行ってみませんか?」
 ユーリエはエリザベートの手を引いて、幻想の街へと繰り出す。
 しかし、エリザベートの思惑はそんなユーリエの考えが及ばぬところにあった。
(あぁ、そろそろ貰ってもいいだろうか?)
 エリザベートはユーリエを初めて目にした時から変わらない。
 ――ユーリエを食べてしまいたい。
 だって、こんなにも、彼女の血を渇望しているのだから。

 そんな2人はやがて……。
 ユーリエは自身の家へとエリザベートを招く。
 それまでずっと我慢していたエリザベートはついに本音を、自らの願望をユーリエへと語る。
「私の……血?」
「ええ、そうよ」
 エリザベートは本心からユーリエへと告げた。
 ――貴方の血が欲しい、と。
 そっと近づいてくるエリザベートに、ユーリエは頬を染めて。
「それがエリザベートさんの……望みなら」
 エリザベートの牙が煌めく。
「それじゃ、いただきます」
 ユーリエの首、そのきれいな肌へと突き立てられる牙。
 白い牙を伝う真紅の血を、エリザベートは恍惚とした表情で自らの喉へと流し込む。
 ――ああ、思った通り。こんなにもあなたの血は美味しい。
 その日の境に、2人は友達から恋人へと関係を深めていった。

●より深く、大切な関係に
 それから。
 ユーリエとエリザベートは、事ある度にそれぞれの部屋へと立ち寄る仲になっていた。
「……えりちゃん」
「ユーリエ……」
 居間でふとしたタイミング。2人で入ったお風呂の湯舟で。お泊りして一緒に入ったお布団の中で。
 どちらからともなく見つめ合い、両手を繋ぎ合った彼女達は肌を交わし、体を重ねる。何度も何度も。
 えりちゃんこと、エリザベートはユーリエを優しく可愛がり、愛でてくれる。
 重ねた唇の柔らかさ。絡める舌は相手に自分の匂いを、味をより深く伝え、自分を刻み込む。
 何も知らなかったユーリエは少しずつ、エリザベートから教わっていく。
 女の子の体の柔らかさ、気持ちよさ、たくさん、いっぱい。
 エリザベートも思うままに、ユーリエの体を隅から隅までじっくりと……。
 舌の血も、首筋の血も、腕の血も、胸の血も、そして純潔も、何もかも全て。
 ユーリエの体で知らないところがないくらいに、彼女の体を味わい尽くす。
 ただ、その関係が深まれば深まるほど、ユーリエの中で少しずつ不安が高まってしまう。
(でも、本当にいいのかな)
 ――親友はこんなコトしないよね……。それに女の子同士で。
 それは、ある種の背徳感のようなものだろう。
 ユーリエは何も知らなかったからこそ、エリザベートが自らの色に染めていこうとするその行為に、戸惑ってしまって。
 こんな関係が周囲に知れてしまったら、どうなってしまうだろうか。
 きっと、他の人から、友達からですらも、奇異の目で見られてしまうに違いない。
 棘のように、その想いがユーリエに突き刺さる。
(私はいいけど、えりちゃんは……)
 ――えりちゃんが私のせいで、周りから変って思われるのは嫌だ。
 それだけ、ユーリエにとって、エリザベートの存在が大きなものになってきていたのだ。
 だからこそ、彼女が変な印象を持たれてしまうことに、ユーリエは耐えられない。
 しかし、エリザベートはなおも、自分を求めてくれる。
 それはとてもステキなことだし、嬉しいこと。
 こんなにも、彼女は私に愛しさを感じさせてくれる。
 距離が近しくなるにつれ、ユーリエの中でわだかまりは大きくなる。
(やっぱり……、えりちゃんのためにも別れたほうがいいのかな)
 彼女の中にある常識、世間体、理性。
 そういったものがエリザベートと距離を詰めることを拒絶してしまう。
 しかし、エリザベートは彼女のそんな不安すら打ち消してしまうほど、何もかも優しく包み込んでくれる。
「ねえ、ユーリエ。吸血鬼にならない?」
 人間らしく不安や戸惑いを見せるユーリエ。
 対して、吸血鬼であるエリザベートはそんなユーリエと本能のままに接する。
(この子には、吸血鬼になる資質がある)
 ――だから、私のモノにしましょう。永遠に、永久に、悠久に。
 彼女の不安なんて、エリザベートには関係ない。
 そんな些細なものなど、吸血鬼になってしまえば簡単に解き放たれる。そう知っているから。
「……え、私が吸血鬼に?」
「ええ、きっと素敵な吸血鬼になるわ」
 そっと、エリザベートは一言告げ、彼女の首筋をそっと甘噛みする。
 そうして、自らの想いをゆっくり注ぎ込む。
 ――ユーリエが私なしでは生きられなくなるくらいに。
 エリザベートは彼女を自分という毒に漬けていくのだった。

