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シナリオ詳細

雨の子はどこかを見つめている

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●雨の子、とは

 この水の都には、『雨の子』と呼ばれる精霊に似たものが、存在している。
 雨の子は水の神から祝福を得た存在と言われ、都の各地に点在している。
 生まれた場所にそのまま生息し、一時的にその区域の雨をコントロールする。
 そして、その力で過去の災害から都を守ってきた。
 雨の子は人間と共生関係にあるが、残念ながら言葉は上手くない。
 言ってしまえば、幼児が言葉を紡ぐのと同じレベルしか話せないのだ。
 
 そして今回はこの雨の子との、捜索の物語である。

「おひさま、てるてる」
 都の東側。いわゆる商業エリアとして有名なこの区域に、ひとりの雨の子がいた。
「雨子さま? どうかしたのかい?」
 この界隈の人々は、雨の子を「雨子さま」と呼んでいるらしい。
 雨の子、もとい雨子さまは商人の男性の言葉には答えずに天を指して、また一言。
「おひさま、てるてる」
「雨子さま、何言ってるんだい。今日の空は曇っているじゃないか」
「……おひさま、ないない?」
「んー。今日は気まぐれに『かくれんぼ』ですかねぇ」
「おひさま、かくれんぼ」
「そう、かくれんぼ。雨子さまはおひさまを拝みたいのかい?」
「おひさま、たい」
 雨子さまは力強く答えた。
 たどたどしいが、おそらくは『太陽が見たい』と。
 たしかに昨今、この区域で晴れている日は少なかった。
 ずーっとどんよりとした曇り。もしくは雨か。
 『雨の子』とは言っても、外見は人間とほとんど大差ない。
 ……ちょっと、てるてる坊主を連想させるけれど。
 もしかしたら彼は、太陽の光を浴びたいと願っているのかも……?

「雨子さまがそんなことを?」
 雨子さまの意思を汲み取ったらしい商人の男性は、商業エリアの長に相談をしていた。
「そうだ、この都には言い伝えがあるだろう? サンストーンの力を借りれば、太陽が顔を出すと」
「そうは言ってもなぁ。サンストーン──日長石が採れるのは都の外だ。一般人が立ち入れる区域ではないだろう」
「雨子さまは水の神様の祝福を受けた、いわば神の使いだ。願いを叶えてあげるべきだと思わんか?」
 商人はずいっとその濃い髭面をエリア長に近づける。
「あぁ、わかった。わかったから、その顔を近づけないでもらえるか」
 エリア長は手で制す。そして息を吐いて悩んだ後、こう答える。
「依頼をかける。それなら都の外に出られる者を派遣してくれるだろう」
 エリア長はそう言って、どこかへ文を飛ばす準備を始めた。


●太陽の意思を求めて

「水の神の祝福を受けし、雨の子。彼の願いを叶えるならば、あの方法が最適かもしれない」
 アンナ=クリーヴランドは、雨の子の寂しそうな表情をじっと見つめる。
「……雨の子でも、陽光を求めるのね」
 そう独りごちていると、特異運命座標《イレギュラーズ》が次々と姿を現した。
「こんにちは。今回の仕事は鉱石の採集、およびそれに付随する戦闘」
 採集する対象の鉱石は『日長石』。
 別名ではサンストーンとも呼ばれている鉱石よ。
 都の外は危険な肉食獣が多くてね、一般人は基本外には出ない決まりなの。
 だからこそ、あなたたちが呼ばれたってことね。
 もしも獣に遭遇したら戦闘で勝って肉にしてもいいし、毛皮を剥いでも構わないわ。
 ただ対象の鉱石の採集は絶対に忘れないこと。
 鉱石は鉱山の山頂付近にしかないから、それも念頭にお願いするわ。
 そう、アンナは淡々とクエスト内容を説明していく。
「久しぶりの戦闘ありきの依頼だから、メンツも勇猛果敢そう」
 そうイレギュラーズの面々を見回して、さらに言う。
「私はあなたたちを見守っているわ。ここでずっと……ね」

