PandoraPartyProject

シナリオ詳細

風のゆくまま、花の咲くまま

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●風のオーブとエアリアルフォレスト
「あっ、やっと来て下さいましたね。ヒュウ!」
 深緑内、森林迷宮の中を妖精の木馬に引かれてやってきたあなたを出迎えたのは、テンションの振れ幅が奇妙に広い緑髪のハーモニア女性だった。
 大樹の上に作られたドングリ状のツリーハウスからツタを編んだロープを使って素早く降りてきた彼女は、薄紫色の流れるようなローブに身を包んでいる。
 彼女が近づいてきたことでわかったが、そのローブには風が吹き抜けるような流麗な模様が刺繍され、首から提げたペンダントからは魔法の微光が僅かにだが溢れていた。
 彼女が魔術師であることは、その様相からも明らかだろう。
「私はリリアナ・ウィンスダム! あなたがローレットのイレギュラーズね!」
 リリアナは握手を求めるように手を差し出した。なんとなくそれに応じたイレギュラーズの手をがしりと両手で包むように包んで力強く上下に振る。
「この集落の、そして森の危機なのです。ああ、あなたが来て下さって本当に助かります!」
 そしてリリアナは口笛を吹いた。ヒュルリラと耳に残る短くて上下に大きく揺れるメロディだ。先ほどから何度か見せているが、これが彼女の感情表現なのだろう。
「さあ、立ち話もなんですから。どうぞ上がってください! ……あ、ツタの登り方はわかりますか?」

 状況を説明しておこう。
 イレギュラーズはリリアナからの手紙を受け、森林迷宮内にあるウィンスダム霊樹集落へと訪れていた。
 この名が示す通り、ここに暮らすハーモニアたちはみなウィンスダムの名をもっており、集落規模でありながら全員が家族という考え方をもっているようだ。
 よりロジカルに説明するなら、彼女たちにとって家名に当たるものが霊樹名となるのである。森林迷宮の中でもごくたまに見かける文化形態である。
 リリアナはその代表を務めており、自分達で解決できないトラブルがおきたためローレットのイレギュラーズへと依頼を出したのだった。
「私達の霊樹は今、死にかけているのです。もしこの霊樹が死んでしまえば周囲の森のバランスは崩れ、私達はおろか動物や虫たち、木々や花々の多くに被害が出るでしょう」
 なるほどそれがトラブルか……とは思うが、死にゆく霊樹をどうにかするなど、どれだけの植物知識があってもできそうにない。というより、その程度のことならもう彼女たちが試しただろう。
 であれば何かと言えば――。
「『ウィンスダム・オーブ』が必要なのです。これは元々ウィンスダム霊樹に備わっていた力の結晶でしたが、はるか古代に切り離されエアリアルフォレストという異空間に取り残されているのです。
 もしウィンスダム・オーブを手に入れ持ち帰ることができれば、霊樹をまた健康な状態に戻すことができるでしょう」
 要するに、エアリアルフォレストという場所に行きウィンスダム・オーブを手に入れてくれば良いという話だ。こうなれば話はシンプル。ローレット・イレギュラーズにできる仕事になってきた。

「エアリアルフォレストは古代に作られた異空間ですが、内部の情報は殆ど残っていません。
 私達はその入り口を開くことはできますが、掟によって中へ入ることは禁じられているのです。実際、未知の危険が多くありますから、入ろうとも思えないのですが……」
 リリアナは苦笑し、そして三枚ばかりの羊皮紙を取り出した。
「分かっている情報は少しだけです。例えば……」
 植物でできたテーブルに羊皮紙を並べる。
 リリアナが言うには、これらはずっと昔に生きていた祖先が書き残したもので、今伝わっている情報の全てであるそうだ。
「異空間の中は広大で、『風の通り道』を進むことで奥へと移動することができるそうです。
 また擬似的な森が形成されていて、独特の植物が自生しています。これらが未知を開くための鍵となる、と書かれています。
 そして最後に、ダンジョンにはオーブを守護する存在があると。おそらく、この存在との戦いは避けられないでしょう」
 羊皮紙を纏め、それをスッと差し出してくる。祖先から受け継いだ情報ならかなり貴重なはずだが、リリアナの表情からはこちらへの信頼が見て取れた。
「あなた方は森を救い、そして多くの国も救ってきた英雄たちです。きっとオーブを手に入れ、無事に帰ってきてくれると信じています」
 最後にヒュウと口笛を鳴らす。それは小鳥が歌うような小気味よい音色だった。

