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ほのぼの
ほのぼの
幻は異世界から召喚された身だ。それも夢の世界から。
そして今、彼女は初めてのおつかいに四苦八苦していた。
そもそも買い物が初めてなのだ。
お金というものも知識として知ってはいたが実物を持つのも初めてで、そーっと持ち上げたようとして持ち上げられなかったぐらいだ。
町の街灯、看板、人、全てが珍しくて、つい、あっちをみてはフラフラ、こっちをみてはフラフラと、蝶が花の蜜を求めるように、町を彷徨う。
そして夕暮れになってハッと気づいたように、慌てて買い物を始めようとするが、もう遅い。店はもう閉まっている。
自分の失敗に気づき、できなかった自分が不甲斐なく涙がとめどなく溢れてくる。
そのとき、幻は自分の肩を叩く人に気づいて振り返る。
そこにいたのは、偶然、店を閉めて帰ろうとした店主だった。
「今回だけの特別だよ」と言われ、幻は初めてのおつかいをなんとか終えることができたのだった。