NMコメント

 こんにちは、悠空(yuku)です。
 最近は頻繁にLNシナリオを出しています。
 今回は、雨の子のための探索任務です。
 太陽を見たい彼のために、サンストーンを採集してあげてください。
 ただ、都の外には肉食獣がいるようなので、移動中は要注意。
 戦闘もあるクエストだと思って頂けると嬉しいです。
 それでは、隅々までお楽しみください。

●世界説明
 よく雨の降る水の都。
 しかし水の神の祝福を受けし「雨の子」の力により、水害は免れている。
 雨の子は人間と共生関係にあるが、人語は幼児と同じ程度しか話せない。
 都の外や鉱山付近は晴れている。

●目標
 日長石(サンストーン)の採集

●他にできること
 草食獣や肉食獣との戦闘
 他の鉱物を採集し、アクセサリー等を作ってもらう

●味方
 雨子さま
 水の都の東側・商業エリアで生まれた雨の子。
 太陽が見たいらしく、鉱石採集にもついてる様子。
 ただ戦闘能力は皆無のため、戦力には入らない。

●敵
 草食獣(弱)・肉食獣(強)
 道中と鉱山に現れる可能性がある。
 肉食獣(超強)
 鉱山の山頂付近に現れる可能性がある。

●サンプルプレイング
 【その1】
 鉱山か……高く売れそうな鉱物を掘りに行くのも悪かねぇ。
 しかも山頂付近には強い肉食獣がいるんだろう?
 俺様のこの巨大な槌がうなるぜ。
 雨子さまか何だか知らねぇが、宝を獲るためだったら、何でもするぜ?

 【その2】
 雨の子とはまた愛らしい呼び名ですこと……!
 そんな彼が太陽を見たいと言っているのですね?
 承知しました。この●●、雨の子のために一肌脱ぎましょう。
 肉食獣でも草食獣でも、私のこの拳があれば問題ありません。
 蹴散らして、無事に日長石を採集することに致しましょう。

  • 雨の子はどこかを見つめている完了
  • 水の神に祝福を受けるは、雨の子
  • NM名悠空(yuku)
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年07月31日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
月夜の魔法使い
もこねこ みーお(p3p009481)
ひだまり猫
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

リプレイ

●雨子さまにごあいさつ ~ いざ、鉱山へ

「い、ぎゅら、ず?」
 雨子さまは見知らぬイレギュラーズをたち見て、少し驚いていた。
「雨子さま、初めまして。僕はジョシュアと言います」
 『星巡る旅の始まり』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は、丁寧に挨拶をした。
 ぺこりと頭を下げると、雨子さまも続いてぺこりと頭を下げた。
「僕はレインだよ……今日はよろしくね……」
 『玉響』レイン・レイン(p3p010586)もまた、ふわりとし佇まいで自己紹介をする。
「ふわ、ふわ」
「それと……これは……分かるかな……びっくりするかも知れないけど……」
 言って、レインは少し目を閉じる。
(こちらレイン……雨の子……どうぞ……)
 レインは【ハイテレパス】を使用し、雨子さまに問いかける。
「むむ」
(きこ、える)
 表で話すよりは意思のわかる会話ができそうである。
「うん……少しはお話できそう……秘密の会話とかも、できそうだね……」
 レインはゆらゆらと揺れる。どうやら、嬉しいようだ。
「俺は回言世界だ」
「みーおですにゃ! よろしくお願いしますにゃ!」
 『狂言回し』回言 世界(p3p007315)と『ひだまり猫』もこねこ みーお(p3p009481)も名乗りを終え、話題は道中や鉱山に現れるという獣たちの話へ。
「で、どうする? 道中などでの対処は」
 世界がまず皆に問いかけた。
 まずはそれぞれに持つ適応スキルを共有し、作戦を立てる。
「僕とみーお様は【ハイセンス】があるので、それで周囲警戒を」
「さらにみーおとレインさんは【ファミリアー】がありますので、二重で警戒しますにゃ」
「あとは俺も【超聴力】があるからジョシュア、みーおと協力して敵の少ない道を選択し進む」
「うん……敵を回避するには……十分なメンバーだね……」
 雨子さまのためにも、出来るだけ敵に遭遇しないようにする。
 このメンバーは可能な限りの「回避」を選択した。

