SS詳細
灰の子供と、緑の治癒士
登場人物一覧
名前:フラン・ヴィラネル
一人称:あたし
二人称:~さん、先輩
口調:だ、だよ、だよね?
特徴:【愛嬌がある】【絶壁】【深緑風】【元気】【好奇心旺盛】【甘党】
設定:
碌に侵入者も来ない遺跡。それを延々と守り続ける、つまらない村の一族。
それこそが、自らの故郷に対するフランの印象だった。
自身もこの村の役目に縛られ、老いて死ぬのだろうか。そう思えば、彼女の心はただ萎びていって。
『セカイは、今日も灰色だった』
それでもフランの周囲は、この村と、村を厭う彼女も、愛してくれていた。
「ご先祖様からのバトンを受け取るのが、すっごく楽しみなの」幼馴染たちはそう言った。
「違う未来を夢見るなら、それを明確に描いて、後はそれに向かって走る準備をするんだ」大人たちはそう諭した。
「好きなように生きなさい。その途中で疲れた時は、またこの家に帰って来ればいいさ」彼女の両親はそう微笑んだ。
『灰色のセカイで、彼らは鮮やかな色を持っていて。
ああ。ならば、色を失っていたのはどちらの方なのだろう』
――だから、「そうすべきだ」と、彼女は思ったのだ。
その日、生まれて初めて遺跡への侵入者を目の当たりにした時。
幼馴染たちと村の外で遊んでいたフランは、彼らを逃がして自身が囮になった。
無論、子供一人が遺跡目当ての盗賊たちから逃げられるわけもない。
捕まえられた後、逃げられないよう手足の骨を折られ、縛られて。
それに泣き叫び、気を失いながら。けれど、彼女の心は満足だった。
『何も感じ得ないあたしが生き残るくらいなら。
あたしよりも鮮やかな想いを馳せるあの子たちにこそ、生きていてほしかったから』
その後、村人たちにより盗賊から取り返された彼女は、治癒士によって奇跡的に一命を取り留めた。
……いいや、正確に言えば、「彼女たち」は。
彼女が逃がし、助けたつもりの幼馴染たち。
彼らもまた、別方向から来ていた盗賊の仲間の手で重傷を負わされていたのだ。
だが、その命は繋ぎ留められた。彼女が嘲り、しかし羨んだ村人たちの手によって。
真の意味で、助けたい人を救った治癒師に対して、彼女は涙と共に問うていた。
――あたしも、あなたのようになれますか、と。
だから、それこそが彼女が一歩を踏み出すきっかけ。
時は経ち、現在。村の外に出た少女は、嘗ての憧憬を胸に、治癒の知識と技術を求めて修行を続けている。
『セカイは、今日も鮮やかに輝いていた』