PandoraPartyProject

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イロードの夢魔

登場人物一覧

リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
リカ・サキュバスの関係者
→ イラスト

 幻想王都の宿、雨宿り。此処は、何故か、良い夢が見られると評判であり、今日も多くの客が宿泊している。
「さっ、今日も頑張ろうです」
 看板娘の雨宮 利香 (p3p001254) はまだ、誰もいない食堂を眺め、独言する。
(サラダとパン、カボチャのグラタンの準備も出来ていますし、今日も何とか、大丈夫そうです。あとはルカの様子を確認すれば良いです)
 金色の瞳を細め、厨房にゆっくり、向かい、「わふ!?」
 何もないはずの廊下で転倒しそうになり、利香は顔を赤らめる。
(き、気を付けないとです)
 そして、利香はカボチャの香りに包まれた、厨房を覗き込む。そこには、新人従業員である、ルカ・マルコーニが朝食の準備に勤しんでいる。
(頑張っています)
 利香は感心する。厨房には皿やカップが既に用意されている。
「ルカ、かぼちゃのスープはそろそろ出来上がる頃です?」
 冷蔵庫を見れば、カボチャプディングとカボチャのシュークリームが冷やされている。利香は笑みを溢す。どちらも美味しそうだ。
「あ、利香さん。うん、大丈夫だよ。でも、オーブンの様子を見てほしいかも、パンプキンパイがそろそろ、焼きあがる頃だから」
 首を傾け、ルカは利香に美しい笑みを贈る。利香は眩しげに目を細めた。ルカは美少年であり、彼の頬は蜜入りの林檎のように艶がある。利香は笑顔で頷き、オーブンを確認する。
「うん、美味しそうです」
 パンプキンパイは黄金に濡れ、輝く。途端に広がる、バターとパイの香り。
「あ、良い香りだね! 心配だったんだ。あ、わ! でも、こっちは、ちょっと焼きすぎちゃった……」
 ルカは別のオーブンから取り出した、カボチャのキッシュを見つめ、残念そうに呟いている。
「そんなに、焦げてます?」
 利香はキッシュを心配そうに覗き込む。見れば、僅かに焦げているが、味に問題は無いように思える。それでも、ルカはしょんぼりしている。
「ルカ、このくらいなら大丈夫です」
 利香の言葉に、パッと笑顔を見せるルカ。
「良かった! 僕、また、失敗しちゃったかと思ったんだ」
「大丈夫です。とっても、美味しそうです」
「えへへ、嬉しい。レシピ通りに頑張って作ったんだ。時間はかかったけど」
 楽しげにルカは言う。利香は笑い、ルカの為に、パンプキンパイを少し残しておこうと、思ったのだ。
「利香ちゃん、俺におかわりをくれ!」
 食堂は賑わう。朝のいつもの風景。
「はーい!」
 利香は元気よく返事をし、名物のかぼちゃのスープを客に振る舞っている。
「はー、いいねぇ。かぼちゃのスープ、美味しいわ!」
 千切ったパンをスープに浸し、口に放り込み、男はすぐに唸る。
「なんだか、いつもより食欲はあるし、あんたんとこの宿に泊まって本当に良かった! 寝覚めもすっきり」
 男はにこにこと笑う。昨夜、良い夢を見たのだろう。活力に溢れている。
「スープも他の料理も最高ですよ、利香さん」
 利香は客達の言葉に、八重歯を見せる。一方、厨房を離れたルカは二階の客室の扉を順々に叩いているところだった。
「朝食の時間です! 起きてください!」
 ルカは叫ぶ。いつだって起きてこない、常連客の為に今日も走り回る。朝食が終われば、すぐに客を送り出し、客室、イレギュラーズの仲間達が滞在する部屋の掃除とベッドメイキングを終わらせ、新たな客を出迎える。
(昨日はベッドパッドの交換を忘れちゃったから、今日はちゃんと覚えてなくちゃだ!)
 ルカはふぅと息を吐く。洗濯するベッドパッドの数が足りないと、利香に指摘されるまでルカは気が付かなかった。
(チェックアウト時の次回、予約の記入も忘れないようにしなきゃだよね)
 一生懸命、働き、仕事を覚えてきたものの、ルカはまだまだ。日々、利香に指導され、慌しい毎日を送っている。
(でも、利香さんに色んなことを教わるの、僕、大好きなんだ。頑張らないとだね)
 幻想の農村で育ったルカにとって、宿屋の仕事を至極、新鮮で、楽しいものなのだ。