 都を出て、一行は日長石(サンストーン)があるという鉱山を目指す。
都から鉱山までは少し距離がある。
 それまでも一行はハイセンスやファミリアーを使い、周囲を重々に警戒していた。
「雨子さま、大丈夫ですか? 疲れたりしてませんか?」
 ジョシュアの気遣いに、雨子さまははっきりと頷いた。
「無理はダメだよ……水筒に水持ってきたよ……これ、飲んで……」
 レインもまた雨子さまに気遣って水を渡してあげる。
 雨子さまは嬉しそうに、それを受け取った。
「あっがと」
 雨子さまはにこっと笑うと、ジョシュアとレインは安堵する。
「今のところ獣は遠そうだし、道中は無事に回避か」
「そのようですね。安心しました」
「おひさま、もくもく」
「おひさま、まだ見えにゃいですにゃ」
 出てきたらぽかぽか、きっと気持ちいいですにゃ。とみーおが励ます。
「にゃんにゃーん」
 みーおのふかふかな体毛が雨子さまは気に入ったらしい。
 優しく撫でては、もふもふとしてみせたりする。
「みーおは猫ですにゃ。にゃんにゃーんですにゃ!」
 楽しそうにみーおと雨子さまが戯れている。
 まるで、赤子と飼い猫のようだ。
「仲の良いことで」
「世界さんも仲良くすればいいですにゃ」
「うーん、そうさねぇ。じゃあ、雨の子さんはいったいどうやって生まれてきたんだ?」
「ちゅぐ?」
 突然の質問に、意味不明な用語を放つ雨子さま。
「難しいか。じゃあ、いつもどうやって過ごしてるんだ?」
「……じゃぶーんっ!」
「噴水とか遊んでるみたい……」
 具体的すぎる雨子さまの回答を、レインがハイテレパスで通訳してくれる。
「なるほど、ある程度の水がないと干からびたりするのか?」
「……ぬん!」
「あんまり濡れてないところには……行かないって……」
「なーるほどな」
「雨の子……僕と少し似てる……僕は海、だけど……同じ水の眷属だね……」
 レインは友好の証に、雨子さまを撫でる。
 すると、雨子さまは嬉しそうにはしゃいでみせた。
「あ、ついでに飴はいるかい? 雨の子だけにな」
「ぶぶぅ~」
 世界の冗談に雨子さまはブーイングのような反応を見せた。
「……つまらない? 今の反応はわかった。そいつぁすまなかった」


●サンストーンの番人

 さてさて、時は少し流れて。一行は都近くの鉱山に到着する。
 各メンバーのスキルもあって、山頂までは無事に敵を回避できた。
 途中で雨子さまの体力切れはあったものの、適度に休憩を入れてまた他愛もない話をした。
 しかし、ここまであっさりと平和的に進めてしまうのも、何だか呆気なさすぎる気がしていた。
「山頂には超強の肉食獣がいるんでしたよね?」
「ああ、もしかするとサンストーンを守っていたりとかして……」
 などと、冗談っぽく世界が言った時だった。
 