GMコメント

※こちらはライトシナリオです。短いプレイングと選択肢のみで進むアドリブいっぱいのライトな冒険をお楽しみください。

 深緑のダンジョン『エアリアルフォレスト』を攻略し、オーブを手に入れましょう。
 ダンジョンには様々なギミックが存在し、きっとあなたの知識や技術が役に立つでしょう。

●一口プレイング
 今回の感想や自分の得意分野について書いてみましょう。
 困ったら好きなキャンプ飯について書いてください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。


探索スタイル
 あなたはこのダンジョンに対してどのようなスタンスで探索するでしょうか

【1】謎解きに挑む
 持ち前の非戦スキル等を駆使してダンジョンに仕掛けられたギミックについて考えたり対処したりします。

【2】戦闘に集中する
 持ち前の戦闘スキルを駆使して現れるモンスターとの戦いに集中します。

【3】その他の個人的な目標のため


【4】癒やし枠
 休憩できるスペースを見つけて料理を振る舞ったり、ほっこりするようなものを振る舞ったりします。


戦闘スタイル
 あなたのバトルスタイルを選択してください。

【1】アタッカー
 率先して攻撃スキルをどかどかと撃ち込みます。
 威力型やBS型など形は様々ですが、あなたは頼れるチームのアタッカーとなるでしょう。
 相手にバフをかけたりするのもこのアタッカーに含まれます。

【2】ディフェンダー
 優れた防御ステータスを用いて敵の攻撃を引き受けます。かばったり引きつけたりは場合によりますが、あなたがいることで仲間のダメージ量は大きく減ることでしょう。
 味方や自分を治癒することで戦線を支える役目もここに含まれます。

  • 風のゆくまま、花の咲くまま完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年06月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)
永遠の少女
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
メリッサ エンフィールド(p3p010291)
純真無垢
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい

リプレイ


 果実と葉によって淹れられたお茶は、甘い香りがする。
 蜂蜜色の水面に自らの顔を映し、『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)はフッと微笑んだ。
「なるほど、さっそく来たかいがあった。この先の冒険にも期待してしまうな」
 お茶に口をつけると、その味わいにまた一層笑みを深くするモカ。
「ふむ……」
 甘い御茶がもしかしたら初めてかもしれない『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)。しげしげとお茶の水面をながめてから、おそるおそるといった様子で口に含む。
 まず広がったのはミントのようなスッとした清涼感だ。そこに僅かな苦みと甘みが遅れてやってきて、最後には爽やかな甘みが残り抜けていく。
「これは、このあたりで?」
「ええ。一般的に飲まれている御茶ですよ。パリミュエリの葉と干したテュチケの実を使うんです」
「うん、全然わからない」
「どうかな、我の猫、我の娘」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)がしっとりとした声で囁くと、同じテーブルについていた『永遠の少女』ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)と『あいいろのおもい』クウハ(p3p010695)が顔をあげる。
「そのパリミュエリって葉っぱ、持って帰ってもいい?」
「だめだぞ」
「やだやだ! 持って帰っておうちでも飲むの!」
 やだやだーと両手をぐーにしてぶんぶんと上下に振るルミエール。
 クウハは小さくため息をついて額に手を当てた。武器商人はといえばおっとりと微笑んだままである。
「何か言ってやってくれ、慈雨」
「父様、いいよね?」
 などといったやりとりを……『純真無垢』メリッサ エンフィールド(p3p010291)は黙って見つめていた。
「皆さん、出されたお茶を結構普通に飲むんですね」
「飲むの、いや……?」
 それに答えたのは隣に座った『玉響』レイン・レイン(p3p010586)だ。
 木をくりぬいて作られたコップを手に、お茶にちびちびと口をつけている。
「そういうわけじゃないんですけど、文化が違い過ぎて……礼儀作法とか、全然わかりませんし」
 すると、依頼人のリリアナ・ウィンスダムがヒュウと口笛を吹いた。
「気にしなくていいんですよ。外の人に礼儀やジョーシキを求めるほど私達も無分別じゃないんですから」
 深緑は永きにわたりその門を閉じ、内側に閉じた生活を送ってきた。
 それゆえ独自の文化が芽生え、森林迷宮のような互いの行き来が細いエリアに至っては独自の文化が残りやすい。
 外の人間にそういった文化への順応を求める集落もあれば、リリアナの言うように自分達が外に順応しようと考える集落もあるのだろう。
「なるほど……」
 メリッサはお茶にちびりと口をつける。
 世界は広い。国をまたげばこうも違う考えに触れるものか、と。
「さて、と。休憩すんで移動の疲れもとれたし。そろそろ行こうか」
 『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)がコップを置いて立ち上がる。リリアナは頷き、同じように立ち上がった。
「それでは案内しますね! エアリアルフォレストへ!」


