SS詳細
原罪のシュプレヒコール
登場人物一覧
名前:ヨタカ・アストラルノヴァ
一人称:俺
二人称:呼び捨て
口調:…だな…、…だろ…、だろ……?
特徴:黒いメッシュを入れた白髪。左は黄金の暁、右は黄昏の茜と左右色を違える瞳。特に赤い右目を気にして前髪で隠す。しなやかな肢体は貴族出身らしい気品を醸している。175㎝/体重:65㎏。
設定:世界各地を巡業する寡黙な弦楽器演奏者。
空中庭園に召喚された時には眠った状態であり、転移直前の数日間の記憶はない。
思い出そうとすると記憶の再現を拒むかのように激しい頭痛に襲われる。
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【封じられた記憶】
《幻想》の貴族の屋敷で演奏を終えたヨタカは客人として招かれていた男に声をかけられる。
軍服を着ているが眼鏡をかけた学者風の背の高い男であった。
彼に楽を乞われて付いて行ったヨタカは、男に囚われ『実験』を受ける。
如何にして人は魔に堕ちるか。
何処まで人は魔に堪えうるか。
《シュプレヒコール》と名乗る男はそれを調べていると言い、ヨタカをスカイフェザーとしての真の姿に戻すと、四肢を拘束してあらゆる手管で貶めた。
醜い、おぞましいと言われ続けた鳥人の姿を。
美しい人の姿に化けることで回避していた嘲笑を一身に浴び、幼い頃からのコンプレックスを刺激されるヨタカ。
最初は拒み、次に泣き叫んで赦しを乞うていた。
しかし精神崩壊寸前にまで追い詰められると、傷付いた自尊心を守ろうとする防衛本能が発動。
これまで見せたことのない憤怒の形相を露わにする。
「いい顔だ。その方が愛し甲斐がある」
男はそう言ってヨタカの頤を掬うと、怒りを吐き出す嘴に己の口唇を重ねた。
礼儀正しく振る舞う美青年でもなく。
麗しい音色を奏でる弦奏者でもなく。
真実のヨタカに触れる男は酷く優しかった。
無理強いすることなく、だけど仕掛けて、ヨタカに乞わせると愛を与える。
醜いまま、ありのまま愛され、求められる悦びをその身に徹底的に擦り込まれると、次第に思考も感情も溶けていく。
空中庭園に召喚されたのは男の手に完全に落ちる直前のこと。
転移がなければ男によって掻き立てられた憤怒の罰、愛執の罪が彼の心を壊し、魔に堕ちていたかもしれない。
黒とも灰とも付かぬ羽毛は数え切れない刻印を隠す。
人はヨタカの身に何かが起きていたのかを知らない。
ヨタカもまた男にまつわる一切の記憶を羽の下に埋めたままだ。