 夜、雨が降る。冷たい飛沫が夜空を乱し、星を覆い隠してしまう。ふと、聞こえる足音。

 コツ……コツ……コツ……

「ああ」
 悩ましげな溜息が薄暗い階段に浮遊する。慎重に階段を降りているのは、頬を染めたルカである。本来であれば、眠りについている頃、それなのに、ルカは一人、地下室に向かう。闇に浮かぶ、右手首の紋章。少年は何もかも、知っている。
「あっ……」
 声を漏らした。不意に開かれる扉。喉を鳴らし、美しい瞳を濡らし、ルカは夢魔を見上げる。
「どうしたのかしら?」
 笑う。リカ・サキュバスが甘い瘴気を放ち、ルカを見下ろす。
「んっ……!」
 ルカは熱い息を吐く。身体の奥がむず痒く、眩暈が起きる。
「……ルカ?」
 リカは小首を傾げ、眺める。ルカはリカの声にハッとする。
「あ、あのね……お姉ちゃん……その、いつもの……いいかな」
 擦れる声。熱い視線。もぞもぞとルカは動く。夢魔の豊満な身体にルカは呼吸さえ忘れ、不器用に喉を鳴らす。リカは、ああと笑う。
(魂も心も全部、私のもの)
 愛とは違う、嗜虐を孕んだ執着。ルカもまた、無意識の執着をリカに注ぐ。
(いひひ♪ 刻み付けたのは、私)
 興奮と優越感にリカは身を震わす。
「お姉ちゃん……?」
 切なげな息を漏らし、ルカは渇いた唇を舐め、リカの手に触れた。青肌は艶かしく、肉欲的。滴のような汗すら甘い。
「ルカ、今日もご褒美をあげるわ♪」
 リカは楽しげに笑い、地下室に招き入れる。
 
 瘴気が部屋に満ちる。リカは優秀な眷属を眺める。ルカは黙り、乞うようにリカをじっと、見つめている。
「ふふ、待ちきれない? 大丈夫よ。今、ハグしてあげるわね」
 リカはふっと笑い、ルカを正面から抱き締める。そう、これは仕事を頑張ったルカへの報酬。ルカの小さな口から、くぐもった声が漏れる。リカの柔らかな乳房に沈む、ルカの顔。ルカはいつだって、新鮮な驚きをリカに与えてくれる。
「ああ、ルカ……そう、もっと、もっと、甘えていいのよ? 私が、私だけが……沢山、甘やかしてあげるの」
 リカの言葉にルカがゆっくりと動き始める。触れる、熱い息。
「ああ、雇っておいて良かったわ……お陰で貴方をいくらでも愛することができるんですもの……いひひ♪ あらあら、可愛いわねぇ」
 リカは笑う。声に反応したのだろう。ルカの身体がびくりと震え出す。美しい幼子。無垢で、リカの二番目のお気に入り。
「ルカ。二人で、夜を消してしまいましょう?」

 ルカは喘ぎ、踊り子のように揺れる。
「お姉ちゃん、僕……いつもね、頑張ってるんだ……」
「そうね、ルカは頑張っているわ。偉い、とっても偉いわよ」
 リカは甘ったるい声でルカを褒める。
「うん、うん!」
 ルカは目を細め、嬉しそうに叫び、リカに埋もれていく。
「本当に偉いわ、ルカ。素敵よ」
 リカは仰向けのルカに触れ、湿った髪や頬を撫でる。
「うっ、あっ……!」
 ルカは小刻みに震え、悶えながら、潤んだ瞳でリカを見上げ、四肢を震わす。
「お、お姉ちゃ!」
「ええ、お姉ちゃんは、ちゃんと此処にいるわよ。だから……ね?」
 リカは甘い声で笑い、いつまでも、ルカを甘やかしてあげるのだ。ただ、夢魔は恋心を抱く事は出来ない。そう、唯一、出来ることは──
 無垢な少年を自分好みにどこまでも堕落させる、それだけなのだ。
(さぁ、壊れて……?)
 リカは、濡れた玩具を見つめ、淫らに笑う。

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