 古代から伝わるおまじないの言葉は、まるで風にふかれた銀杏の木みたいで、さらさらとざわざわと、不思議な言葉で綴られた。
 エアリアルフォレストの入り口となる木の幹にリリアナが最後に手を触れた途端、涼やかな風と共に人ひとりが通れる程度の穴が開く。
 眼鏡をかけ直し、目を細める史之。
「これが入り口?」
「はい。といっても、開いたのは初めてです。なにせ中に入ることは禁じられていますから」
 リリアナの言葉に史之は少しばかり不安な気持ちに襲われたが、ここで怖じ気づいていては始まらない。
 覚悟を決めてゲートをぴょんと飛び越える。
 初めてに感じたのは風圧で、次に耳に残るブワッという風の音。そして大きな鳥が羽ばたき飛んでいくような感覚。
 目を開くと、そこは高い高い谷の上だった。
 パステルカラーの花が咲き乱れ、巨大な樹木があちこちに立っている。足場らしい足場は樹木やそれにからまった巨大なキノコで、それすらも美しく彩られていた。
「これは……想像以上だったね」
 見たこともない景色に瞬きをする史之。
 クウハもほうと小さく息をついた。
「さすがは深緑の異空間。見たこともない植物だらけだな」
「そうなの?」
 クウハを勝手に博識だと思っているルミエールが、首をかしげながら回り込むようにクウハの顔を覗き込む。
「ヒヒ……」
 そのやりとりに武器商人が愉快そうに笑う。
「そのコにも分からないことは沢山あるよ」
「へぇ~、意外」
 そんなやりとりを交わしながら、ぱたぱたと手を振るリリアナと別れてエアリアルフォレストを進んでいく。
 進んでいくが……。
「早速……だね」
 レインはさしていた傘を小さく揺らして立ち止まった。
 というのも、行き止まりに来てしまったからだ。道らしい道はあったものの、それが崖で途切れた状態にある。巨大な谷の先に道の続きがあるように見えるが……。
「ここ、飛んで行けそう?」
「うーん……」
 メリッサに尋ねてみると、翼をぱたぱたやったあとでメリッサがなんとも難しいという顔をした。
「無理ですね。全員が飛行できるなら無理矢理行っちゃうこともできなくはない……ですけど、気流が激しくて誰かを抱えて飛ぶのはまず無理です」
 そうしていると、レインがちらりと傍らにある大きな花に近づいた。自分の腰までの高さがある花で、ひっくり返せば帽子にできそうなくらい大きい。
「鍵は……僕等……」
 レインは呟いてから、花に手を近づけた。
「この花、呼んでる気がする」
 花弁をそっと撫でたその途端、鱗粉によって可視化された気流の輪が空中にいくつも生まれた。
「あっ、これなら飛んで行けそうです! 皆さん!」
 メリッサが気流を読みながら先導する。飛行できるクウハや史之たちは、飛行できない面々を抱え、レインは傘で風を受けるというなんともファンシーな形で空に浮かび上がる。
 イズマもまたモカを連れてワイバーンに乗ると、メリッサの先導する気流へと乗った。
 気流の輪を通り抜ける度にブオンと加速がかかり、景色がみるみる後ろに流れていく。やがて気流は曲がりくねったルートを描き、崖のずっと向こうにあったはずの道までたどり着くことができた。
「風の道とはこういうことか……また一つ貴重な体験をしたな」
 モカはワイバーンから降りると、背負っていたバックパックを地面におろす。
「このあたりは安全そうだ。すこし休憩にしないか?」