 山頂の奥から、甲高い啼き声が響き渡ってきた。
 それは獣のような、はたまた怪物のような大きなもの。
「……あれは、本当に守っているようだな」
「みなさん、戦闘準備はいいですか⁉」
「お任せくださいにゃ!」
「うん……準備は……できているよ……」
 一行は戦闘態勢で前へ進んでいく。
 そして、奥の巣穴に待ち受けていたのは。
「あれは、虎ですか⁉」
「……ううん、ちょっと……違う……」
「身体から火を噴く虎とか見たことないんだが!」
「ちょ、ちょっと怖いですにゃ~……」
 一行の言うとおり、身体から火を噴いている猛虎がそこには存在していた。
 身体エネルギーっと思われるもので黒煙を焚き、こちらを鋭い目で睨んでいる。
 グルルルルルルルル……、と唸りながら雨の子を見つけると。
 その巨躯を使って大きく啼き、その空間全体を揺らがす。
「ぴゃっ⁉」
 その啼き声と大きな揺れに雨子さまも思わずひっくり返る。
「雨子さま、大丈夫です。必ずお守りしますから」
「うん……雨の子……必ず、守るよ……」
「まずは俺からだ」
 世界は【皮肉と嘲笑】を使用し、猛虎の気を引きつける。
「……かかった」
 世界の術中に嵌まった猛虎は彼に突撃を始める。
「次はみーおの番ですにゃ! ラフィング・ピリオド!」
 見事な跳躍と狙撃術【ラフィング・ピリオド】で、みーおが猛虎を撃ち抜く。
「先手必勝です!」
 続いてジョシュアが【スペクルム・ナルケー】で世界に向かっていた猛虎の動きを制限する。
「次は僕……ワールドエンド・ルナティック……」
 最後にレインが【ワールドエンド・ルナッティック】でとどめをさす。
 
 数分間のチームプレーで、猛虎は一気に劣勢となる。
 体力はまだ残っているようだが、一歩、また一歩と猛虎は後退っていく。
 そして巣穴を空けて、どこかへと去って行ってしまった。
「えっと……これは、好きにしろってことなのでしょうか?」
「そう捉えていいと思う。その証拠にほら」
 世界が指した先には、サンストーンの石塊がある。
「つまり、あの猛虎はサンストーンの番人にゃのですか?」
「おそらくな」
「おひさま、おひさま」
 雨子さまはサンストーンの石塊に近寄っていく。
「あ……ダメ……、勝手に行っちゃ……」
 レインが雨子さまの後を追う。
「おひさま」
「うん、一緒に採集しようか」
 言うと、【桜色の傘】の先でコツコツと削り始めるレイン。
「手の力が弱いから……掘るの、難しいね……手を怪我しないようにね……」
 言って、さらに雨子さまに持ち手が安全で先の尖った石を渡した。
「ほり、ほり、ほり」
「あー、そんな乱暴に削ったらダメだ」
 世界が二人の無作法な採掘に口出しを始める。
「僕もお手伝いいたします!」
「みーおもがんばりますにゃー!」
 こうして、無事にサンストーンの採集まで辿り着いた一行。
 果たして、本当に太陽を見ることは出来るのか?


●太陽と雨の子

「さん、すとん」
「サンストーンな」
 無事にサンストーンを採集した一行は都へ戻る最中だった。
「それにしても、良かったですね」
「帰るまで護衛しますにゃ。帰ってのんびりするまでが冒険ですにゃ」
「うん……そうだね……帰るまで……冒険……」
 各々が感想を言っていると、一瞬サンストーンが光った気がした。
「ん?」
「今、一瞬光りませんでした?」
「……ような気がする……」
「もう一度、見てみますにゃ」
 じっともう一度、一行が見つめてみると。
「……あっ」
 ふと、光を感じた世界が空を見た時だった。
「おひさま、おひさま……!」
 雨子さまの顔がぱぁっときらめいた。
 曇っていたはずの都周辺の空が、からりと晴れていくのだ。
「本当に太陽が出て……⁉」
「雨の子……干からびる前に……相傘……」
レインは桜色の傘で雨子さまを日差しから守る。
「これがサンストーンの力、なのか……?」
「それならそれで、すごいですね……!」
「うれしいですにゃ、ぽかぽか日和ですにゃ」
「うん……お仕事、大成功……だね……」
 一行は嬉しそうにはしゃぐ雨子さまを見つめる。
 てるてる坊主のような格好が、幼なさをより感じさせる。
 だけど、そんな子の笑顔を守れたのならば、まぁいいか。
 そんな風に思ってみなくもない、一行であった。

成否

成功

状態異常

なし

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