PandoraPartyProject

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赤い月の下。
境界案内人、ノルン=エーリューズは困り果てていた。
日課の読書の最中に、少しばかり気になる兆候を見つけて。
危険なモノであれば困るから、と、下見にでかけたは良いものの。
……予想以上に危険な魔物が跳梁跋扈している状態に、ため息を一つ。

この大掃除をお願いするのは気が引けるが……根本的に可能性パンドラを持たない彼女に、これ以上できる事はない。
この世界へ可能性をもたらし、新たな道を作り出せるのは特異運命座標達だけだ。
それでも、人数をどうするか……4人にお願いする通常形式にするか、もっと人数が必要ラリー形式にするか……そう思案しながら、脱出の魔術を組み上げる。
そんな雑念が、もしくは命取りだったのか。
尋常ではない速度と精度で撃ち出された魔力矢が、「念の為」と貼っておいた障壁を数枚砕き割って霧散する。

「嘘ぉっ!?」

予想以上に感知される範囲が広かった。
動揺は一瞬でも、術式の構築中には致命的な刹那だ。
あっさりと脱出の魔術は崩壊して、また1からの構築を余儀なくされる。
視線の先には、人型からそうでないものまで、多種多様な魔物がひしめくように――こちらを見つめている。

ノルンは脱兎の如く逃げる事を選んだ。当然である。

相変わらず何がどう撃ち出しているのかも不明な高速かつ超高精度の魔力矢を、展開しなおした障壁で受けて再展開。
ゴブリンらしき魔物が雨あられと撃ちまくる実体矢は、風のドームを作り出して全て弾き飛ばした。
追いつこうとする足の速い獣染みた魔物は使い魔に影を縛らせて足止め。
とにかく多種多様な手管を用いつつ、魔物を振り切るべく走り出す。

ノルンの長い長い一日は、まだ始まったばかりだ。

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