PandoraPartyProject

SS詳細

パピーとイモータル(笑)

登場人物一覧

ホロウ(p3p000247)
不死の女王(ポンコツ)

●パピーとエンカウント
 『不死の女王(ポンコツ)』ホロウ(p3p000247)には近頃、小さな悩みがあった。
 いや、彼女ほどの人間ならちょっとした悩みは気にならないレベルなのだが。イレギュラーだし。
 そんな彼女をして難儀させるものとは、一体……!?

「ワゥッ! ワフ、ワフッ!」
「こらこら、歯を立てるな!!! 我はエサじゃないぞ! エサじゃないったら!!!」
 ……野犬である。野犬といっても子犬なのだが。それも相当小さい。
 普段は冷静沈着、尊大にしてポンコツ……を装っている(本人談)彼女だが、本来はこうして子犬に対しても強く出すぎず、適度に止める程度に留め、己の威を無理やりに示すことは決してしないのである。
「よしよし、わかったから爪を立てるな引っかくな!! やめっ……やめろァ!!!!!」
 強く出ない優しさが彼女の持ち味なのである(本人談)。
「ウゥ……ワン! わんわんわ、ワフッ!」
「犬コロ、貴様私を馬鹿にしているだろ! 私は魔王だぞ魔王!! やめろ、ノー角! 角はやめろ――!!」
 多分、きっと、彼女は優しいから強く出ていないだけなのだ。子犬もその優しさに甘えているだけで、そんな決して、アンデッドである彼女を単なる腐肉の塊としか思っていない、なんてことはないはずだ。
 無いはずなのだ。反撃してこないからいいエサだなんて思っていない。絶対に。
「……フーッ! 今日もちゃんと撒いたぞ! いざ帰るぞ、魔王城(予定地)へ!」
 この日も彼女は、子犬にまとわりつかれた挙げ句に全力ダッシュでうまく撒き、一路己の住処へと帰ることに成功した。……多分、腐肉の匂いって結構キツいらしいんで撒いてるっていうか呆れて追っかけてないだけだと思うんですけど(名推理)。
 と、まあ、こんな感じで毎度毎度同じ子犬にまとわり付かれ、あまつさえ疑惑の角にぶらさがろうとされては、如何に温厚な魔王(自称)のホロウでも我慢の限界というものが訪れる。
 彼女だって仏ではない。魔王だ。
 魔王とは時に威を示さねばならない……それがたとえ子犬であってもだ。
 まあ多分、単にキレ散らかしただけだと思うんですけどね。

●芋ったる
 ――翌朝。
 ホロウは朝日を背に、子犬と対峙していた。アンデッドが健康的に早寝早起きとか不味くない? こうキャラ作り的にアレじゃない? 大丈夫???
「今日という今日はお前を許さんぞ!! 我はお前を倒して魔王の恐ろしさを知らしめねばならん!!!!」
「ヴゥ~~……」
 ホロウの宣言の本気度を悟ったのか、はたまた早朝から喧嘩売られて機嫌が悪いのか。子犬は常より凶暴に歯を剥き出しにし、彼女を威嚇する。
「ウッ!!!」
 ホロウ、それに早くも気圧される。おい魔王。
 だが彼女はへこたれない。子犬を傷つけるのはしのびないとばかりに拳を固めると、子犬に向かって駆けていく。
 子犬も子犬で、石畳を蹴立てて飛び上がり、彼女の頭部を狙っていく。
「いきなり角はやめろっつってんだろ!!!! ポリシーだぞポリシー! このっ、このっ!!!」
「ワウ、ワフハフ、フヴッ!」
 平手、爪、デコピン、前足で掴んでの後ろ足の蹴り。
 互いに爪を立ててのひっかきあい、噛みつき。最早なんでもありのバーリトゥード。異種格闘技にしてはアンデッドと子犬というどこまでも脱力系な戦いだが。
 ついでにいうと、早朝だというのに両者の取っ組み合いの果たし合いはあんまりにも騒ぎが激しいものだから近所の住人の耳目を集めてしまい、次第に誇りをかけた戦いどころか、戦いが続けば続くほどにホロウに不利になっていく。基本的には彼女の尊厳的な意味で。
「クソッ、これもこいつの策だというのか!!!? 賢い奴め!!」
 多分貴女の知性があんまりだと思うんですけど、違いますよね?
「ワゥッ……(しぶといなこの肉)」
 子犬もまた、いくら噛み付いても毛ほどにも動じない(でも頭はかばう)ホロウを強敵として見做し始めていた。互いが互いを認めつつあったのだ。
 賢明な読者諸氏ならお気づきであろう。強敵とは、「とも」と呼ぶことを……!

 で、もって数十分後。
「フフ……お前もやるじゃないか! 引き分けだ!!!」
「ワウッ!!」
 ホロウと子犬とは、ぴたりと喧嘩をやめると互いに手(と前足)を差し出しあい、握手するに至っていた。いやそれ「お手」ですやんか。
 周囲の住人たちからは惜しみない拍手と歓声……ではなく早朝の静寂を破ったことに対する罵声とゴミが投げつけられる。ホロウは子犬を抱えると、一目散にそこから逃げ出したのだった。

  • パピーとイモータル(笑)完了
  • GM名ふみの
  • 種別SS
  • 納品日2019年07月01日
  • ・ホロウ(p3p000247

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