「未知の食材探しも兼ねて、この任務に参加したんだ。食材になりそうな植物もいくつかあったぞ」
 モカは楽しそうに網籠を開くと、中から切り取った草の一片や花の蜜をいれた小瓶などを取り出していく。どうやらここまでの探索のなかで、食べられる草を見つけては収集してくれていたらしい。
 そうした食材を集め、持参したコンロでバターチキンカレーを作るモカ。
 その隣ではルミエールがパンケーキを焼いて配っている。かけるのは途中で採取したメイプルシロップめいた香りの花蜜だ。
「わ、おいしい! こんな場所でパンケーキが食べられるなんて」
 なんだか丁度良い高さのキノコに腰掛け、パステルカラーの花々が咲く壮絶な谷を眺めるルミエール。足をぶらぶらとさせていると、その様子を武器商人とクウハが保護者のように(実際保護者なのだが)見つめている。
「ここまで歩いてきただけでもいろんな植物があったな……」
「そうだねえ。道を作る植物に、上昇気流を作る植物。門を開く鍵の植物に、迷路を辿る植物」
 指折り数える武器商人。
 彼らはルミエールをエスコート(?)しながらそういった植物の謎を解いて進んでいたのだった。ルミエールは基本的に可愛さを振りまく係だったが、彼女の植物や動物との疎通能力は実際役に立った。
「武器商人の推理もなかなかのものだったよな。迷路を辿る植物なんて、そうそうわかるもんじゃないよ」
 そう言いながら史之はカマンベールチーズのアヒージョを美味しそうに食べている。
 いやいや、と謙遜するように首を振る武器商人。
「それにしても、クウハは博識だねえ。門を開く植物の謎を解いたときには、驚いたよ」
 なんて言う武器商人に、クウハは小さく笑って返した。
「確かにここの植物は未知のものばかりだけどな、基本的な性質までは変わってないんだよ。食虫植物が口を閉じるメカニズムってあるだろ? 門はあれを複雑に発展させたものだったんだよ」
「頼りになるねえ」
 笑みを浮かべる武器商人。
 ここだけ切り取ってみるとルミエールもあわせて家族のピクニックである。
 モカが最後にいれたコーヒーを飲み干すと、キャンプセットを片付け始める。
「さて、そろそろ先に進もうか。」
「さんせー!」
 ルミエールはパンケーキを食べ終え、キノコの椅子からぴょんと飛び降りた。

 暫く進んでいくと、前を歩いていたイズマがぴたりと足を止め腕を上げた。『止まれ』のハンドサインだ。
 史之が警戒して足を止めると、イズマが小声で話し始める。
「確か、ウィンスダム霊樹の住民はエアリアルフォレストへ入ってはいけないという掟があったよな。扉を開ける特別な作法は伝わっているのに、入ってはいけないとされているのは何故だと思う」
 突然そんなことを言われ小首をかしげる史之だが、イズマは先を続けてくれた。
「ウィンスダムの住民は、ここの『危険』を知っていたんだ。オーブという重要なアイテムがあるにも関わらず、入るリスクのほうが上回るだけの危険がな」
 ぶわり――と風の精霊が可視化される。
 どうやら罠をはって待ち構えていたらしく、イズマのすこし先には魔方陣らしきものが滲むように現れた。
 どうやらイズマは精霊疎通を使って罠の存在を察知していたようだ。
 これによって精霊の罠を見落としてダメージをくらう危険はさけられたらしい。
「じゃ、ここからは俺の出番かな!」
 史之はずいっと前に出ると、可視化された風の精霊へと自ら飛び込んだ。
 罠に本来使うはずだった真空の刃を生み出し、飛ばしてくる精霊。
 だが史之はそれを斥力のフィールドで防御すると、そのままフィールドで殴りつけた。
 豪快なパンチは赤き電撃を纏い、精霊の注意を強制的に史之へと向けさせる。
「連れもつけずに単身で出てくればそうなるんだよ! 一人で出てきたほうが悪い!」
 風の力を使って闇雲に連打をしかけてくる精霊を剣で風を切り裂くことで凌ぎきると、史之は眼鏡をキラリと光らせた。
「そこだ!」
 踏み込み、一閃。秋宮家に代々伝わる秘技『秋霖』によって繰り出された斬撃は一閃のようにみえて実は数多の斬撃の連続であった。
 遅れて生まれた虚空の光が精霊を切り裂き、パッとその姿を霧散させる。
 すると、目の前に鬱蒼と茂っていた森の木々が避けるように動いていき、道ができあがる。
 その先にあったのは、巨大な樹木であった。

