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 新しい世界に出会ったようだと思った。
 窓から降り注ぐ月光に、彼女のミルクティー色の髪が黄金色に輝いている。彼女の稟性を表すかのように、それは月の光の中でも陽光を孕んでいるように見えた。
 手を伸ばしては引っ込め。まるで触れると融けてしまうかのように、わたしは彼女に触れられないでいた――――。
「……」
 ぽつり、大事なその名を口にした。
 柔らかなシーツの中で彼女は呼吸に胸を上下していた。安らかに寝ている彼女の横顔を見下ろしながら、わたしは思い返していた。彼女に初めて会った日の事。彼女の投げかけてくれた微笑み。自分に触れる手つきの優しさ。
 彼女の寝息が静かに響く寝室でわたしは確信した。彼女はわたしの光なのだと。
 彼女の優しさに包まれ、ふんわりと柔らかい光のような微笑みを受ける日々は新しい世界の中で生きているようだった。
 もし、彼女を失うようなことがあれば……。
 その時、わたしは一つの世界を失ってしまうのだろう。

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