PandoraPartyProject

サンプルSS詳細

アイドルライブ風(ライブシーンのみ)【音楽】【現代】【青春】

 ブザー音と共に、幕が上がる。ずっと熱い声援が響いていたが、その音は途切れることを知らないのだろうか。燃え広がる業火のようにさらに厚みを帯びて広がる。
 爆音とも言えるほどの凄まじい、雄たけびのような歓声でファン達がアイドルたちを出迎えてくれる。元気を与え、元気を貰う。曲が始まる前に構築された関係は、彼女たちとファンたちが紡いできた軌跡の形。
 いつもの少しだけ形が変わってしまった今日のライブに寂しさを感じることはない。
「みんな、おまたせー!」
 アイドルが喋るだけで、熱狂的な声が広がる。手を振るだけで盛り上がる。それでいて、いざ歌い始めようと、マイクの前で大きく呼吸をすれば一瞬で静かになる。
「まずはいつもの曲から、いってみよう!」
 聞きなれた導入音に歓声があがる。デビューしてからずっと変わらないオープニングナンバーであり、全ての始まりの曲。

 『夢の切符 手に入れた
 憧れ知った その日から
 今すぐ乗ろうよ 未来へ』
 
 アップテンポから弾けるようなステップを刻んでいく。初めてのライブの時は歌うだけで精一杯だった。ドラムもベースもなく。ギターと歌の二重奏。
 けれども今は違う、夢が重なって三重奏にも四重奏も厚くなった。アイデアも増え、手振りがステップになり。今ではダンスになった。
 
 『持ってるだけじゃ 始まらない
 怖がらないで 今すぐ使おう』

「乗車します!」

 その声はコーラスだけでなく、ファンからも声が上がる。最初は個々の夢だった。その夢がやがてグループの夢になり、今ではファンやプロデューサー達、みんなの夢となった。
 
 『願うだけでは 叶わない
 最初の1歩を 歩き出す』
 
 彼女たちが出会えたのは、偶然。それでも偶然が起きたのは、最初の挑戦があったから。目指す駅こそ違えども。同じ路線に乗車しようとしていたからこそ出会えたから。
 
 『お向かいさんに お隣さん
 素敵な仲間と 出会えるから』
 
 サビに入るに連れてテンポも上がり、個々の動きも激しくなる。しっとりと滲む汗。歌い演奏しながら身体を動かしていくのは体力も集中力も要する。
 それでもアイドルたちは、苦しい表情を見せるどころか、笑顔を見せていた。苦難の先にある未来。憧れのその先を見据えているのだろうか。
 勢いは衰えることを知らず。会場にいる全員が楽しみに楽しんで楽しんで、会場に散りばめられた沢山の喜びと共に、歌は続いていく。
 
 『音番線で 乗車します
 チャレンジ経由 アイドル行き
 夢の景色が 見えるまで
 今日も明日も 奏でよう』
 
 最初の曲が終わると。会場内に大きく拍手の音が響く。歌も、演奏も。ファンの声も。聞こえる音が全部気持ちいい。とても幸せな空間。
 しかし、その音達はいつもより大きく感じる。どこか尖っているようにも感じる。楽しいのは本当のこと。それでも、楽しい以外の気持ちが入り混じり。それを払拭しようと、強い音が響いているのだろうか――。

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