PandoraPartyProject

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サンプル1・ほのぼの恋愛

 夕暮れの公園に少年と少女の姿。その距離は近いけれど。
「なーにがチェーン外れたかもー? ッスか、ただのパンクとも知らずどーにかしようとしたオレが馬鹿みてーッスよ」
「さっきから謝ってるじゃないのー。自転車のことなんてわかんないし、ゴメンって」
「オレにはセンパイのほうがわかんねッス。はぁ、もう無理、気力ゼロッス」
「機嫌直してくれるならお姉ちゃんがジュース買ってあげる!」
「マジスか! やりぃ、たまにはゴネてみるもんスね!」
「……まぁ、いいけどね。ジュース、何がいい?」
「んー、センパイセレクションで!」

 さっきまで仏頂面で手がベタベタするだの自転車屋まで運ばせるとか鬼だの好き勝手言っていた少年はジュース1本で満面の笑みだ。こんなやり取りも日常茶飯事なのだろうと感じさせる。センパイと呼ばれた少女もまた、散々な言われようだったがその足取りは軽く、公園内の自動販売機でジュースを2本買っている。

「おまたせー。リンゴとスポドリどっち派?」
「んー、んー……強いて言うならスポドリ?」
「珍しくハッキリしないね? しかたない、私のリンゴもひと口あげるよ。今だけ限定!」
「ちょ、太っ腹センパイと間接キスとか……あー、お得スね」
「そういう微妙な反応されると困るじゃない」
 照れ隠しに乱暴に開封したてのリンゴジュースのペットボトルを押し付けるように差し出す。
「どもッス。……ん、うまい。てかセンパイ、いつまで突っ立てるんス? オレ、どいたほうがいッスか?」
「あ、そだね。それじゃお隣失礼しまーす。あとジュース返してね」
「ごちッス。気力回復、機嫌上々ッスよ」
「それは良かった。うーん、でも本当にゴメンね。はぁ、私っていつもこう……ね。困るよねー」
「ま、別にいッスよ。それに」
「それに?」
「オレのオンナを悪く言うのはセンパイでも許さねーんで」
「ん? それってつまり」
「いや、ここはツッコミどころッス」
「あれー? そっか、ちょっと本気にしちゃった。残念」
「は!? いや」
「ふふ、よしっ、一本取った!」

 真っ赤になり少女に背中を向ける少年とは裏腹に少女は勝ち誇ったように嬉しそうで。
 夕暮れの公園の少年と少女は背中合わせだけど、とても近くて。

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