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童話風(※内容は『普通』と同じ)

 それはある日の、遠い空が茜色に染まりかけた時のことでした。三方を海に覆われた町フラメルに、ひとりの飛行種の少女がやって来たのは。
 少女は風の吹くまま空をゆく、いつも新たな見知らぬ町を訪れることを楽しみにしている旅人でした。この町では、どんな出逢いが待っているのだろう……彼女はいつもそんな想いを胸に抱いて、気ままな旅を続けているのです。彼女がフラメルの町を訪れたのも、そんな旅の途中のことでした。
 そのフラメルで最も目立つものはといえば、きっと赤茶けた煉瓦だらけの旧い屋根の町並みの中に聳える、聖ゲオルギウス教会の白亜の尖塔だったことでしょう。潮風を浴びた針の根元が半ば幽鬼のごとく赤錆を垂らす大時計の上の鐘楼に、金色の鐘の揺れ動くさまは、さぞかし少女の目にも焼きついたに違いありません。彼女は教会の上空で気持ちよさそうに大円を描くと、少しずつ滑空の高度を落としてゆきました……そして高鳴る胸を抑えきれぬまま、少女は教会の門を少し抜けた先の、丁寧に短く刈られた芝の庭へと着地したのです。

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