PandoraPartyProject

サンプルSS詳細

●サンプル(戦闘)


 ミシィっと、骨にヒビが入るような嫌な音がした。続いて来る猛烈な痛み、呼吸が止まりそうだ。両足で立っているのもままならないが、顔をあげて敵を見遣る。不敵に笑ってこちらを見下す様は強者の証そのもの。何か喋ろうとしても肺がうまく言う事をきかない。
「もうお終いか?」
「――っは。まさか」
 大丈夫、肋骨の一本やそこら折れたって動ける。俺は半身で槍を構え真っ直ぐに敵へ照準を合わせた。先制を取るのは……俺だ! 一息跳びで飛び出し穂先で敵の腕を牽制、刃を突き入れる。スッと頬を掠めた刃に続くように、反対側の拳で顔面目掛け拳で殴りこむ! 手ごたえあり、だがそれは柔らかい頬ではなく、固い籠手のもの。ぐぐぐっと力を込めてもビクともしない。
 俺の腕を受け止めた籠手に魔力が集中する。此処に居ては危険だと本能が察し、一発脚に蹴りをかまして引き下がる。敵はほう、と呟いてその腕をこちらに向けた。
「危機回避能力だけはあるようだな、臆病者」
「なんとでも言えよ。あんたこそ随分と詠唱に時間がかかってるじゃないか。早口言葉は苦手か?」
「戯言を」
 光が敵の背後に展開され、後光のようにすら感じる。それは邪悪な光だ。温かさや優しさとはまるで違う、怨恨とヘドロのような闇を内包した死の極光。背負うアイツは化け物か……なんて、今更なことを思う。
 後光は大きく広がり、やがて敵の身長の倍も成長すると、ぐにゃりと空間を捻じ曲げて暗黒の光線を俺向けて放って来た! その数10、20……ええい沢山! ずきずきと痛む胸を押さえながら、戦場を駆け回る。恐らく、一歩でも捉えられたら全て呑み込まれるんだろう。くねくねと曲がりながら、あるいは直線に、または渦を描くようにして、じりじりと追い詰められる。――ように見せかけるのは、結構得意だったりしてな?
「ちょこまかと……」
 舌打ちでもしそうな敵に、気付けばあと少し。籠手でガードされた翳した腕に、俺は大きく跳躍して上から飛び込んだ!
「!?」
「お前も焼かれろッ!」
 詠唱が中断されても、一度現れた光は何かに当たるまで消えることは無い。俺の身体を狙った闇の光線は、即座に離脱した俺から照準を曲げきれず敵自身を貫き、腹に、脚に、ぶわっと真っ赤な華を咲かせる。
「貴様、うろちょろとしていたのはこれが狙いか……」
「そういうこと。俺だけの力じゃお前には勝てない。じゃ、お前の力を利用させてもらうだけさ」
 そうして再び槍を構えた俺に、今度こそ敵も本気になったようで、服の中から一つの水晶玉のような球体を取り出した。魔力の根源、闇の詰まった呪詛の塊。それがバチバチと電気が通ったかのように発光しだす。
「遊びは終わりだ」
「遊んでたつもりはないんだけどねぇ」
 余裕を失って苛ついた表情を浮かべる敵に、俺は逆に笑ってやった。立場は逆転した。今じゃ俺も本気ってヤツ。いつだって本気だから――負けるわけにはいかないのさ。だってそうだろう、手加減してて負けました、なんて恰好悪すぎらぁ!

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