「巨大な……樹木?」
 武器商人は開けた空間に出ると、まず樹木をよく観察した。
 このタイミングで象徴的に現れた樹木が、ただの木ということはあるまい。
 ルミエールはまたも首をかしげ、クウハは意見を求めるように武器商人を見る。
「紫苑の月(父様)」
「慈雨」
 そして……直感した。
「皆、下がって」
 言うが早いか樹木の表面に無数の穴ができ、そこから堅いクルミのような実が次々に発射される。
 即座に防御姿勢をとって前に出るクウハ。ギュンと大鎌を回転させクルミの弾丸を弾く。
 一方で半身の白猫ことルクスがルミエールの鞄から飛び出し、ルミエールの肩へと飛び乗る。すると光が包み込み、ルミエールは二十歳前後の大人の姿へと変化した。
「そのまま凌いで!」
 ルミエールは後退しながら両手を祈るように組んだ。聖なる光が彼女の周囲に散る花びらのように舞い始め、それらが風に乗ってクウハへと流れていく。
 とめきれなかったクウハのダメージは体中にできた傷という形で残ったが、そこへ張り付く光の花弁が傷を癒やし、元の白い素肌へと戻していった。
「ありがとう。我の猫」
 武器商人が一歩踏み出すと、樹木は表面のツタ震わせまるで生きた蛇のように襲いかからせた。
 武器商人は防御と回復を二人に任せ、構わずに力を行使した。
 力の名は"我らの災禍に祝祭を"。流星の如く世界を灼く、蒼き槍の一射である。
 優雅に舞うように放たれたそれは樹木へと突き刺さり、オオオと風の音を鳴らす。それはまるで樹木があげる悲鳴のようだ。
「オーブを守る樹木ってのは、これか」
 イズマはモカと共に走り出し、彼らを襲うべく突き出された巨大な木の槍をジャンプでかわす。そして槍を足場にして駆け上がると、樹幹めがけて攻撃を繰り出した。
 風を切る音を美しい音色に変えて、機械化部位の足による鋭いキックを繰り出すイズマ。
 その一方で、モカは流星破撃(りゅうせいはげき)を繰り出した。気功による状態異常回復と加護破壊を両立させるモカの必殺技である。
「「――ッ!」」
 気合いの声と共に同時に繰り出されたキックは樹幹を大きく揺らし、それによって枝から次々に棘のついた実のようなものが降ってくる。
 それらをジグザグに走ってかわす史之と、優雅に傘を差して防御するレイン。
「さっきから枝を殴ってるけど全体攻撃がやまないな。BSを無効化するクチかな? だったら……」
 史之は刀を抜き、飛来する枝を次々に切り落とす。
 一方でレインはぱたんと傘を畳み、傘を槍のように構えた。
 彼女から溢れる燐光のような魔力が傘にあつまりグラデーションカラーの光を灯す。
「ウィンスダム・オーブ、君は……」
 呟き、そして突き出すように放つ。
 魔法の光は騎士の槍の如く樹幹に突き刺さり、そこへメリッサが突入をしかけた。
「これで、終わりです!」
 頭上にまわる天使の輪が一瞬だけ膨らんだかと思うと、キュンと高速で回転を始める。
 握った剣を振りかざすと、刀身に魔力の雷撃が纏う。
 未だ剣の間合いではないが、豪快に振り下ろしたそれは雷撃を伴った斬撃となって飛んでいき、樹幹の表面を大きく削り取る。
「大丈夫。殺してはいません。だって……」
 メリッサは小さく微笑む。
 削り取った木の内側には、ウィンスダム・オーブは露出していた。
 レインはそれを引き抜き、手の中に収める。
「この樹も……守りたかったの……?」
 見上げると、それまで激しく動いていた木は動きを止め、ただの巨大な木と変わっている。手を当ててみても、先ほどまでの激しい活動能力は見られない。
 どうやらメリッサはこの木がただの自己防衛のために動いていたことを、なんとなくだが察知していたようだった。
 それゆえ木を殺すことなく、オーブだけを手に入れたのである。
 モカが腰に手を当てる。
「オーブは手に入った。これ以上この木の住処を荒らすのも悪いな」
「ああ、帰ろう」
 イズマもまたきびすを返し、仲間達はその場を後にしたのだった。

●ウィンスダムは生きている
 かくして持ち帰ったオーブの力によってウィンスダム霊樹は力を取り戻した。
 霊樹にすまう人々も、これで住処に困ることはなくなるだろう。
 リリアナはイレギュラーズたちに感謝を述べ、そして持ちきれないほどのお土産をもたせて別れたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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