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「……馬鹿みたい」
混沌へ召喚される前、イレギュラーズなんて大それた存在じゃなくて、ただの女子高生だった私は、教室で騒ぐクラスメイト達を尻目にそう呟いた。もちろん、誰にも聞こえない程度の小さな声で。頬杖をつき、明後日の方向へ向けて。
聞かれたら、気分を悪くするだろう。揉め事になるだろう。そのくらいの事は分かっていたから。
それでもあの時は、そうとしか思えなかった。
A組の何々くんが誰々さんと付き合ってるらしいだとか。B組の何々さんが誰々くんにフラれただとか。同じクラスの誰々くんを狙ってるだとか。
キーキーキーキー、まるで猿みたい。ああはなりたくないなと、心底思った。
教室が女子生徒だけになると、いつもこう。そのくせ男子(例外もあるけど)が入ってくるとピタッとやめるのだから大したものだ。その要領の良さだけは見習いたい。
……なんて風に、斜に構えていられたのも、他人事だったからだと最近気がついた。いや、気づかされた。
ファンタジーなのかSFなのか、ごった煮みたいなこの可笑しな世界で知り合った同業者の青年。元の世界で聞いたなら思わず失笑してしまいそうな、騎士なんて職に就いていたアイツ。
ふと気づけば、アイツを目で追いかけている。アイツが誰かと話していると、気になって仕方なくて、落ち着かなくなる。言葉にならない感情が、金切り声とともに飛び出したこともある。油断するとアイツのことばかり話している。それこそまるで、あの日小馬鹿にしたクラスメイトみたいに。
ああ。ああ、本当になんて。
「馬鹿みたい、私……」