SS詳細
302cmはひどいとおもう><。
登場人物一覧
●ミスマッチ
世の中には噛み合わないものが沢山ある。
例えば直情径行と深慮遠謀、例えば体育会系と文化系。
いわしの刺身とパン、イレギュラーズとデモニアとか――足してはいけないものは山とある。
熱砂の浜辺で少女達がキラキラと輝いていた時。
持ち込んだボールでビーチバレーに興じようとしていた時、横たわっていた問題は有体なものだった。
「三人では難しいのです」。ユリーカがそう言った通り、対戦するならば二対二が丁度いい。一人を審判に回すという手もなくはないが、個人の能力だけで勝敗が決まるよりはチームワークを組み合わせた方が面白いというものだ。
友人と戯れるユリーカは当然ながら周囲を見渡した。
三人で遊べないならもう一人を足せばいい。それは簡単な結論である。
――誰か、ボク達とビーチバレーをするのです!←143センチ
――私でいいなら参加しようか?←302センチ
……この時、ユリーカの視線が、たまたま近くでシートを広げ、バカンスの時間に身を浸していたコレットと絡んだのは、愉快で面白く実に残酷で此の世の理というものが多少意地悪く出来ているという――改めて確認するまでもない事実を全く正しく証明する、今日も今日とて良く出来た『運命的必然』と呼ぶ他は無いだろう。
「うぐぐ。此の世の理不尽を見ているかのようなのです……」
「まぁ、お遊びだしいいじゃない」
「それはそれで面白いのです!」。そんな余裕も今いずこか。じゃんけんによる組み合わせでよりによってコレットと別のチームになったユリーカが早くもコレットの圧に折れかけていた。
「チームでの対決だからね」
ユリーカは特別小さいが、残りの二人も160センチあるかないか位である。
身長160cm程の美少女の縮尺をそのまま二倍弱まで拡大したコレットは間近で見ればもう大迫力だ。
挿絵(※確定ロール)を見て貰えば分かるその通りに――借り物のネットの上から突き出たコレットの上半身は何とも突破出来ようも無い大いなる壁の如しである。
「や、やってやるのです!」
「ええ、やってやるわ。手加減をするような真似はしないけど――」
『眼窩』を見下ろすコレットの表情筋は何時もと変わらず、あまり活発な動きを見せてはいなかったけれど。
「――破壊神でも、夏の浜辺で遊ぶ位の事はするものよ」
成る程、本人が言うなら説得力は十分だ。
神様のオフ・ショットは貴重であるとも言えるだろう。
●無敵の大壁vs天空アタック
「アタックなのです!」
べし。
「もう一度!」
べし。
「……ならば、変化球!」
べし。
「……………こんびねーしょん」
べし。
「無理なのです! 絶対こんなのおかしいのです!」
「そう? 私は結構楽しいけど――」
砂の上にユリーカが地団駄を踏んでいた。
そんな彼女の分かり易く――或る意味で愛らしい様子を眺めるコレットは強い日差しに少し目を細めていた。
夏のバカンスの一幕、突然始まった四人によるビーチバレーは。
――33-4
な阪関無と、呪文さえ聞こえてきそうなスコア具合だが。
当然、全く予想の何から外れる事も無く展開はユリーカチームの惨敗模様となっていた。
「でも、驚いたわ。ユリーカ、結構上手いのね」
「そうなのです。ボク、実は得意なのでした……」
実を言えばそう言ったコレットはこういう遊びには余り習熟していない。
破壊神も時にはお洒落もするし、オフを満喫する事もあるのは御覧の通りだが――ボール遊びをした経験が豊富であるかと問われれば、そこは何とも言えない話である。翻ってユリーカはと言えば、こういうイベントの度に全力全開に死力を尽くす――レオン曰くの――お子様であるのだから、経験値の差は多少はある。
「でも、負けないわよ」
「勝つ所か、好転の兆しさえ感じないのでした!」
本人はこれで案外楽しんでいる――だが、淡々と言ったコレットを見上げ、ユリーカが思わず突っ込んだ。
言うまでも無くコレットの最大の武器はその『高さ』である。バレーボールとバスケットボールは数ある球技の中でもトップクラスに『高さ』がモノを言う種目である。
コレットの超・長身は跳躍する必要さえ無く完璧なブロックを完成させる『カミサマ山脈』である。
まさに頭上から攻撃を撃墜する無情なブロックは一片の希望も残さぬ破壊神の所業。カミサマ、流石きたない。
「……?」
いや、適当言いました。
とは言え、4点のスコアが物語る通り無敵のコレットにも多少の弱点が無い訳ではない。
大柄過ぎる彼女はどちらかと言えば小回りが利かない方だ。不安定な砂の足場も相俟って、横の動きは多少鈍い。
ユリーカ・チームはそこを突き、俊敏な移動攻撃でコレットのブロックを幾らかかわして今がある。
「そういえばこれ、何点取ればいいのかしら?」
「ボクが! 勝つまで! 否! 納得するまで! 遊んで下さい!!!」
勝つまでを言い換える辺り、多少根性が無いのは否めない。
「……駄目ですか?」
「ううん」
軽く涙目のユリーカにコレットは首を振る。
淡々と人(?)が良い所もある彼女は唯「分かったわ」とだけ応じてボールを軽く上に放り投げる。
ずびし!
