PandoraPartyProject

サンプルSS詳細

サンプルシナリオ1

とある港町の上空、そこで一羽のアジサシが空を飛んでいた。
『長い間空を飛んでいましたからお腹が空いてたなぁ…うん、この町でご飯を食べて行こうかな』
アジサシは港町の方へ円を描きながら降りていき、地面に近づいてくるとアジサシは黒髪黒目の小柄な少女に姿を変えた。
「う〜ん、っと。ここでのご飯はどんなのだろう?あっ、海が近いから魚料理かも!」
少女、ステルナはまだ見ぬ新たな地での料理や人々の営みに心を躍らせた。この町で起こる『とある事件』に巻き込まれるとも知らずに…

暫くして、ステルナは料亭を見つけてそこで食事をとっていた。
「うん、やっぱり魚料理が中心だね。それにしても本当に美味しい…この町ならもうちょっといても良いかも」
「ところでお嬢ちゃん。そんなに頼んでお代は大丈夫なのかい?」
「ええ、ちゃんとお金は持っていま……えっ?」
ステルナは目を疑った。いつもポーチに入れているはずの財布がどこを探しても見つからないからだ。この反応に店主の男は怪しんだ。
「まさか、金も払わずにモノが食えるとでも思ってたんじゃ無いだろうな…?」
「いえいえ、ちゃんとこのポーチの中にあるはずなんですけど…」
「そうか、それならこの町の中で誰かにぶつかったりとかはしなかったか?」
「そうですね…そういえば道で男の人にぶつかられましたね。その人はぶつかってすぐにどこかに走っちゃいましたけど…」
「やっぱりな。残念だが嬢ちゃんはスリに財布を取られたみたいだな」
「えっ?スリですか?」
こんな穏やかな港町でもスリなどがあることにステルナは驚いた。
「あぁ、ここ最近この町は物騒になってきてな…盗みにスリやひったくり、さらには人攫いまで毎日のように起こってるっていうからな。嬢ちゃんもかなり可愛いから夜道で攫われないようにな」
「そうなんですか。ご忠告ありがとうございます」
「どういたしまして。それはそうと、だ。金が無いなら働いて返してもらわないとな。注文したお代の分、しっかりタダ働きしてもらうぞ」
「はい!精一杯タダ働き頑張ります!」
「いや、そこで頑張ってもらっても困るんだが…」
店主が苦笑いしている中、ステルナはこの料亭に来る客との触れ合いを楽しみにしていた。

そして夕暮れ時、
「お疲れさん、これでタダ働きは終わりだ。お代はチャラにしといてやる。ついでに、今日はかなり繁盛したからサービスだ」
ステルナが店主から受け取ったは、この料亭の看板メニューの一つである魚饅頭だ。出来立てだからか、今でも熱そうに湯気が出ている。
「そんな…本当に貰っちゃっていいのですか?」
「あぁ、今日は気分が良いからな。なんなら嬢ちゃんには明日も来て欲しいぐらいだが、どうだ?」
「はい!ここのお客さん達は優しい人や面白い人がいっぱい来ますし、私も働いて楽しかったのでしばらくこの町で過ごしてみようと思います」
「それは良い。こんな町だが気に入ってくれて何よりだ。ここを出て真っ直ぐ進んだ先に俺がお勧めする宿屋があるから、今夜はそこでゆっくりしていくと良い」
「はい、ありがとうございました」
そして店を出て、ステルナは宿屋に向かって歩いていた。すると、とある男に話しかけられた。
「おい、お嬢さん。こんな暗い中どうしたんだ?」
バンダナで顔の上半分が隠れた男に話しかけられ、ステルナは思わず身を竦めてしまう。もしかしたら、この男が先程店主が言った人攫いかもしれないと感じたからだ。そうして両者の睨み合いが続くと思っていたが、ここで別の男が現れる。
「おい、盗賊。悪いがその娘から離れてくれないか?どうしても嫌なら、騎士であるこの私がお前を倒そう」
この騎士を名乗る男の登場にバンダナの男はバツを悪そうに踵を返した。
「お嬢さん、この私が来たから大丈夫だ。またあのような男が来たらさっきのように私が追い払ってやろう。そうだ、このお菓子を食べると良い。気分が楽になる」
「ありがとうございます。それじゃあいただきます」
ステルナがそのお菓子を食べると、強烈な眠気が彼女を襲ってきた。そして、彼女は倒れ、持っていた魚饅頭も落としてしまう。そう、これが本当の『人攫い』の手口とは知らずに…

目が覚めると、そこは知らない部屋だった。そしてステルナの手足は縛られて、口は猿轡で封じられていた。しばらくすると小綺麗な姿の男が二人、部屋に入ってきてステルナを見ていた。
「それにしても飛行種の女か…こりゃ高く売れそうだ」
「それに黒髪に黒目で容姿も良い…なんならここで犯してしまいたいほどだぜ」
ステルナが貞操の危機を感じていると、もう一人の男が入ってきた。先程の騎士を名乗る男だ。
「やめておけ、傷モノにしたら価値が下がるだろう。それにコイツはオレが釣ったモノだ、お前らにはやらん」
騎士を名乗っていた男の目は先ほどとは違って、まるでステルナを商品や物のように見ていた。それでステルナは悟った。これがこの人の本性なのだと。男はステルナに近づいていく。
「しかし、逆にいえば傷モノにしなければ何をしても構わないということだ。ということで手始めに邪魔な服を…」
そう言って男がステルナの服に手をかけようとしたその時…

「待ちやがれ!クソ騎士!」

現れたのは、先程騎士に追い払われたバンダナの男だった。
「まさか!?ここに来るまでの見張りはどうした?もしや全員…」
「あぁ、弱っちかったからまとめて倒させてもらったぜ」
「ちくしょう、こうなったら…お前ら、オレと一緒にヤツを片付けるぞ!」
「かかってきな!人々を傷つける最低最悪の騎士様よう!」

その後、三対一という不利な状況でバンダナの男は騎士の男達に勝利し、ステルナを解放した。後で町の人から聞いた話によると、騎士の男は元々は真面目で立派な騎士だったが、ある日から奴隷商や悪人を屋敷に呼ぶようになり、その日から町が物騒になっていったという。
それともう一人、バンダナの男だが、彼は盗賊団の中でも変わり者の『逆襲の盗賊団』と呼ばれる組織の人間で、各地を転々としてあのような悪人となった騎士や領主を成敗しているのだとか。
ステルナは、またバンダナの人と会って、今度はもっと話をしてみたいと思った。
彼女達が会うのはそう遠く無いかもしれない…

PAGETOPPAGEBOTTOM