●人間から吸血鬼へ
 日に日に、ユーリエはエリザベートへと思いを強めていく。
(もっともっと、えりちゃんと一緒に過ごしたい)
 ――何年も何十年も何百年も、その先も……。
 エリザベートの想うとおりに、ユーリエはもう彼女なしではいられなくなっていた。
 もう、戸惑いなんてない。ユーリエはエリザベートと共にありたいという気持ちを抑えることはできずにいた。
 もはや、他人からの視線など、ユーリエにとっては障害にもならない。
 人目をはばかることなく、常に一緒にいたいとすら思う。だって、こんなにも愛しい人なのだから。
 ただ、まだ障害はある。
 それは、人間であるという枷。人という生き物は有限な生き物なのだ。
 ユーリエが人間である以上、やがて時間が彼女とエリザベートを引き裂いてしまう。
 だから、ユーリエは人間であることを……辞めた。
 そう決心してからは、吸血鬼の眷属となったユーリエの体に変化が始まる。
 最初は、服や装飾品に影響が出始める。赤いリボンが黒く、身に着ける物もエリザベート好みの赤や暗色に。
 そして、茶色だった髪が白銀色へと変色していく。その背からはついに、吸血鬼としての可愛らしい蝙蝠の翼が生えた。
 互いを求め合えば求めあうほど、髪も吸血鬼の羽も、どんどんユーリエはエリザベートへと近づいていく。
 ――あぁ、愛し合うって幸せ。
 吸血鬼となったユーリエは、エリザベートと共にあることでこんなにも満たされる。
 そこに、もう迷いなどは微塵もない。
 ユーリエはこの先ずっとずっと、たとえ混沌という世界が終わったとしても、エリザベートと生きていくのだろう。

 そんなユーリエを、エリザベートは冷静な目で見つめることがある。
 エリザベートもまたユーリエを求め、その手から決して離すことが無いのは間違いない。
 ただ、エリザベートには一種の懸念に近いものが生まれていた。
 ――ユーリエはまだ未完成である。
 完全な吸血鬼であるエリザベートは、ユーリエが自らの予期していない状況に置かれていることを察していて。
 エリザベートは自らのギフトによって、日光を無効化している。
 ただ、普段は人間形態として過ごすユーリエはギフトを使うことで吸血鬼化する、いわば半吸血鬼とでもいうべき存在となっている。
 果たして、ユーリエは一体どうなってしまうのか。
 エリザベートは今後の経過を観察せねばと考えていた。

●愛しい貴方と共に
 布団で眠っていた2人へと光が差し込む。
 外で鳴くスズメ達がさえずる声で、彼女達は同時に目を覚ます。
「……おはよう、えりちゃん」
「おはよう、ユーリエ」
 挨拶を交わし、彼女達は手を絡めて。
 吸血鬼達は朝が弱いのか、目覚めた2人はそのまま二度寝。
 手を取り合い、ユーリエとエリザベートは幸せの中でまたまどろんでいく。
 昼間、外に出るときも、できる限り一緒に。
 さすがにこれ見よがしにイチャイチャすることはないが、時折2人は頬を寄せ合い、なにげなく互いの感情を確かめ合う。
 女の子同士は仲が良いと見られるだけで済むが、例え恋仲だと知られたとしても、彼女達が気にすることはない。
 だって、2人の関係は何者も立ち入ることができぬほどに強く、強く結ばれているのだから。
 
 そして、夜になり、2人一緒に部屋へと戻った彼女達はいっぱいキスをして互いの愛を感じる。
 見つめ合う2人は当たり前のようにそっと肌を触れ合わせ、体を重ねる。
 互いの体で、知らないところなんてもうない。
 どこを触れたら声を上げてくれるのか。どこが敏感なのか。何をすれば自分を感じてくれるのか。
 相手の全てを熟知した2人は愛をたくさん確かめ合い、そっと唇を重ねてから眠りへとついていく。
 翌朝。
 窓から光が差し込み、またスズメの鳴き声が彼女達の目を覚ます。
 今日も始まる1日。
 ユーリエ、エリザベートの2人は手を取り合い、また布団の中で惰眠を貪るのである。

  • 吸血鬼として貴方と一緒に完了
  • GM名なちゅい
  • 種別SS
  • 納品日2019年07月23日
  • ・エリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ(p3p000711
    ・ユーリエ・シュトラール(p3p001160

PAGETOPPAGEBOTTOM