「><。」
302センチの長身から繰り出される超角度サーブがユリーカの足元に突き刺さる。
(こ、このままでは330-40になるだけなのです……!)
焦るユリーカの首筋を冷たい汗が流れ落ちた。
キリの悪いスコアは本来のルールから逸脱したが故に生み出されたものだ。
(ローレットの看板娘、美少女情報屋としてはこの上屈辱に咽ぶ訳には……)
あれよあれよと離れる点差に辞め時を失った我等がユリーカがそう簡単に退く筈もないのは自明の理である。
(……でもコレットさんの水着、可愛くて綺麗なのです。オトナって感じがするのです……)
但し集中力はいまいちで思考はとっちらかっている。
「……?」
自身をじっと見つめたユリーカにコレットは小首を傾げるばかり。
縮尺(サイズ)以外は本当に美少女味の深い彼女なのである。
戦いは続く。
必死の防戦、抗戦を見せるユリーカチームだが、コレットの防御は鉄壁であり、時にパスされても意外と真面目にいぶし銀の活躍を見せるチームメイトがこれをフォローし、簡単には得点を許さない。
(ユリーカだけが)焦れる展開。(ユリーカだけが)焦る展開。
「コレットさん、素敵な水着だけど――やっぱり特注したのかしら?」
「あ、私も思った。お店には売ってないサイズだもんねぇ」
「一応ね。やっぱり夏はこういう格好もしたいじゃない」
「分かる! 機会があったら今度別のも探しに行きましょう! 美味しい喫茶店もあるのよ!」
「……ま、真面目に戦う心算が無いのです。無いのでした……!」
チームメイトの二人は案外話せるコレットの事が気に入りだしたらしく、勝負も程々にお洒落な水着の話や、お茶の話等、女子トークに花さえ咲かせ始めていた。
「ふ、ふふ……」
故に。
「ふふふふ、ふ……こうなれば、もうボクも切り札を切るしかないのです。
楽しいビーチバレー、この技だけは使うまいと心に決めていたのですが……」
不敵に笑うユリーカの目が据わっていた。
「これからが本番ね。分かったわ、期待しましょう」
八方塞がりの完封状態に遂に『本気』を出すとのたまうユリーカにコレットが目を細めた。
俄かに激闘感出て、シリアスめいた空気にモブの二人が「どっちもがんばれー♪」と無責任な声援を送り出した。
勝負は二人のもの(というかムキになっているのはユリーカだけだが)と理解した二人は、コートの横に座って、ドリンクを片手に観戦モードといった具合である。
「その目で括目するのがいいのです。はいぼくと共にボクの姿をその脳裏にやきつけろ!」
ボールを持ったユリーカが目を見開く。
何処で覚えてきたのか仰々しい台詞を吐いた彼女は――
「……あ」
――思わず可愛らしい声を漏らしたコレットの視線の先の彼女は。
あろう事かボールを持ったままその背の翼で空高く、高く舞い上がり始めたではないか。
「飛行種たるボクの力に慄くのです! これがスーパーユリーカの天空草落としなのです!」
草言うなしw
この高さではコレットの絶対防壁も通用しない。
「くっ……」
初めて苦戦らしき声を上げた彼女が砂に足を取られ、角度というか自由落下してきたボールを落とす。
「やったのです! 正義は勝つのです!」
「ユリーカちゃん正義じゃないよねー」
「コレットさん頑張って!」
「一人はともかく、ボクの味方までコレットさんを応援するのは辞めるのです!」
きゃいきゃいと騒ぐユリーカ。
「……………」
砂浜に転がったボールを拾い上げたコレットはボールとそんなユリーカを交互に眺めて。
「どうしたですか、負けを認めるのですか。認めて下さいです;;」
言葉とは裏腹に極めて弱気な彼女にぽつりと零した。
「ユリーカ、私にも羽、あるんだけど」
その後の試合がどんなものになったかは敢えて語る必要もないだろう。
夏のバカンスの一幕は騒がしくも面白く過ぎていく。
そんな『ゆるい』時間の中で。
「……………」
滅多に笑顔を見せる事の無いコレットの口元が微かに緩んだのは――果たして気の所為だっただろうか?
- 302cmはひどいとおもう><。完了
- GM名YAMIDEITEI
- 種別SS
- 納品日2019年07月12日
- ・コレット・ロンバルド(p3p001192)