PandoraPartyProject

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バーガー屋の話


 山のように積み上がった包紙を目の当たりにした男は溜息を吐いた。
 それは実に四人席のテーブルを埋め、机の端から転げ落ちそうな物量のバーガーだ。総額半月分の昼飯代也。
「なぁ」
「どうかしたね」
「どうもなにもねぇよ」
 男は山積みにされたバーガーの向こうで黙々と食べ続けていた女に声をかける。
 男の幼馴染にあたる関係の少女だったが、この通り年中何かしら食べ続けている不思議な(胃袋の)輩だった。
 机の上……はバーガーで埋まっている。裏側を指先でトントンと叩きながら男は幼馴染の少女に低い声で、先ほどからずっと言おうと思っていた事を告げた。
「こんなもんに金使うなら俺が先月奢ってやった昼飯代、まず返せ」
「え……なんで」
「おいバーガーの山に顔突っ込んでトンネル作るんじゃねえよ、おい、おい。こっちにバーガー転がってきてんだろが」
「なんでそんなこというの!? ひどい! あたしとの関係なんてお金目当てだったわけ!?」
「なんつー人聞きの悪いこと叫んでやがるてめぇ……!」
 店内の各所からひそひそと耳が聞き取る事を拒絶するような会話が聞こえて来る。男は誤魔化すように「モ◯ポリーにひどいも何もねぇ!」と叫び返すことで事なきを得た。
 適当なバーガーを口に押し込んで黙らせた男は首を傾げた。
「で、それこそなんで払わないんだよ。いいじゃねえか、それなりに稼いでるんだろ?」
「なんかお金って触りたくない気分の日ってない? あれあれ」
「そんなのが理由で先月後半俺の昼飯水と片栗粉焼いた物になっちまったのかよ……」
 ていうか長過ぎだふざけるなと。男は目を細めて幼馴染の少女を睨みつける。
「惚れるなよ」
 ふざけんな。腹立つ顔でバーガーを包紙ごと食っている幼馴染を平手打ちしそうになるも、目の前のバーガー山から一つ取って頬張る事で我慢する。男は生まれて初めてやけ食いの美味さを知ったのだった。

 店は紅蓮のキノコ雲を空に打ち上げ、大爆発の中心で消し飛んだ。


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